第十話「狩りの誇り」.3
風の中に、不愉快な音を感じる。
『アナト、来た』
投影ディスプレイを消して、プレートブレードを掴む。このモノホイールに乗っていてはアーマーガンナーは使えない。プレートにエネルギーを流すことでブレードにし、ホイール内側の取っ手を掴んで立ち乗り状態になった。
『ホチャー、彼女の防御フィールド展開は任せる。ボクのほうは大丈夫』
【わかりました。アナトさんの防御に専念します】
彼女に渡したブローチ型デバイスから供給されるフィールドは、車体のほぼ全体まで覆っていく。
「フィオガ、本当に大丈夫!?」
【大丈夫だそうです。それよりも、アナトさんは運転に集中を。この先道の起伏の変化が大きくなっています】
「気を付けてね」
アナトの声を聞きながら、片足を外して身を乗り出す。近づいてくるのは、インセクティアンの武装集団。クロビアン人はいない。
――スペースパイレーツの尖兵、ってところかな。
四輪型の自走バギー。各々の手に構えた武器は、実弾系の標準装備。
「撃てェ!」
警告も脅しもなく、一斉掃射。
【アナトさん、振り向かず加速を!】
ホチャーの指示に従い、彼女はさらに加速した。飛んでくる弾丸をフィールドとブレードで弾く。ホイール内部に乗る形のモノホイール型であるから、タイヤそのものが盾替わりになってくれる。
東の遺跡まで、あと数十キロ。
『ホチャー、奴らが何か言っている。聞き取れる?』
【集音装置がないので難しいです。特にインセクティアンは言語ではないテレパシーフェロモンによる交信が可能なので】
狙いは盗まれたリアクターコア。なのに容赦なく撃ってくるのは、あのリアクターコアでは誘爆の規模はさほど大きくないとわかっているということだ。
スペースパイレーツ――十年以上前に、父さんたちからリアクターコアを盗んだあのクロビアン人に繋がる何かを、手に入れる。
――復讐。それだけではなく。
『父さんと母さんが、目指した未来のために』
【アナトさん、車体を右に!】
「こっち!?」
車体が右に傾く。同時に後方から近付きつつあったパイレーツのバギーに近づいた。
モノホイールから飛び上がると、慣性に引っ張られつつバギーが近づいてくる。前方の出っ張りへと落ちると、インセクティアンの甲殻顔が引き攣った。
――飛べ。
車体に向けて、プレートブレードを突き立てた。地面に突き刺さった刃が車体を押し止め、後輪が浮かび上がる。
乗員たちは振り落とされ、その間にボクは車体から離れる。バギーは複数台追いかけてきている。次の車体に乗り込むと、抵抗するパイレーツを蹴り落とす。
【見事車体を奪いましたね。アナトさんを守るためにも、十分囮になってください】
『マスターに対する扱いが雑だなぁ……』
【接近する車両は残り七車両。相手も惜しまず奪い返しに来ています】
『わかった!』
そこから、スペースパイレーツとの追撃戦が始まった。
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