サラは知っている
エマが来る。
こ・こ・に、エマがやってくる。私の場所に!私の仕事場に!私の、第二王子に呼ばれて!
はらわたが煮えくり返るなんて言葉では済まされない。話を聞いた瞬間、私は人形を用意させた。あのクズに似た、濃い髪の人形に、ぶすり、ぶすりと針を突き刺し、首をねじ切り、腸に見立てた綿をぶちまけた。
…もちろん、こんなことをしても何にもならないことはよく知っている。魔術は「見立て」のモノと、効果を発揮したいモノを「視線」で繋がなければ、発動しない。
そう、エマがいればよかった。エマがここにいたら、全身から血を吹き出させて、首をねじ切って腹を開いてやれたのに。サマーヴィルの、赤毛のアビーみたいにしてやれたのに!
「サマーヴィルの、赤毛のアビー…」
口に出してみる。私が初めて殺した女。ママが心配そうにこちらを振り向き、どうしたの?と言った。
「何も心配はないのよ、サラ。エマなんて、あなたに殺されるために呼ばれたに決まってるわ」
「どうかしら。ママの言うこと、役に立ったことある?」
「まあ!それが母親に向かう口の聞き方ですか」
はん、と鼻で笑う。母親の唇は、醜く震えている。
「悔しい?ねえ、悔しいでしょう。娘に馬鹿にされて。―これが私の力よ。あなたが私に、与えた力よ。
あの子には与えなかったものよ。素敵でしょう?」
母のカラーを掴み、ひきつる顔をぐっと近づける。
「…喜びなさいよ」
「はっ?」
「喜べ、と言ったのよママ。この力を私だけに与えたことを、喜びなさい。
それとも、このお人形の腕を振り回されたい?」
「あ、あなた、サラ、何を言って」
「喜べ!」
バチン、と頬を張ったのが素手だったのは、私に残る優しさだ。母はひい、と豚みたいな声を上げ、部屋から尻で後ずさる、その様子がおかしくて私は笑った。笑った。笑ったのだ…
「エマが、来る…」
母は何もわかっていない。…何も教えていないから。昨日、何が起こって、私がどうなってしまったのか…あの子がここに来るなら、理由はひとつしかないのよ。私が殺し損ねた「力」
ドラゴン。
そのためにあの子は来る。殺すために?もしかして、…殺されるために?




