第八話「街を見下ろして」.2
「おう、マザーから話は聞いとるで」
ボクらを迎え入れたのは、マフィアという言葉からかけ離れた様相のおじさんだった。どこかくたびれた様子と、人当たりがよさそうで、暴力とは無縁そうだ。
それでもマフィアの頭なのだから、見た目からは程遠い武闘派だろう。
「グラフおじさん、この子がね」
「新しいハンターナイトの子やな。なるほど、確かに不思議な眼ぇした子やな」
『初めまして。フィオガだよ』
「グラフ・プブリッコや。教会の子たちからはグっさんだのおじさんだの呼ばれとるでな。好きに呼んでくれてかまわんよ」
『ありがとうグラフ。それで、さっそくだけど』
時間も惜しいので話を切り出した。
「ああ、事前に、マザーから連絡来てな、聞いとるよ」
すると、グラフの顔は苦い表情を浮かべる。アナトも心配そうな顔になる。
「教会が襲撃されたんやったな。この街でマザーに逆らおうっちゅうバカがまだいるとは思っとらんかったわ。またどこぞのシンジゲート崩れが紛れ込んだんかな」
「帝国との繋がりのあるスペースパイレーツって可能性はない?」
「バリバリあるわな。オレらみたいな公認ならまだしも、非公認、犯罪者崩れ、元宇宙海賊なんちゅー肩書持っとる奴らで、帝国の金貰っとらん奴らの方が少ないんちゃうか?」
『つまり、外にいる奴ら全員、帝国と何かしら繋がりを持っているってこと?』
「大小の差はあれどな。ああ、マンゾー一家やったな。あそこは最近うちのシマにもちょっかいかけて来よって。妙に羽振りがええんか、アーマーガンナーまで持って来よってな」
『さっき何機か砕いた』
「お、そりゃあんがとさん。ありゃ連邦制のアーマーガンナーかと思ったけど、とっつ構えて調べた中身には帝国製のもんがあった。横流し品で改造したんかと思ったんやけど、帝国との繋がりが深まったんやったら、基盤なんかの中身は帝国製で、外身だけ連邦制にしたっちゅうこーとかいな」
『帝国が、連邦内で事件を起こしたってこと?』
「そんなもんは毎日いくらでもどこでも起こっとる。問題は、そのアーマーガンナーを使って奴らが何をしたかっちゅーことや」
その言葉に、アナトは自分の懐から小さなガラスケースを取り出す。わざわざアーマーガンナーを用いて、教会にまで手を出した。
それもすべて、このリアクターコアを取り戻すためだった。
「それが、新型エネルギー機関のコアユニットかい」
『そのレプリカの、劣化品だけど。放出エネルギー量はこの小ささでも都市型アンブロス・ジェネレーターの三倍以上。もっとも、それを放出させられて、確保できればの話だけど』
「都市型って、この街三つを賄えるってことか!? こんな小さなものが!?」
グラフが驚くのも無理はない。
従来のエネルギー機関をはるかに超えるシステム。扱い方によっては現在の情勢を大きく変えるだけの力を持つ。
これを兵器に転用すれば――そう考える者がいるのも当然だ。
『このリアクターコアは絶対に渡さない。必ず守り抜いて、出所を掴むんだ』
「フィオガ……」
グラフからすれば、なぜそんなに躍起になっているのかわからないだろう。けれど、これがボクの使命なんだ。父さんと母さんの残して、奪われてしまったものを取り戻さないといけない。
そのための、レイハガナなんだ。
「お前さんの事情はよう知らんけど、その熱意はわかった。マンゾー一家は規模自体さほど大きゅうない。帝国と昔から取引するんなら、そっちに近しい奴らは他にもおる」
『助かるよ。アナトやグラフの情報がなかったらもっと時間がかかっていた』
「俺らかて連邦市民や。自分の安全のためにも、ハンターナイトに協力するんわ当然や」
まともな事情は知らないはずだ。リアクターコアについてもほんのわずかな、先ほど話したような情報しかないはず。
それでも手を貸してくれるのは、きっとマザーと同じ。この宇宙のごみ箱にあって、善性を捨てずにいられたからだ。
『情報が揃ったらここに送って。いつでも待ってる』
「おう、任しとき。……マザーは無事やんな?」
「もちろん。むしろフィオガが強すぎてテンション上がりまくってたわ。心配しないで」
「アナトちゃんも気ぃつけてな」
「大丈夫、フィオガに守ってもらうから!」
『行きずりの親友だものね』
彼女は得意げに言ってこちらの肩に肘を乗せてくる。行きずりの親友――という不可解な関係性は変わっていない。
それでも、この星で出会えた……友達だ。
『じゃあね、グラフ』
「おじさんも気を付けてね!」
その日、ボクらはプブリッコ一家を後にする。
少しでも気に入っていただけたら幸いです。
評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。




