第十五話「目覚めの時」.2
近距離での殴り合い。
しかも相手はアーマーガンナーとの戦いでは手練れ。また腕を掴まれれば投げられる未来しか見えない。
地面に叩きつけられた衝撃で緩んだフィールドは、奴らのブレードを受け止められなくなる。今度は一対多。投げられて動けなくなったら、この生体融合金属の装甲でも受け止めきれない。
「こんなヤロウがハンターナイトになっちまうなんてな。これからは下手に情けをかけるなんてできねぇな」
『今まで情けや慈悲を示したことなんて数えるほどもないだろ』
「指摘すんなよ恥ずかしい!」
飛び上がったガッソーは腕を大きく振り下ろす。アーマーガンナーの腕を使って受け止める。反撃の拳を振るけれど、うまくいなされてダメージが入らない。その隙に左右からトクハン人が接近してくる。
「こいつ、格闘能力はあんまり高くないくせに……」
「防御力だけはいっちょ前だな!」
『左右からの時間差攻撃。対処できる――そこ!』
ブレードを回避し、受け止め、反撃を仕掛ける。トクハン人たちは攻撃に出力を振っている分、フィールドの防御力は低い。
カウンターで十分対処可能。追撃のガッソーの攻撃を確実に受け止めて、投げられないように距離を離す。
「警戒してやがんな。機体頼りの戦い方から学んでやがる」
「くそっ、まるで格闘戦を習いたてのガキを相手にしているみてぇだ」
「中身はガキだ。だからって油断すんな。才能のあるガキだ!」
心臓が跳ねる。ガッソーから褒められた。
憎きスペースパイレーツ。殺しても殺し足りない敵。だからこそ、その敵に認められた事実が、ボクを高揚させる。
こいつに一泡吹かせてやりたい。敗北を認めさせ、奴の情報を吐かせる。
『勝つよ、ホチャー』
目標が定まると、さらに気分が揚がる。達成するためにはどんな困難だって乗り越えられる気がする。
全身を駆け巡る血液が沸騰したように熱い。
アクシャハラ・リアクターの輝きまで強まった。
【リアクターの精神感応性能が向上しています。フィオガ、あなたは戦うことに興奮しているんですか?】
『……たぶんそう。奴らを倒せることに、興奮してる』
まるで遊びで獲物を痛めつける残虐な捕食者のようだ。スペースパイレーツにあれだけ苛立ちを覚えていながら、僕自身にも同じ感性が備わっている。
それを嫌に思う自分がいるのとは逆に、愉しみを感じているのもまた、間違いない。
【それは、ある意味仕方ないのかもしれません】
『ホチャー?』
【クワハウ人は、かつて全銀河で狩猟を繰り返し、死と滅びを振り撒いてきた。その本能が、彼らの遺伝子を受け継ぐあなたにも表れているのです】
『じゃあ、ボクはクワハウに近づいた?』
【原初の、クワハウに】
アーマーガンナーの中で、ボクは少しだけ笑った。
嬉しかったのだろうか。父と慕ったヒトと同じ存在になれたこと。まるで自分が、その一人になれたようだ。
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