第九話「一つの手掛かり」.1
ともに宇宙へ。
その考えを共有したアナトは、改まって問いかけてきた。
「あなたのアーマーガンナーとか船、もしかして、このリアクターコアが使われているの?」
『うん。古代文明人クワハウが開発した異次元光力機関。この世界とは別の場所からエネルギーを得ることで完全永久機関を実現している。リアクターコアは、そのための中枢ユニットなんだ』
リアクターコアの純度によって、得られるエネルギーには大きな差がある。巨大なタンクがあっても、そこから伸びるパイプが細ければ水は少しずつしか出ない。けれど巨大な出口と、タンクの高い場所ではなく低い場所にあれば、次から次にエネルギーは流れ込んでくる。しかも、中の水は枯れることがない。
アクシャハラ・リアクターにとって、リアクターコアはその蛇口の役割を果たす。
「そっか。でも納得。どうしてこれを一目で宝石類じゃなくて、リアクターコアなんてものなのかわかったのか。理解できたよ」
『ボクの育ての親が言うには、今から連邦や帝国が三百年かけて、二世代分技術進歩を果たした先の動力機関なんだって』
「つまり、未だ研究途上の高重力縮退炉の次の世代ってことね」
オーバーテクノロジーもいいところだ。それでも古代文明が培った技術によって開発されたというのなら、何か納得できてしまう。
「この星にもね、古代星間文明が残した面白そうな遺跡とかあるけど、クワハウ関連だったと思うわ」
『コンゴー、ボクの育ての親がね、各惑星にあるのは星間文明時代の名残なんだって』
様々な星を支配下に置いていた時代もあった。自分たちの安全のために知的生命体になりえる原始生命体を滅ぼしたことさえあったという。
その罪を償うための、文明の放棄だった。
「へぇ、じゃあ知ってる? 今使われているアンブロス・ジェネレーターが、この星で初めて発見されたっていうこと」
『そうなの?』
「うん、それから各地の遺跡発掘が盛んになり、各地でアンブロス・ジェネレーターが発見、リバースエンジニアリングした結果、今の私たちの生活があるの
『この腕輪の中にも、アンブロス・ジェネレーターが仕込まれているんだよ』
「え!? だって、どんなに小さくたって、こう、ヒトの頭以上の大きさだよ?」
そう言ってアナトは自分の手で描いて見せる。
普通はそうなのだ。これを船の主機関とする場合や、兵器に転用しようと思ったらもっと大きくなる。軍の正式装備ですら、背中に背負うエネルギーパック大が限界のはず。
「本当に、クワハウの技術……伝説の、古代文明人……」
『そんな恐ろしげなものじゃないよ。クワハウ人も……コンゴーも、普通のヒトだから』
アナトの心境がわからないわけじゃない。きっとボクもコンゴーと一緒に暮らしていなかったら、古代文明というものをこんなにも身近に感じることはなかったはず。
「いいの? そんな大切なこと、あたしに教えちゃって」
『君を宇宙に連れ出そうとしているのなら、秘密を残しておくのは悪いと思うんだ』
「確かにあたしもマフィアたちから守ってもらいたいし、宇宙にも出たいし。でも君は人を簡単に信用しすぎ! もしあたしがマザーと仲悪かったらどうしてたのよ!」
それは考えていなかった。マザーがいいヒトだというのは何となくわかった。だから彼女の娘のようなアナトが、悪い人間のはずはない。そう思っていたからこそ、助けようと、クワハウについて隠すことはしないと決めた。
『君になら話しても問題ないでしょう』
「信頼は嬉しいけど……それが心配になるんじゃない……」
『ありがとう。でも大丈夫』
彼女は「え?」と疑問符を浮かべる。ポカンとする彼女に頷いてから応える。
『ボクは君を信じてるから』
その言葉に、彼女は目を逸らす。長く、震えるようなため息が漏れた。根拠のなさに呆れられただろうか。
「ホント、恥ずかしげもなく言うなぁ……」
しばらく、彼女はこっちも見ず、文字も見てくれなかった。
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