第二十四話「古の箱舟」.2
巨大な空間は、やはり船のドッグらしい。上層部は鋭角、流線型で、厚みのある両刃剣を横に寝かしたような形をしていた。
これは被弾面積を抑えつつ、集中した火力を引き出せるように設計されている。戦闘機を思わせる形態なのは、大気圏内航行も想定してのことだろう。
球状艦首に当たる部分は、衝角としての機能を持ちつつ、船体バランスを支え、ランディングギア、センサー、様々な機能を複合していた。
『あった、このハッチから入れるね』
艦底部にあるハンドルを回すと、そこから中に入ることができた。
「船の中に書かれているの、全部これクワハウの文字なんだよね」
【そのようです。マスクを少し調整します。表示されている文字を瞬間翻訳しますので、これで読めるはずですよ】
「ありがとうホチャー。でも、計器は動いてないね。読める文字は、全部直接書かれているものばっかりで」
いくら文明が進もうと、手書きのメモや警告というものはなくならない。
しかし、船の中は暗く、機能が完全に停止していることが伺える。
「この大きさならタウホチャー号も積み込めそうね。空いている場所は食料プラントに改造できれば、この船だけで長期間航行もできそうだよ!」
〈む、アナトよ。そなたこの船で何をするつもりだ? 未知の恒星系にでも旅立とうというのか?〉
「いやいや、移動拠点って憧れない? ハンターナイトはスペースシップ一隻で宇宙の果てから果てまで、ってイメージもあるけど、整備拠点や集団生活するタイプだっているんだから」
ボクはその前者のイメージだった。けれど、確かにスペースシップだけではできないことは多い。特に船そのものの整備をするには、機材を詰め込む空間がない。
大きな船を使えれば、その分物資を詰め込める範囲は大きくなる。
なにより、食料を自給自足できるのはいい。ボクの身体調節用の薬も、造りやすくなる。
『確かに魅力的だ。けど、この船はアルヴァスのものじゃないのか?』
〈わらわとしてはそれを主張したいところだが、あっても宝の持ち腐れと言わざるを得ない〉
苦笑いを浮かべたルミスは、辿り着いた艦橋を見て、さらに続けた。
〈見よ。艦長席の後ろに掲げられた紋を〉
そこには、四つ巴の紋様が刻まれていた。
〈あれは我らアルヴァスを示すもの。その対角線上にあるのはクワハウを示すものである〉
円形の中に鋭い三日月。クワハウの紋様と言われるが、ボクには見覚えがなかった。
『本当、ホチャー』
【使用例はごく少ないですが、クワハウが自己表現の一環として用いることはあります。ただ、私を含めてコンゴーも、あまり使ったことはありません。あまり意味がないので】
単なるシンボルや、共通マーク以上の意味合いはない。ただ、知っている人ならば、この船が誰のものであるかわかるということだ。
何より、これがクワハウの者だと確定したなら、おそらく動力さえ回復すれば、まだ動く。
どう使うのか、それはこの星の者に委ねられるべきだろう。
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