第二十三話「帝国の人々」.2
「良き一日を」
とは言ってももう昼を回っているが。
守衛に送り出されたボクらは、モノホイールを引っ張りながら、都市の中へと入った。
「帝国車両だけじゃない。連邦メーカーの車両も結構走ってるのね」
アナトが最初に感じたのは、そんな雑多な風景に対する感想だった。
むろん、壁の外でも連邦メーカーの車両は多く見たが、街の中はさらに多い。
『でも、道の整備状況はこっちのほうがしっかりしてる。ヴァーグスより、こっちのほうが発展している気がするね』
「うーん、確かにきれいで、チンピラどもの姿もなさそうだし。連邦政府が喧伝する、悪の帝国! みたいな印象ってないわよね」
〈わらわからしてみれば、帝国も連邦も、あのような無機質な囲いの中でよくもまぁ息ができるものと思うがの?〉
アルヴァスの集落を見る限り、彼らの生活環境は樹上生活。ところどころに現代文明を超える技術は見受けられるが、その基本は自然と一体化した原始的なものだ。
そもそも、コンクリートの街というものを構築するつもりはないのだろう。
〈しかし、知りたいことは少し知れたようだの〉
『ガイドーが帰還していたから、防衛網が厚かった上に、アクシャハラ・リアクターを感知できた』
「だとしたら、あいつが今いるのは……」
ボクらの視線が、街の中心部へ向く。巨大な移民船を主体として造られた区画の隣。緊急時には脱出艇となるそれの外側に造られたのは、この街の官庁街。その中でひときわ高い建物に、スペースパイレーツの旗印が刻まれていた。
『すごく、わかりやすいね』
「こうも堂々とスペースパイレーツの旗を掲げているなんてねぇ」
〈おぬしらも、クワハウの言葉でなければ堂々と話せないことを街中でよく喋る〉
帝国人は知るはずもないクワハウの言葉でなければ、まともに会話することも難しい。
「どうする? もう殴り込む?」
『何の情報もなしに突っ込めないよ。下手をしたら、余計な被害を出しすぎるし、リアクターコアの情報を逃したら、何の意味もない』
これ以上帝国にアクシャハラ・リアクターを使わせない。それが最優先目標だ。最悪、研究成果さえ潰せれば、あのクロビアン人を取り逃がしたとしてもかまわない。
『クワハウの力を悪用させない。それがコンゴーとの約束なんだ』
〈見事な覚悟よ、フィオガ。ではガイドーとの戦いの前に、少しこの街の地下を案内させてくれぬか〉
「地下? クワハウの遺跡を?」
〈我らアムリタの恩恵を受ける者にしか通れぬ道があり、隠されし場所へと導かれた。アクシャハラの力を持つそなたなら、さらなる道が開けるかもしれぬ〉
『クワハウの遺産が、どこかに?』
〈可能性はある〉
ヴァーグスの遺跡では、誘導飛翔体の獲得ができた。この星の遺跡にも、まだ何かあるかもしれない。
それはきっと、アルヴァスの集落に行っても見つかるかもしれない。
『行きたい。この星のクワハウの遺跡の中へ』
もっと、コンゴーたちのことが知りたい。確かな好奇心がボクを突き動かす。
レイハガナを強化するためにも、ぜひとも調べておきたいところだ。
少しでも気に入っていただけたら幸いです。
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