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第二十二話「都市を目指して」.2


 手渡された通信機を、ルミスはしげしげと見つめる。


〈ふむ、これがアクシャハラ・リアクターを利用した生体融合金属の柔軟性。アムリット・エンジンでも及ばぬ技術の極地よの〉


 そう言って彼女は髪を描き分ける。翼の付け根はこめかみのあたりにあり、古い甲冑の装飾を思わせる。耳とは感覚器が別のようで、耳に通信機を付けてから、パタパタと動かして位置を調整していた。

 鳥の特性を持つ種族。クマのような見た目のクワハウがそうであったように、彼女らの遺伝子もまた、地球に何かしら影響を与えているのかもしれない。


『クワハウやアルヴァスが先なのか。それとも動物たちが先なのか』

〈どうかしたか、フィオガ〉

『いや、特に。その羽、きれいだなって思っただけ』

〈き、きれい? そうか? 村の者たちは皆同じように持っておるでな。あまり気にしたことはなかったのでなぁ……〉


 頭羽の言及は恥ずかしかったのか、彼女は顔を赤らめる。褒められ慣れていないというか、そもそもアルヴァスにはそんな習慣はないのだろう。

 鳥の中には自分の羽のきれいさを見せつけて番を探すというが、アルヴァスにその習慣はない。そもそも、見せつけるには小さすぎる。


「もー、フィオガはまたそうやって口に出す。ルミスも勘違いしちゃだめだよ。フィオガってこんな感じの思わせぶりなことを言うだけで、他意はないから」

〈アルヴァスの者であれば、この頭羽を褒められて嫌な思いはせぬぞ。むしろ誇らしい。我らの真なる姿を示す羽は、ここしか残っておらぬからな〉


 ヒトがヒトの形になるまで、大なり小なり時間がかかってきた。数万年単位の時間だ。

 おそらく、ルミスが言う真なる姿とは、ヒトの形を成す前のアルヴァスの姿ではないだろうか。

 胎生の鳥型種族――それがアルヴァスの種族だったのではと思いながら、確証はない。


〈ただ、他人の頭羽にみだりに触れるのは不躾とされておる。二人とも気を付けてくれ〉

『わかった』

「フィオガじゃなきゃしないわよ、そんなこと」

『ボクだってしないよ』

「しそうだから言ってんの」


 そんなに非常識な人間に見えるだろうか。

 十年以上人間以外と過ごしてきた子ども。確かに非常識なことをしでかすのに申し分ないと、自分で納得した。


『他に、アルヴァスたちや帝国都市で気を付けるべきことって何かある?』

〈わらわたちと過ごすのならば、特にはない。何か問題があればその都度教えよう。帝国都市では……ああ、ひとつ〉


 そういったルミスの顔は、どこか生真面目さより、深刻さを物語る。


〈たとえそなたの仇を見つけたとしても、都市に住む者を傷つけんでくれ〉


 これから敵対しようとする相手にも向けたそれは、慈悲ではない。

 彼女ら、クワハウの友としての、矜持だった。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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