第二十三話「帝国の人々」.1
惑星ドヘネットC首都「ドヘイディア」
アルヴァスたちの森からは、モノホイールを飛ばしても半日かかる距離だ。
船を離しすぎたと思う反面、艦隊によって次元重力波を感知された以上、タウホチャー号を街に近づけさせるわけにはいかない。
だからこそ、いくつか嘘をつきながら、この街に入る。
「久しいの、守衛殿」
「ルミス様でございましたか。数か月ぶりですな。このモノホイールは?」
フードを被ったボクらに代わり、ルミスが前に立つ。
ルミスが話し始めたのは、標準帝国語だった。訛りや癖を感じさせない、流暢なもの。守衛とは顔見知りなのか、守衛の方はどこか浮足立った調子だ。
「歩いてここに来る途中購入してな。今日は伴も連れての来訪で、道行く者から譲ってもらった。先日、害獣を対峙した礼を兼ねての」
「それはお世話になりました。お伴をお連れになるのは、初めてでしたか?」
「さすがにわらわひとりで全てをこなすのも限界での。忘れておるかもしれんが、わらわは族長や首長ではなく、その娘でしかないのだからな」
世間話をしながら、ボクたちのことを警戒させないように話題を逸らしていく。ちょっとした愚痴から、街の近況、そして――。
「なにやら、今日は空の上が騒がしかったように思えるが、流星でも落ちてきたか?」
「それが、ルミス殿ですからお伝えしますが、何やら不法侵入のようで。今ガイドー閣下がご帰還されていることもありまして、防衛圏の監視を強めておりましたところ、その騒ぎです。本日は、あまり長居されないことをお勧めします」
「左様か。心配りに感謝いたす」
やはり、ボクらの強行突入は話題になっていたらしい。都市の検問が厳しいのは、その一環なのだろう。
ルミスは取り出したパスのようなものを見せ、機械に通す。
「それでは、ルミス様。こちらを。お二人分のパスとなりますので、こちらに登録を」
差し出されたのは簡易的な生体登録装置。後からデータを改ざんすることもできるだろうから、ボクらとしては問題ない。ただ、アルヴァスに迷惑は掛かる。
ちらっと彼女の方を見ると、かまわない、というように顎で指し示す。
ボクらはその装置に手を乗せて、情報を乗せていく。
「名前の登録をお願いいたします。まずはそちらから」
「アナト」
「はい。そちらは?」
「ああ、済まぬ。このものは幼少のころの病故に、声を出せぬのでな。フィオガと申す」
ルミスの言葉に、守衛は意外そうな顔をする。
アルヴァス人が病気にならない種族だとでも思っていたのだろうか。
「それは、失礼いたしました。では、フィオガ殿で登録いたします。どうか、ご自愛のほどを」
決して、帝国の全てがスペースパイレーツなのではない。
そもそも、帝国自体が辺境の独立運動の延長線上に存在する。ならば、悪意を持って連邦に反逆したわけでもない。その一端に住まう大半の人々は、むしろ善意の市民だ。
「ではどうぞお通りください。良き一日を」
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