第二十話「銀河の果て」.3
とっさにアナトが操縦桿を切ると、プラズマ弾頭は空を貫く。
「あれ、もしかして避ける必要なかった?」
【いいえ。たとえ旧式の砲撃システムといえども威力はお墨付きの兵器です。現在の収束率でも、連続して被弾すればアクシャハラ・フィールドを飽和状態に持っていけます!】
高い防御性能を誇るアクシャハラ・フィールドでも、度重なる攻撃には耐えられない。特に艦砲射撃はこの世界で最も強力な兵器の一つ。
「対消滅砲弾でないだけマシね。砲撃を掻い潜って、あとは大気圏突入!」
『大気圏に突入すれば、あいつらのレーダーを掻い潜れる。突っ込んで!』
「着陸地点の目星は!?」
『非居住区角が存在する! 原住民の、居住地……? ホチャー!』
【情報確認。スペースパイレーツ進駐時にも確認できなかった原住民が、移民後に発覚した模様。高度な光学フィールドに守られ、現在も帝国から独立状態、治外法権を獲得しているようです】
森の中に隔離されたように存在する集落。原始的に思える居住地に対して、自然と調和した民族。
――まるでクワハウだ。
『その近くに降りよう。きっと、たぶん』
「了解。突っ切る!」
アナトは出力を上げて集結しつつある戦艦の間を縫っていく。
ヴァーグスの時のお土産を吊り下げた状態とは違う。むしろ突入速度としては異常な速度で、ドヘネットCの重力圏へ入り込んだ。
「砲撃を抜けた! 低軌道防御衛星を感知!」
【その火力なら受けても問題ありません!】
ホチャーの言葉を信じ、回避より突入を優先した。不法移民船や海賊なんかを迎撃するための攻撃衛星だ。搭載しているミサイルやレーザーは、フィールドに太刀打ちできるものではない。
「大気圏突入まで、三、二、一!」
『フィールド圧力、増大!』
タウホチャー号を包む紫の光が強まる。機体の角度を正面から腹這いにして制動を翔けながら地表へ近づく。同時に欺瞞用シグナルとビーコンを発射。爆破を三十秒後に設定しておく。
いくら滞在するのが楽だったとしても、不法入星したのは間違いない。
ただでさえ異様に警戒が強く、加えてアクシャハラ・リアクターの波長を検知された。つまり、それを検知するための技術を造るための、指標がここにはある。
――間違いなく、あいつはここにいる。
「まもなく成層圏を抜ける。ビーコンの爆発を確認。これでしばらくは、ごまかせるね」
『艦隊の装備と、あの防衛網の圧。普通の辺境惑星じゃないのは確かだ』
「だからって怖がることなんてないよ」
『怖がる?』
彼女の言葉に問いかけると、小さく頷かれた。
自分の手を見てみると、震えていた。恐怖? それとも興奮? ただ怯えている。
「大丈夫」
操縦桿から片手を離したアナトの手が、ボクの手に触れた。船体の揺れが大きくなったけど、気にするほどではない。
「アタシもホチャーも一緒だから」
その言葉に、ただ小さく頷いた。
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