第二十四話「古の箱舟」.4
結論から言ってしまえば、船の動力炉は生きていた。アクシャハラ・リアクター、数世紀が経過してもなお起動できる、不滅炉とも呼ばれる究極のエネルギー機関。
神聖刻術が施された艦内には、アクシャハラ・エネルギーが余すところなく行き渡り、メンテナンスロボットたちが再稼働していく。
「全部の電源を落としていったから、スペースパイレーツにも気づかれなかったのね」
『リアクターを動かしている以上、反応は重力波として観測できるからね。レイハガナみたいな小型で微弱ならまだしも、船舶級となると、やっぱり反応領域が大きいから』
「じゃあ、今動かしている分は?」
『最低限のメンテナンスロボットたちだけしか動かしていないから、地上から反応を感知するのは難しいはずだよ』
数日後には、この船は綺麗になり、発進も可能になっているだろう。ただし、メインコンピュータの状態までは検査できない。それをしたら船全体が起動し、上にいる者たちにばれてしまう。
『まだガイドーに、ここにリアクターがあるとは確信させたくない。必要なら、遺跡の上層部を吹き飛ばすこともしかねないだろうから』
もしこれがガイドーの手に渡れば、より多くの問題を引き起こす。システムはロックされているとはいえ、奴らもリアクターを持つ者。
制限を突破する可能性はいくらでもある。
〈この船は、まだしばらく寝かしておいてやろう。すぐ起きてもらう必要があるわけでもあるまいし〉
『うん。使わなければ、それに越したことはないからね』
改めて、クワハウという古代文明の規格外さを痛感する。
レイハガナは確かに強力なアーマーガンナーで、ボクにとっては切り札と言っていい。それでも無敵ではないと、ガッソーとの戦いで知った。
一方で、この船はこと艦隊戦においては、無類の強さを発揮するかもしれない。起動できるかどうかはまだ半信半疑な部分はあるけれど、船体スペックは圧倒的だ。
『こいつを使うことがないうちに終わらせよう』
「この船の情報を出しにすれば、ガイドーと接触できるかもね。クワハウ人の技術を、帝国は探して回っているだろうし」
遺跡の奥の、さらなる秘密。どうしてその情報を手に入れられたのかはごまかさなければいけないだろうが、ガイドーを釣るには必要なことだ。
『官庁街のほうに向かおう。もしかしたら、ガイドーを見られるかもしれない』
「……フィオガ、その、本当に大丈夫?」
そう言った彼女は、ボクの肩を掴む。
アナトの問いの意味は理解できる。ガッソーに彼女が人質に取られたとき、ボクは冷静さを失っていた。
もしガイドーを見た時、似たような感情に支配されないとも限らない。そうなったら、きっとルミスとの約束は守れない。
『大丈夫。君が一緒に居てくれるなら、きっと』
彼女にだけ見えるように表示した文字に、ゆっくりと頷かれた。
肩を掴む手が緩み、代わりにパシン、と背中を叩かれる。
「行こっか」
――うん。
無言で頷き、ボクらは地上への道を戻っていく。
できることなら、この船が動くことがないようにと願い、隔壁を閉じた。
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