第二十話「銀河の果て」.1
銀河の果て――そう聞いて思いつく景色は何であろうか。
恒星の一つも数光年以内に存在しないボイド空間。
凍った惑星だけが存在する、無人領域。
想像する姿は人それぞれであろうが、こと銀河連邦の果て、という意味では変わってくる。
「あともう少し進むと、帝国との境界線よ。特にこれと言って協定もなにもない、ただの小競り合いの結果なのよ」
もう少し、といっても一ワープほどの距離がある。
銀河連邦の属する銀河系と、別の銀河系の境界線。ヒトの住む惑星など一つも存在しないそこは、だがしかし、大量の星間物質の滞留地帯でもある。
『二つの銀河のニアミスが、ここにいろんなものを漂わせているんだね』
「うん。この百年間の連邦と帝国の戦いで、かなりの規模の戦いをしてきたもんね」
数光年離れたところから観測していても、そのデブリの多さには目を見張る。まるで大量の瓦礫が川のように横たわり、眼に見えないはずの境界線をそこに作り出していた。
もっとも、今回の目的はこのデブリの川を超えることではない。
その内側に潜伏する、スペースパイレーツに会いに行くことだ。
『機首反転。観光はそろそろ終わりだね』
「目標惑星設定。恒星ドヘネットC、連邦警察も諦めた、スペースパイレーツの一大拠点だね」
『連邦軍の戦力なら、惑星ごとスペースパイレーツを吹き飛ばすくらいしそうなのに』
「ここにクワハウ人の遺跡があるみたいだから、それを壊したくないのよ」
クワハウ人は、銀河連邦の設立にも深く関わってきた。そして今も技術提供や相談役として活動している。その遺跡があるとなったら、簡単には吹き飛ばせない。
「うん、それに、別の問題もあるみたい」
『どういうこと?』
「ホチャー、これをフィオガの端末に」
アナトは手元の端末を動かすと、資料をボクの腕のデバイスに送ってくる。
それを開くと、彼女の言いたいことが理解できた。
『銀河帝国の艦隊だね』
「制圧をスペースパイレーツにやらせて、あとから帝国軍と帝国市民が進駐しんだっけ。もともと国力が小さく、資源に限られた帝国からしてみれば、一つでも惑星を多く占領して資源開発をしたいだろうから」
『あそこには多くの市民が住んでいるんだよね?』
「大概は移民でしょうけど。連邦軍が惑星への直接攻撃を戸惑う理由にもなるわ」
その市民を守るために、帝国軍も駐留する。帝国が連邦とまともに戦争ができる理由の一つに、その技術力がある。
帝国の戦艦の性能は連邦軍のそれを上回り、数で押す連邦を少数で翻弄する。大規模な艦隊戦を回避し、ゲリラ的な戦術で削り、戦況をコントロールし続ける。もしもこの惑星に大規模な進攻作戦を行おうとすれば、多数の消耗を強いられることになる。
「本当にここに突っ込むのね」
『アクシャハラ・フィールドがあれば、艦砲射撃くらい効かないから大丈夫だよ』
「心配のしどころが違うんだけど……まぁいっか。目標は」
『ガイドー。簡単にはいかないと思うけど。肩書に偽りがないなら、ここにいる』
「了解。ホチャー、ジェット再始動。惑星の重力圏に入りましょう」
【承知いたしました! アクシャハラ・リアクター、最大稼働!】
紫の光に包まれた船は、再び目標へ向けて飛ぶ。
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