「性格が悪いひと」
職場のお昼の話題だったか、こんな話をしたことがある。
「そもそも、だよ。
『性格が悪い人が魔法を使える』この、『性格が悪い』とは何だろうね?」
私の家族が宮廷に出入りする程の「力」を持っていることを知るものは、課長含む数人に限られていた。だから、私はおとなしく聞いていただけの話だったのだが。
「例えば…ひとを故意に傷つける人は、性格が悪いんじゃない?」
「えー、悪意なくやる方がタチ悪いでしょう。うちの姑なんか、ほんと悪気なく言うよ。『あなたはお部屋が汚くても平気なひとなのねぇ〜』とか」
「ああ、悪意があってやる人は『ひどい人』だよね。
悪意なく人を傷つける人、不快にさせる人が『性格の悪い人』とか『ねじまがった人』」
私が思い浮かべていたのは(ひどい話だが)姉と母の顔だった。彼女らは私を痛めつけようなどと思ってはいない。それでも、傷つけて押し殺し、ひっかいて壊し、それを愉しんでいる。だからこそふたりは、魔法使いなのだ…
「でもさ」
「人を傷つけない悪い人って、いるよね」
「例えば、何でもひとのせいにして、顔に出さない人」
「何も言わないで、笑って受け入れて、甘やかして」
「相手をスポイルしていくの。許されたと思った人は、どんどん悪人になってゆく…」
「しかも、自分は被害者だと思い込んでいる」
「そんな人は『性格が悪い人』ではないのかな?」
そこから話は別の方向へ移っていった…子育てにおける「甘やかし過ぎ」なんかがそれにあたるんじゃない、とかそういえばうちの姑が金で子供を手なづけてさ、とか。
私はこの話が忘れられなかった。きっと、そんな「性格の悪い人」に魔法は使えない。それでもかれは確かに、社会に害をなす存在だ…。それが「悪い性格」でなくて、何だろう?
私が、エマこそが、悪人でないという保証がどこにあるの?
ただ力がなくて弱い、それに安寧を求めているのは…私自身では、ないの?




