第十九話「大気を超えて」.2
タウホチャー号の操縦席は四人乗り。
ヤージとキッハーもついてくるかと誘ったら、二人ともこの星が好きだと断られた。
「なに、フィオガはアタシとの二人旅は嫌だっていうの?」
『そんなことはないけど、大勢のほうが楽しいじゃない?』
彼女は不満そうな顔をなくし、逆に申し訳なさそうな顔になる。
「もともといた船には、ご両親以外もいたの?」
『うん。お兄さんからおばあさんまで、いろんな研究員が一緒に居たんだ。ボクみたいな子どもはいなかったけど遊んでくれた人もいて、一つの家族みたいだった』
その全てが、あの一瞬の出来事で灰塵に、宇宙の藻屑になった。
クロビアン人のガイドー、スペースパイレーツの私掠船船長。帝国では准将の地位を与えられ、連邦方面宇宙軍強襲艦隊司令。連邦からは全域指名手配された大犯罪者。
その居場所は、今だはっきりはしていない。
『けど、情報はある』
ボクらはタウホチャー号の席に座ると、前方のナビゲーターを起動する。
そこには、この銀河系の星域図が表示された。
『マフィアとスペースパイレーツが残した通信ログから見ると、このヴァーグスがある星域とは、別の地域と通信していたようなんだ。連邦管轄域でも辺境に当たる地域で、毎回場所は移動している』
「じゃあ、そのガイドーってやつの活動地域は」
『間違いなくこの周辺だ。少なくとも、あいつが乗っていた船は、ここにいる』
星系の一つを指差すと、そこはだいぶ辺境で、二十年ほど前にスペースパイレーツに占領された非開拓惑星だ。今では帝国軍まで進駐し、開発が進んでいるらしい。
連邦と帝国の境目。ガイドーを見つけるには、ここで探す必要がある。
「でも、すごい肩書ね。強襲艦隊司令なんて、普通の軍人でも早々なれないものでしょ」
『帝国は、確か辺境地域の領主が作った独立国、だったよね』
「ええ。とはいっても、実際は大武器商人と連邦に対する脱税を行った大企業による連合国なんだけど。これ、あまり知られていないのよね」
『そうなんだ。コンゴーも、あんまりそのことについては教えてくれなかったな』
【そもそもフィオガがあまりそう言った話を聞きたがらなかったでしょう】
――それを言われると反論できない。
ともかく、帝国というのはその実態は多くの企業による商業国家、といったほうがいい。
だからこそ、既存の軍事的観念とはかけ離れた人事でも、容易に行える。
『連邦軍に協力要請ってできないかな?』
「無理でしょうね。マザーが頼み込んでもダメだったの。あなたが来てくれなかったら、まだマザーはピリピリしてたわ」
『この辺境星域では、そうやって抵抗しようとしてくれるヒトも、いないんだろうね』
自分の土地を踏み荒らされているのに、連邦軍も連邦警察も、手出しできない。
戦略的に価値がないというのも事実だろう。何せ、もともと無人の星系だ。
けれど。
『発進準備は完了している。何時でも出発できるよ』
「うん。そろそろ、行きましょうか」
顔を見合わせたボクらは、シートに体を固定した。
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