第十七話「出会いと別れと」.4
ハンターナイト教会のポートに、多数の護送船が並んでいた。
そこにタウホチャー号を降ろしてハッチを開けると、降りたボクらに筋肉質な腕が肩ごと激突してきた。
「アナト! フィオガちゃん! んもう、心配したんだからぁ!」
「マザー、痛いって。首入りかけた」
『苦しい。きつい。離して』
「心配かけた罰! ああもうぎゅっとしちゃう!」
力強いハグに体がおられるような気分だが、たぶん彼女なりの愛情表現なのだろう。しばらく黙って受け入れる。
「あー、ミスターコーエン」
「あ?」
「あ、マザー・コーエン。そろそろ、引き渡しを」
「ちっ、せっかちな男は嫌われるわよ。でもま、フィオガちゃんの船にいつまでもゴミ共おいておくわけにもいかないし。フィオガちゃん、あいつら引きずり下ろすのに、こいつらは行っていい?」
連邦警察に対して何ともぞんざいな扱いだが、マザーは昔高名なハンターナイトだったそうだから、許されるのだろう。
ハグされたときにも、筋肉ではない硬さがそこにはあった。ヒトを守り育てる生き方をしていても、戦い方を忘れていない証拠だ。
『賞金の支払いって今して貰えるのかな』
「全員の賞金照会が終わればすぐにでもお支払いできますが、現物となりますと時間を頂きます」
『電子でいいよ。八千六百万クォーツプラスもろもろ。予算不足にならないようにね』
「ご心配なく。賞金用財源は常にプールされていますので」
連邦警察たちはてきぱきと動き、どんどんスペースパイレーツたちを護送車に詰め込んでいく。一人一人の顔、中には追跡用ラベルを刻印された者もいる。そう言ったものたちを調べていくと、賞金総額が九千万にまで膨れ上がる。
「それではハンターナイト:フィオガ殿。ここに犯罪者拿捕協力の賞金として、全員分の懸賞金をお支払いする。ご確認を」
『大丈夫。お仕事お疲れ様でした』
「ご協力、感謝いたします」
滞りなく、ガッソーたちの受け渡しは完了した。
小さな窓からは、あのニヒルなら笑みが見えた。
――じゃあね、ガッソー。
――じゃあな、フィオガ。
声は聞こえてこなかった。ただ、窓から見えた目がそう言っていた。
「はぁ、終わった。フィオガちゃん、これからどうするの? まだこの星でスペースパイレーツ探しするのなら、空いている部屋を使ってくれてもいいけど?」
『ガッソーのおかげで探す場所がわかってきたから、もうヴァーグスからは離れるよ。いろいろありがとう、マザー。まだ調べものとかあると思うから、数日間は滞在するだろうけど』
「あらそう。じゃあガッソー逮捕記念においしい物つくんなきゃねぇ。アナト、あなたもちょっとは手伝い――あら? どうしたの?」
アナトが沈黙していることに、マザーも気づいた。ここに来るまでの間も無言で、今の今までも無言だった。
その理由は、ボクが作り出した。
「マザー、あのね……」
「うん、なあに?」
「話したいことが、あるの」
「それは今? 夕飯のあと?」
「……夕飯のあとで!」
ぐぅ、とボクらの腹が同時になる。顔を赤くした彼女と顔を見合わせると、また視線を逸らされた。おなかがすくのは恥ずかしいことじゃないのに。
「そう。じゃあ準備しましょ。さ、材料が足らないから、買い物よ!」
マザーにひきつられて、ボクらは街へ向かう。
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