第十六話「星の戦士」.3
アクハトを放った時、それまで止まっていた呼吸が再開した。
ガッソーの手にアナトが捕まったのを見た時、全てが吹っ切れたように体が動いた。アナトを助けたいと言う感情とは裏腹に、意地でもガッソーを倒すという感情。
相反する衝動に、体が突き動かされた。
『アナト、アナト!』
守ると約束した。傷つけさせないと誓った。
なのに、破った。
『アナト、大丈夫? 怪我してない!?』
「うう……どっちかっていうと、さっきのすっごいビームの余波でやばいかも……」
砂ぼこりにまみれた彼女の髪を払い、左腕に抱える。
「ていうかさ、アタシ、アクシャハラ・フィールドで防御できたから、あんなナイフくらい怖くなかったんじゃない?」
『ホチャー、あの時のアナトのフィールド充電率は?』
【マックス充電、おそらくはアクハト一発くらいなら耐えられるくらいのフィールドは形成できたでしょう】
つまり、激昂して無謀な突撃をする必要なんてなかった。ただ彼女を危険に晒しただけだった。
自分の居た堪れなさが恥ずかしくて、右手で頭部を抑えた。
『ごめん、君を危険に晒した上に、吹き飛ばしかけた』
「次はもうちょっとスマートな……うん、絵本の王子様みたいに助けてくれたら許す」
『勉強しておきます』
「うん、よろしい」
泥に汚れた顔でニヤッと笑った彼女は、ペチペチとハッチを叩く。
「がんばってね、アタシのナイトくん」
『うん』
「甘酸っぱい青春ドラマでも流してんじゃあぁねぇよ」
土煙の向こう側から声がする。
アクハトを叩き込んだとはいえ、アクシャハラ・フィールドに防がれたらしい。
それでも削っていた分、防ぎきれなかったダメージが彼の鱗から血を流させている。
『やっぱり、クロビアン人は頑丈だな』
「だからと言って二発も三発も耐えられねぇよ。たっく、装甲が台無しだ」
普通のアーマーガンナーなら動けなくなっているところなのに、この男は元気だ。
そう考えると、あのクロビアン人もとんでもなく強いのは間違いない。
『さっきは変な戦い方をしてごめん。ちゃんと決着つけるよ』
「ふふっ、決着をつけるとは、ずいぶん傲慢じゃないか」
『お前を倒して、捕まえないと、次に繋がらないんだ。お前の先にいる、もう一人のクロビアン人に』
ボクの答えに、ガッソーは笑い声をあげる。
「こだわるねぇ。あいつに……ま、確かにこのヤマはあいつの持ち込みだ。あいつのことを教えれば、今更だが見逃しちゃくれねぇか?」
『それとこれとは話が別。お前は捕まえる』
「融通の利かねぇ……。いや、立派なハンターナイト様だよ」
ガッソーは自らの崩れかけたアーマーを投げ捨てる。ほぼ生身の状態。それでも地球人よりはるかに強い彼は、拳を握って構えた。
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