第二十一話「森の民」.3
ルミスの案内でやってきたのは、彼らの樹上集落。
木々の間に板を組んで造られた集落は、獣の襲撃を防ぎ、木々を繋げることで風雨に耐える設計がなされていた。
その中で特に大きな、中心部の家に招かれた。
〈ここはわらわの家でな。両親が今、他のアルヴァスの集落へ出ているゆえに、寛いでくれてかまわん〉
『ありがとう、感謝する』
出されたアルヴァスの薬湯を飲みながら、ボクらは話を始めた。
『ここは帝国から治外法権を認められた場所だと聞いている』
〈ああ、そうだな。正確には、奴らが最初に責め立ててきたとき、派手に返り討ちにしてやった結果、奴らの方から攻めはせぬと言ってきおった〉
【けれど、山の向こうにはいくつもの車両痕や、森を切り開いた形跡が見つかりました】
〈森全体をアムリット・エンジンの防御フィールドで覆っているとは言え、それもごく狭い範囲に限られる。山向こうまでは守れん〉
帝国の戦力に、森の民だけでは対抗できない。それは彼女もわかっているはず。
特に実戦を多数積みながら戦力を増強し続けるスペースパイレーツは、強大な敵となる。
「ねぇ、ずっとスルーしてきてなんだけど、アムリット・エンジンって何? アンブロス・ジェネレーターとは違うの?」
『ある生物が持つ重金属イオンを利用した動力炉だよ。アクシャハラ・リアクターに通じる第二の動力で、最大出力はアンブロス・ジェネレーターの数十倍にまで達する』
〈そちらの者は、クワハウの者ではないようだな〉
アムリット・エンジンのことを知らなかったアナトの様子に、ルミスは感づいた。
『彼女は惑星ヴァーグスで出会ったんだ。クワハウの技術にはあまり詳しいわけではないけれど、ボクの大切な仲間だ』
〈旅の中で伴を得たか。良き旅路のようだの。わらわも憧れる〉
ルミスは少し目を細めた。視線を向けられたアナトはつい背筋をピンとするが、ルミスは微笑で緊張を和らげた。
『帝国の動きは? こっちには攻めてこないの?』
〈攻めてきたとしても返り討ちにすることはできよう。奴らのアーマーガンナー程度、我らの弓の敵ではない〉
「いや、アーマーガンナーに原始装備で対抗できることに疑問なんだけど」
アナトの疑問ももっともだ。だが、プレートブレードがそうであるように、アンブロス・ジェネレーターの力を加えることができる。
アムリット・エンジンにも同じことは可能であり、その力を弓に加えるのだろう。
その内側に流れる黄金の水と、限界知ら不の出力から、不限機関と呼ばれるアムリット・エンジン。アンブロス・ジェネレーターの時とは、火力が違う。
『アムリット・エンジンによって強化された弓ならば、その速度で戦艦の装甲だって貫けるだろう。アルヴァスの民の強靭さがよくわかる』
「いやいや、わかんないわかんない」
〈ふむ、クワハウの友はさすがに理解が速い。我らの力を理解できぬ帝国は、初めて降り立ってから何度となく、無駄な攻撃を繰り返してきたものよ〉
アムリット・エンジンを持つアルヴァスの民。
これはもしかしたら、大きな戦力を得られる機会かもしれなかった。
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