第十三話「敵対者」.4
アナトを抱えて遺跡内部を進もうとすると、周囲に現地生物たちが寄ってくる。
よく見れば、楕円形の胴体にクモのような鋭い六本脚。単眼の大きな目があって可愛い。
『愛嬌ある生物だよね。名前なんだろう』
「愛嬌? 愛嬌って言った? これの? どこに? あの牙見てよ!」
節足動物といっても昔、地球の虫図鑑という本で見た虫とは違い、肉食動物のような歯が並んでいる。本来ならネズミやリスくらいの大きさのはずが、今では大型犬くらいの大きさになっている。
異常進化だね。
『大丈夫。ちゃんと守るから』
「ホントだよね、お願いよ……?」
アナトは不安げにしがみついてくる。ああ言ったものは苦手なのか。
――b-Anにはあんな感じのがいっぱいいたからな。
自然の楽園ともいうべきクワハウの故郷には、地球人には幻想と言われたような生物もいっぱいいた。きっと普通の地球人系の感性は、アナトのほうが正しいのだろう。
『現地生物まで使役して守ろうとしていた遺跡。やっぱりあるんだ』
「あのガーディアンが守っていたものは、“これ”なのよね?」
『多分』
ガーディアンと戦った場所から少し進んだ先。多数の枝分かれした道を全部無視していくと、そこには扉があった。
あのクロビアン人は途中の通路のどこかに潜んでいる可能性は高い。防御システムを倒してしまったから、あとからやってくる者たちは素通りし放題。
なるべく早く回収して、ここを封鎖しないと。
『ホチャー、メインシステムへのアクセスは?』
【何度か試していますが、アクシャハラ・フィールド防壁の影響でしょう。ファイアウォールが頑強すぎて欺瞞情報によるすり抜けすら許されません。このオリジナルアルゴリズムは、アクシャハラ・リアクターが発する異次元エネルギーを応用した二次元世界干渉式電子演算によって導き出されたクワハウ特有のものでしょう。私の現在の許されている演算領域では到達できません】
『ボクにはホチャーが何を言っているのかわからない』
「ホント、人間の言葉で話してくれる?」
【わかりづらかったのなら掻い摘みますと――私でもメインシステムへのアクセスは困難です。アクシャハラ・リアクターを止めてから考えましょう】
技術的な話は、ある程度スペースシップの整備や調整。アーマーガンナーの修理のために教えてはもらったけど、プログラムについてはあまり熟達しなかった。
あんな高度技術を積み木でも組み立てるように扱えるクワハウ人が、古代に大文明を築いたのも頷ける。
「最初からそう言ってよ。で、この扉の向こうが、アクシャハラ・リアクターなの?」
『多分』
【フロア構造スキャンではここが最奥部に繋がり、特に頑強な造りになっています。少なくとも入り口にはなっているでしょう】
壁面にある手形のパネルに手を置く。六本指の形状で、クワハウ人の手の形に合わせて造られていることがわかる。
五本指に変化したクワハウのアーマーガンナーであるけれど、アクセスは問題なくできた。
『これが古代クワハウの残した』
「アクシャハラ……リアクター」
腕の中のアナトが、小さく息を飲んだ。
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