第二十五話「因縁の再会」.1
ガシュン、と開かれた扉から、左右を見る。
入ってきた場所と、出てきた場所は違っていた。遺跡の内部が複雑に入り組んでいたように、あの艤装ドッグから地上までの道は複数に分かれていたのだ。
おかげで、怪しまれず出入りできそうな場所を発見できた。
「問題は、ガイドーをどうやって見つけるかね」
『ホチャー、官民問わず、何かガイドーや行政府に関する情報はある?』
【ドヘネットC行政府からは都市内部の警戒レベルの上昇が発表されました。市民はID携帯を義務化。不審人物に関する通報を奨励、有益な情報には懸賞金を出すとの放送ばかりで、特に――いえ、駐留軍による緊急軍事演習の開始が通達されました。都市防衛司令発動時の訓練が、臨時で行われるようです】
『ボクらの密航に対する、警告ってところかな』
警備車両が大通りを往復する回数が多い。心なしか、市民も少し緊張気味で、カフェやレストランといった憩いの場は静けさが支配している。
繁華街の投影ディスプレイに、行政府の臨時放送が表示された。
「これより、都市防衛訓練を開始いたします。市民の皆さんは行政府からの指示に従って行動してください。通行中の車両は完全自動運転に切り替え、最寄りの駐車エリアに移動してください。緊急車両の妨害をしないように注意してください。これは訓練です。市民の皆さんは落ち着いて、行政府からの指示に従って行動してください」
緊張感があるのかないのかわからない文言が流れると同時に、人々は少しだけ慌ただしくなる。道行く人々はモニターを見上げ、車両は完全自動運転に切り替わる。信号が車の誘導をはじめ、地面には歩行者向けの案内が表示される。
「結構いきなり始めるのね」
〈いきなりでなければ訓練にならんのであろう。あれは軍用車両か?〉
『うん。帝国軍の標準移動司令車両を含む歩兵輸送車だね』
装甲車と一口に言っても、いくつか種類はある。戦車と呼ばれるような砲塔を持つタイプ。偵察用に小型化や軽量化したもの。輸送に特化した非戦闘用車両。
ボクらの目の前に来たのは、その中でも通信システムに比重を置いた移動司令所型だ。
「じゃあ、治安部隊の司令官があの車両に?」
『多分、わざわざ市民の真ん中に来たのは、ずいぶん豪胆だけど』
市民の誘導が始まっているとは言え、にぎやかな日中の街中。市民は足を止めたり、人が多すぎて動けなくなったり、避難はさほど進んでいない。
そんな中に装甲車とは言え司令官が来るのは、あまり得策ではない。
『むしろ狙わしているのか。自分を攻撃させようと?』
「あ、ハッチ開くよ」
アナトの言葉に視線を指令車両へと戻す。
天井を開けた手は、太く、鋭い爪を持つ鱗の揃った緑色の腕。
多少狭苦しそうに体を出したそれは、クロビアン人で間違いない。周りにいる市民の多くはテラニアンだが、中にはトクハン人や他種族たちも含んでいる。
熱に包まれているはずの市街の気温が、一気に下がったように思えた。
――ガイドー……。
あの日見た姿よりも、さらにいかつさを増したクロビアン人が、そこにいた。
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