第十五話「目覚めの時」.3
『アクシャハラ・リアクターは、ヒトの心に反応するの?』
「よく気づいたな。その通りだ」
その会話をしたのは、ボクが何歳の時だっただろうか。
コンゴーと一緒にアクシャハラ・リアクターの稼働実験をしているとき、ふいに気づいて聞いてみたことだった。
『機械がヒトの心に反応していたら、面倒じゃない?』
「うむ、普通はな。だがこれはこれで面白いではないか。特に想定以上の出力になった時は嬉しくてたまらないだろう」
『最初から最大値を出せていたら楽なのに』
アクシャハラ・リアクターは、通常稼働させていれば安定した高出力のエネルギー供給炉となる。それこそ都市型アンブロス・ジェネレーターの三倍以上。
一つの小さな動力源だけで、都市が三つ賄える。もちろんそれを送電するための大量のケーブルと変電所が必要になるが、出力自体は足りる。
『でもボクの奴は、それほど安定稼働できるわけじゃないんだよね』
「君に施したのは、古代で最も優れた……勇傑の鎧という、当時のクワハウ最強の戦士が使っていたアーマーガンナーの、コピーでもある」
『それ以降、アップデートしていないの?』
「研究自体が、そこで止まってしまったからな。新しいものを開発するのではなく、自然と調和し、今ある者を長く使う。その方向に変わっていったんだ」
『それは停滞なんじゃないの?』
「私たちクワハウは、すでに長く続きすぎた。どれだけ早い発展をしようとしても頭打ちが見えてしまっているから、むしろ退化することを選んだ」
つまり、ボクがコンゴーにやらせているのは、ゆっくりとした退化と停滞の中で、穏やかに過ごすクワハウに、また無理やり進化を促したということなのだろう。
当時、すでに罪悪感を抱いていた。
静寂に包まれた水面に、あえて巨石を投じる。眠っていたものを叩き起こしてまで、力を手に入れた。
『ボクには、クワハウの選択を、理解できる日が来るかな』
「どうしてだい?」
『父さんたちが手に入れようとした力を、手放すことができないと思うから』
「なら、君だけが持っていればいい」
その言葉に、ボクは首を傾げた。
「個人が異常な戦力を持つことは確かに危険かもしれない。だが、こんな時代で、広い銀河だ。それくらいの飛びぬけたものがいたって、別に宇宙全体に影響を及ぼすには至らない。クワハウの場合は種族全体がそうで、銀河中に出かけては狩りをしていたから問題だっただけさ」
呆れたように肩をすくめて、コンゴーは続ける。
「君が自分を律し戦う限り、アクシャハラ・リアクターは力を貸してくれるだろう。ホチャーだって手伝ってくれるしな」
『自分を律する』
「君が言ってくれたんだ。復讐のためではなく、悲しみを広げないために力を使うのだと」
最初の誓い。その実現のために、コンゴーは力を貸してくれる。
父さんと母さんの研究を悪用させない。そのためになら多少の罪悪感だって乗り越えられる。
――そうだ。だから。
――狩人になれ。
――害獣よりヒトを守るための。
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