第二十二話「都市を目指して」.1
ルミスに連れられてボクらは森の中を探索――するのではなく、ドヘネットCの都市へと足を運んでいた。
アナトが持ってきたモノホイールの片側にサブシートを増設すれば、即席の三人乗りになる。サブシートにはルミス、操縦はアナト、その後ろにボクが座った。
「私たち、IDも何も持っていないけど、本当に大丈夫?」
〈構わん。わらわたちも何度となく都市には侵入し、物資の交換をしてきたが咎められたこともない。たとえ咎められとしても、十日も経てば忘れられておる〉
『良くも悪くも、辺境の国境線、っていうことなんだね』
〈わらわたちはここにずっと暮らしておって、いきなり国境線にさせられただけだがな〉
もしこの会話を連邦の高官が聞いたら、気まずそうな顔をするに違いない。
〈帝国軍の進駐が、何もかも悪いものだったとは、わらわも口にはできん。少なくとも多様な物資は手に入り、知らなかった文化や文明に触れる機会が増えた。クワハウの技術に関する研究書なぞ、奴らが来るまで知りもしなかった。読むのには苦労したがの〉
『クワハウの言葉は、今の銀河社会だと誰も知らないからね』
「そういう意味では、あなたたちの出会いって運命的ね」
アナトの指摘に、ボクとルミスは顔を見合わせる。
確かに、まさかこんな場所に来て、クワハウの言葉で話せるとは思っていなかった。
「ただできれば連邦標準語で話してほしいんだけど」
〈難しいの。わらわたちはこの言葉以外では、帝国の言葉ぐらいしか知らぬゆえ〉
【私がしっかり翻訳しますので、ご心配なく!】
「アタシがクワハウ語を学んだほうが速いわね」
宇宙には多様な種族がいれば、多様な言語がある。ただ、帝国都市内で連邦標準語を話すのは、少し目立ってしまうだろう。
『アナト、マスクを造るから、都市の中ではこれを付けていて』
「え、何これ? 粉塵は酷くないけど」
森から離れ、しばらく進んだ先にあった帝国製道路を、今は走っている。温暖な草原の上に敷かれた無機質な道路は、しかし快適に移動できる。
『このマスクで顔を隠して、発した言葉をホチャーが帝国語にしてくれる。ボクはもともと喋れないけど、書くことはできるし、ルミスは喋れる。ちょっと邪魔だけど、我慢して』
「わかった。つけるだけでいいのね?」
『ホチャー、瞬間翻訳お願い』
【承知しました。それとルミスさんに通信機を生成できましたので、お渡しします】
ボクの掌の上に、小さな通信機が出来上がる。レイハガナのパーツを流用したもので、アナトのシールドと同じだ。
彼女に渡すと、それを耳に付けるようにジェスチャーで伝えた。
これで、何かあっても問題はない。
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