第十八話「発進準備」.4
惑星ヴァーグスのある恒星系から、はるか数万光年。
別の恒星系に存在する惑星。その低軌道上。
帝国式特殊合金製宇宙戦艦、その内部にクロビアン人たちの姿があった。艦橋の艦長席、そこにひときわ大柄なクロビアン人が座っていた。
「ガッソーが捕まった?」
その言葉を聞いたとき、クロビアン人は頬杖を突きながら聞き返した。
「あいつは、弱くはないぞ? 俺にアーマーガンナーとの戦い方を教えてくれたのはあいつだ。今じゃあ俺の方が強いが、弱くはない。そもそも部下だっているだろう」
『ですが! 事実、ひとりのハンターナイトによって、発掘調査中だった遺跡が襲撃され部隊は壊滅しました』
通信越しに伝わってくる焦りは本物だ。話している内容も、決して嘘ではないだろう。
ハンターナイト――その言葉にクロビアン人は瞬膜をわずかに前後させる。
彼らスペースパイレーツにとって不倶戴天の敵。なんなら連邦軍より厄介な奴らだ。通常の哨戒任務では訪れないような辺境地域にまで現れ、突然攻撃を仕掛けてくる。
「ハンターナイトが単独で部隊を壊滅させたとのは、気になる点だ。確かに強い奴はいる。伝説的な強さを持った狩人は、時に英雄と呼ばれることもあるくらいにな」
『また、そんな奴が現れたってことでしょうか』
「時代は繰り返すって言うんだ。昔死んだハンターナイトが生まれ変わったとしたらそんな奴が現れたっておかしくはない」
クロビアン人は立ち上がり、通信士の椅子に近づく。
「襲撃してきたハンターナイトの正体はわかるか? どこの誰だ?」
『それが、こちらのデータベースには該当しない奴でして、まだガキみたいで……』
「敵の年齢なんか気にしてんじゃねぇ。必要なら執行部隊を率いて潰す。さすがにハンターナイト教会全部がまとまってかかってきたら困る。連邦軍まで引き連れてくるからな」
『全面攻勢は、緊急手段と』
「ヴァーグスにいる奴らで磨り潰せ。たかがハンターナイト一人、物量で押せば終わる」
『了解』
海賊稼業に、消耗戦はあまり好ましくない。ただでさえ物資や戦力が足りないからゲリラ戦と局所戦で戦力を温存しつつ成果を上げている。
いくら私掠船として帝国から最新鋭の戦艦やら人員を供給されても、数がいなければできることは限られる。
「さて、どんな奴かなぁ」
彼は不敵に笑う。
海賊というものは、どこまでも刹那的だ。享楽的で、突発的な存在だ。
ならば、強敵の出現も楽しんでいなければやっていられない。
「艦隊の発進準備をしておけ! アーマーガンナー付きでな」
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