第十九話「大気を超えて」.4
目標星域まではおよそ十日。ワープを繰り返してもその距離だ。
ただし、アクシャハラ・リアクターを二つ手に入れた今なら。
『今なら、そこまで三日で行ける』
「どういうこと?」
船全体をアクシャハラ・フィールドで包み、多次元バイパスワープを使えばより速く移動できる。ガッソーが捕まったことはこの三日間で伝わっているだろうけれど、その当事者が一週間以内で来るとは思っていない。
そのことを説明すると、アナトは不思議そうな顔をした。
「アクシャハラ・リアクターって、ほんといろいろできるのね。防御フィールド、攻撃エネルギー、重力制御、ワープ航法、万能すぎて何ができないのかわからないわ」
『いろいろできないさ。それだけあってもヒトの腹は満たせないし、無酸素空間じゃ生きられない。通信機能があるわけでもなければ、エネルギーそれ単体ではほとんど意味がないんだ』
「あくまで、フィオガのレイハガナやタウホチャー号があってこその話なのね」
『うん。だから万能だと思えるのは、このシステムで解決できる問題に遭遇している間だけなんだ』
決して何でもできるわけではない。戦うために必要なシステムは大方揃っていたとしても、通信機能については従来品とあまり変わりがない。
量子空間通信が完成してしまった今、クワハウでもこれを超えるのは、アクシャハラ・リアクターの大容量エネルギーを利用した次元跳躍通信がある。とはいっても使い勝手はあまりよくない。
互いに同じ通信機能を必要とし、さらに量子空間通信より距離的有利もない。
『でも、このアクシャハラ・フィールドと、収束次元砲の攻撃力は、ボクの最大のアドバンテージだ』
「スペースパイレーツたちの攻撃から身を守るっていう話なら、確かに重要よね。でも気を付けてね。スペースパイレーツの討伐任務はハンターナイトにもたくさん来るけど、それ以上に人質救出ってのが重要なんだから」
その言葉に、ボクは少しバツが悪くなる。
アナトが人質に取られたとき、冷静さを欠いて彼女を危険に晒した。同じことが、より多くの人数に対して起きるかもしれない。
『でも、それで武器は下せない』
もしスペースパイレーツに屈し、銃を降ろせば、その時点で人質もろとも死ぬことになる。だから時には冷酷になる必要があると、多くの事件が示している。
『それでも、ひとりでも多く、助けられるようになりたいんだ』
「うん、わかってる。アタシも手伝うからさ」
彼女の手が、ボクの肩に乗った。
「一緒に頑張ろう、フィオガ!」
微笑む彼女に、ボクは最大限力強く、頷いた。
そして、ワープドライブの光に包まれた。
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