第二十一話「森の民」.4
アルヴァスの民は、村の中心部にクワハウの遺跡を保有していた。
ドヘネットC――アルヴァスの言葉では惑星〈オクヌス〉――は、もともとクワハウの移住先の一つだったようだ。
そもそもハビタブルゾーンに存在する惑星だからと言って、植物が勝手に生えてくるわけではない。元からその種子と鳴るべきものがなければ、生命は誕生しない。
地球では原始生命体であるプランクトンや細菌の類から派生した植物が発生したことが、全ての始まりと考えられている。
『クワハウ人が、君たちアルヴァス人を創り出したってこと?』
〈そうだ。この翼の意味も、我らにアムリット・エンジンを残した意味も分からぬが、ただ森の民として生きろと、生体プログラムされていることは確かだ〉
これ以上文明を発展させない。
そう遺伝子上にプログラミングされていることは、すでにアルヴァス人も理解していた。
むしろ、現在の樹上生活という質素な原始的生活ぶりに対し、彼女らの服装は認識阻害フィールドを発生させ、槍には光学攻撃機能、弓にはアムリット・エンジンを利用した加速機能と矢弾の爆裂機能の付与などなど――クワハウの遺産は余すことなく利用されていた。
「なんやかんや、うまくやっているのね」
〈だがそこに、帝国がやってきた。結果、連邦だのとの争いの渦中に巻き込まれかけている〉
『普通に生きて、暮らしてきた人にとっては、そうだよね』
ハンターナイトという、連邦と帝国の代理戦争の片棒を担いでいる身としては、彼女の言葉に申し訳なさを感じる。早く終わりにできたらと思う反面。どうやってと、疑問符が付く。
〈まぁ、それもここ一年ぱたりと止んだがの。奴らが、アクシャハラ・リアクターもどきを手に入れてからは〉
『間違いなく、ガイドーの影響だ。奴がボクの父さんと母さんから奪ったリアクターコアで、帝国には新型の武装が配備され始めた』
〈幸いなのは、その出力がいまだアンブロス・ジェネレーターを上回る程度で、我らのアムリット・エンジンには遠く及ばないという点であろう〉
『迷惑をかける』
〈気にするでない。そなたにされても、何の益もないからな〉
彼女からの気づかいがありがたかった。
ただ、こうして話していた気になる、というか確かめておくべきことがあった。
『ルミス、君たちはこのまま帝国と矛を交えることになってもいいか? ボクらを集落に招いたと言うことは、少なからず彼らに対して反抗の意志を示したってことなんだ』
〈惑星の表面でドンパチしておったのはそちらであろう。それを迎え入れたのだ、少なからず覚悟はできていた。もっとも、クワハウの友でなければ、そのままとっ捕まえて帝国軍に放り投げておったがな〉
「こ、怖いこと言うわね、あなた」
カラカラと笑うルミスに、アナトは冷や汗を零す。
だが、今ので確認はとれた。
『ボクらの目的は、この星に駐留するスペースパイレーツにして、帝国軍准将、ガイドーの発見と、奴の持つリアクターコアの奪取。協力してほしい、森の狩人たち』
〈……奴らの攻撃は、一年ほど収まっていた〉
ぼそりと、ルミスは呟く。
〈けれど、この森以外には、奴らの轍が引かれ、灰色の道ができている〉
「帝国の、植民地化政策ね」
〈連邦に付くつもりはない。けど、そなたになら、手を貸してもいい。現在不在の族長に代わり、その娘ルミスが保証する〉
『ありがとう、ルミス』
ボクらは再び手を差し出しあい、硬く握り合った。
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