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第25話 お嬢様を守れ


 校舎の三階の廊下を、黒ずくめの男が三人歩いている。


 目的は生徒会室の占拠……そして、九条麗華の身柄を拘束する事。


 先頭の男が口を開く。


「あまり時間が無い……急ぐぞ」


 後ろの二人が小さく頷き、抱えているMP-5のグリップを握り直す。


「足場側からも二人来る……挟撃するぞ」


 男達は足早に生徒会室に向けて足を進める。


 ◆


 陸が給水塔の上で思案していると、階下の方から窓が開く音がした。


「(えっ……窓が開くの……何処だ?)」


 陸は思案するのを中断すると、床の穴から頭だけを出して周囲を見る。


 幸い屋上には誰もおらず、陸を追いかけてくる感じも無い。


 陸は床の穴から屋上の床に飛び降りる。


 そして音がした方向に向かう。


 転落防止のためのフェンスが張り巡らされているため、階下の様子を伺うことはできない。


「(やっぱり……乗り越えるしかないのか……)」


 陸は覚悟を決めてフェンスをよじ登る。


 フェンスの向こう側には幅にして三十センチほどの張り出しがあるだけだった。


「(今は足場があるから、すぐに落下する事は無いと思うけど……)」


 陸は縁から顔を出して下の様子を伺う。


 丁度、音がした辺りの部屋の中には、たくさんの機械が並べられているのが見えた。


「(……此処が放送室だったのか……)」


 放送室の窓ガラスは固定されていないようで、今は大きく開け放たれている。


 そして放送室を観察している時、視界の隅で動くものを捉える。


「(何だ?)」


 陸が首を振って、そちらの方向を見る。


 其処には、足場を歩いていく、二人の黒ずくめの男達の後姿が見えた。


「(足場を通って……何処に行くつもりなんだ……)」


 陸は校舎の構造を思い浮かべる。


「(確か……こっちが放送室なら……あっちの端には生徒会室があった筈……ん? 生徒会室?)」


 陸の心臓が跳ねる。


「(何だか、凄く嫌な予感がするんだけど……大人しくしている……訳ないかも)」


 陸の予感が確信に変わる。


「(黒ずくめの男達があっちに向かっているって事は……目標は生徒会室……で、あのお嬢様が大人しく教室に留まっている可能性は低い……よな?)」


 陸が隣の教室の様子を伺いに行くときも、ついてきてしまったお嬢様だ。


「(……くそっ……行くしかないかっ)」


 陸はその場で立ち上がると、フェンスを掴みながら、狭い縁を伝いながら男達を追いかけるのだった。


 ◆


 廊下の黒ずくめの男達が生徒会室の前に陣取る。


 先頭の男が扉をノックする。


「中にいるのは分かっている……素直に開ければ、手荒な事はしない」


 男が語り掛けるが、部屋の中から返事はない。


「ちっ……」


 先頭に居た男が、扉をけ破ろうとする。


 ガゴッ


 大きな音が響くが、扉はビクともしない。


「何だ?」


 男は扉のドアハンドルをガチャガチャ動かすが、鍵が掛かっているようで扉は開かない。


「くそっ」


 先頭にいた男はMP-5のセレクタを連射モードに切り替えると、腰だめで扉に向けて発砲する。


 バババババババッ


 銃弾を浴びた木製の扉が、破片となって飛び散る。


 男がもう一度扉を蹴飛ばす。


 しかし扉は動かない。


「何が起きている……」


 男は破損した扉の穴から、中の様子を伺う。


「こ、これは……バリケードかっ!?」


 扉の向こう側には、重厚な家具が押し付けられていて、ちょっとやそっとでは動かす事が難しかった。


「ガキどもっ!!」


 男は肩に着けていたトランシーバーを握る。


『こちら屋内班。突入を試みたが、バリケードが展開されている。すぐには突入できない。オーバー』


『ザザッ……こちら足場班……支援する。ドアから離れてくれ。オーバー』


 男達は素早く、扉の前から離れると、コンクリートの壁の後ろに身を隠す。


 暫くすると、外部からの射撃音と、ガラス窓の砕ける音が響いてきた。


 ◆


 陸が屋上の縁から、下の様子を伺っていると、足場に居た男達が銃を操作し始める。


「(……?)」


 次の瞬間、男達は銃を構えると、ガラス窓に向かって発砲を開始する。


 ババババババッ


 ガシャガシャガシャンッ


 ガラスの砕ける音が響く。


 男の一人がガラスのサッシ部分に蹴りを入れる。


 ガガッゴンッ


 サッシが外れる音が響く。


 男は窓から室内への突入を試みるが、何かに邪魔されて室内に侵入できないでいた。


「くそっ、こっちもバリケードだっ!!」


 男の悔しそうな声が響く。


「多少手荒なことになるが……仕方ない」


 男は太腿のポケットから、何か丸い物を取り出す。


「(アレは……手榴弾っ!?)」


 それを見た瞬間、陸の身体は屋上の縁から男目がけてダイブしていた。


「(そんな物、使わせるもんかっ!!)」


 突如、上から飛び込んできた男子生徒に、二人の男達は対応できない。


 陸の身体が、二人の男に激突する。


 ドガッ


「あ、あああっ!!」


 一人の男が、防風シートと足場の隙間に吸い込まれていく。


 ガンッ……ガンッ……ドガッ!!


 男が落ちていく音が響く。


 陸も勢い余って、上半身が足場から飛び出してしまう。


 幸い落下しなかった男がフラフラと立ち上がる。


「クソガキッ!!」


 陸が振り返ると、男が銃を構えているのが目に入る。


「ヤバいっ!!」


 陸はそのまま前転するようにして、下の足場に移動する。


「ちいっ!!」


 残った男が陸を探すために下を覗き込む。


 その瞬間、陸は手を伸ばして、男の胸ぐらを掴む。


「こいつっ!!」


 陸は胸ぐらを掴んだまま、防風シートと足場の隙間に飛び込む。


「うああああああああっ!!」


 ドカッ……ガンッ、ガンッ……ドガンッ


 二人の身体が縺れ合うように地上に落下した。



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