第二十二話「都市を目指して」.4
「ねぇ、クワハウの民とか友って、結局どういう定義?」
都市の中に入るまでの間に、アナトが問いかけてきた。
ボクとルミスはごく普通に会話していたため、単語の意味についてはあまり気にしていなかった。
〈そうか、普通の者には伝わりにくかったの〉
『正確な定義があるわけじゃないけど、クワハウ人の技術提供を受けた者をクワハウの友と呼ぶんだ。クワハウ人を介した友人、同族っていう認識だよ』
「古代文明に等しいクワハウ人に、認められた種族ってことね」
『中には特定個人として技術提供を受けたヒトもそう呼ばれるよね』
〈わらわたちのアムリット・エンジンがその賜物であるゆえな〉
技術提供するかどうかについては、クワハウ人個々人に委ねられている。きっと、アルヴァスにアムリット・エンジンを提供したクワハウ人は、コンゴーとは別なのだろう。
〈しかし、わらわたちがアムリット、お主はアクシャハラ、なんぞ同じクワハウの友であるのに、不公平な気がするの〉
『出会ったクワハウ人が違ったから仕方がないよ。それにコンゴー父さんは、ボクの父さんと母さんに、アクシャハラ・リアクターの基礎技術を伝えて、あとは自分で頑張れってスタンスだったし』
クワハウの技術は、現行宇宙のあらゆる文明を凌駕する。
アムリット・エンジンは、宇宙で広く使用されるアンブロス・ジェネレーターの上位機関。その燃料こそ特殊だが、アクシャハラ・リアクターには及ばない。
「ま、確かに自分たちの拝んできたものから、自分たちより良い物を貰っているヒトがいたら不満にもなるわよね」
『けれどアムリット・エンジンのほうが量産性は高いじゃないか』
〈その分燃料となるアムリタを生産する必要があるから大変なのよ〉
アムリット・エンジンの燃料となるアムリタ。特殊な生物からのみ生成できるそれは、繊細な技術と適正環境が必要だ。
この星の土地がそれに見合うと判断したからこそ、クワハウはアルヴァスにアムリット・エンジンを提供したのかもしれない。
『あれ、でも確かアムリタを生成するザハクっていうヘビは、砂漠でしか生息できないって聞いた覚えがあるんだけど』
〈長年の研究成果と、ザハクの適応性のおかげよ。我らは、そのおかげで不限なる恩恵にあやかることができておるのだ〉
トントン、と彼女は自分の胸を叩く。
〈だが、問題は我らの得た恩恵が、あのスペースパイレーツの外道によって覆されるやもしれん。我らの森を覆うアムリットの防壁も、決して万能というわけではないしの〉
『やっぱり、君たちの武器を最初視認できなかったのは、クワハウのステルス技術だったんだね』
同じ技術を持つボクらでも、ホチャーでも見つけられなかった。帝国の者が見つけることは、まず不可能だろう。
「帰るときは、尾行に気を付けないとね。二人とも、そろそろアタシたちの番だよ」
〈ふむ、ここはわらわに任せてくれるか? 案内人を買って出たのも、そもそもこう言った対外交渉は、わらわの役目故〉
『頼んだ』
ゆっくりと進んでいた列も、ついにボクらの番になる。
日々多くの人が行きかう都市防壁。さすがにすぐにばれないはず。
そう思いながら、アナトと一緒のモノホイールを押していく。
少しでも気に入っていただけたら幸いです。
評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。




