フリーフォールは突然に
ウルフちゃん改めてリルルが仲間になった。服問題は…その内な。
とはいえ、人間に変身出来るのはありがたい。街中でも人目を気にする必要はないし、魔物だからと攻撃される危険性もある。もしかしたらテイマーなんて職業もあるのかもしれないが、誤魔化すのも面倒だからな。
兎も角、俺たちはこのクソみたいな難易度の魔界を生き抜くための力を手に入れた…はず。いつまでもこの洞窟にいる訳にはいかないし、そろそろお暇しなきゃな。
「俺たちは上に戻るよ。色々ありがとな、グランヴァニア」
「ありがとうございました!」
「おじいちゃんありがとー!」
『ハハ、礼には及ばんよ。我も久々の来客に年甲斐も無く覇者いでしまったからな。何か困り事があればまた来ると良い。最も、その頃には大した力添えは出来ぬかもしれぬがな』
そういえばこの龍、一度も本体が表に出てこなかったな。喋ってたのはずっと石像だったし。何かしら理由がありそうだが、関係が拗れるのも面倒だから何も言わずに退散するのが良さそうだな。
そうして石像に背中を向けようとした時、ある事に気がつく。
「なあグランヴァニア、どうやって地上に戻ればいい?俺たちは穴を降りて来たし登る手段なんて持ってないんだが」
「リルルが乗せよっかー?」
「ダメですよリルルちゃん。せっかくお洋服作り直してもらったんですから」
『我の力で外に送ることは出来る。が、どこへ出るかは分からんぞ?それでも構わないのなら送ろうではないか』
今の俺たちは拠点も何もない初心者だ。街にだって一度も行っていないし、遠くへ行けたらむしろラッキーなくらいだろ。
イロハも頷いてるし、決まりだな。
「頼む。どこへ行っても変わんねえからな」
『承知した。それと服に関してはこれをやろう』
「のわっ、なんだこれ。ウロコ?」
『それは我が龍鱗だ。我の力の一部を込めてあるが大したことは出来んぞ。精々その服を作り直す事と我が元へ転移する事くらいであろうな。その2種に関しては無制限に使えるが、1つだけ注意点がある』
・天の龍鱗
天龍の力を宿したウロコ。MPを消費する事で込められた能力を行使可能。しかし同じ天の力には滅法弱い。
『天城・グリラ。奴と遭遇すればそれは忽ち崩壊してしまうだろう。そうなれば自力で此処へ戻ってくるほか無いが、此処には強力な隠蔽結界を展開しておる。天に棲む奴が下界に降りてくる事は無いだろうが、完全に無いとは言い切れぬ。頭の片隅にでも置いておけ』
「分かった。何から何までありがとな」
『それでは外へ送ろう。達者でな』
「おう。またな、グランヴァニア」
これが今生の別れになるとは思わない。だからまたな、と再会の約束をする。満足げに頷いた…かどうかは分からないが、石像と俺たちの体が光を纏う。イロハは若干パニックになっているのかリルルを力強く抱きしめている。
そして目の前が完全に白に染まる直前、石像ではない、本来の天龍の姿が見えた気がした。
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それから数秒後。俺たちは今、空を飛んでいます。おかしーなー?空は天界の連中しか飛べないはずじゃ…………うん、違うね。これ飛んでるんじゃなくて自由落下だ。
このまま地上に落ちたら、もしかしなくても落下ダメージで死ぬ?
「ようやくチュートリアルクリアかと思ったのによぉーーー!!!」
「わはー!あるじー、たのしー!」
「わわわっ!リルルちゃん、怖いので動かないでくださいー!」
「………リルルが楽しそうで何よりだ」
今更じたばたしてもどうにもならんし現実逃避しよう。ああ、仮想空間の空は青くて綺麗だなぁ。
ふと思ったんだが、魔界の空を飛んだのって俺たちが初めてじゃないか?システムくぅーん、何かしら称号くれたって良くなーい?
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新たな称号を獲得しました
《碧空を知る者》
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おっ、言ってみるもんだな。暇だし効果も見てみるかー。なになに、「落下ダメージの微軽減」………なんだって?
「イロハ!今すぐ新しい称号を付けろ!碧空を知る者ってやつ!」
「き、急にどうしたんですか!?」
「良いから早く!落下ダメージの軽減が付いてるんだよ!」
「よく分かりませんけど分かりました!えーっと、称号ですよね…あ、ありました!装備…っと」
なんたる幸運。焼け石に水かもしれないが、これでワンチャン落下死を回避できるかも。いやマジでワンチャンだな。普通に死にそう。
さあ、いよいよ地上が見えてきたぞ。建物が建ち並んでるな、ぱっと見は街っぽいぞ。もしやランダム転移の中でもかなりの当たりを引いたのでは?
これは何がなんでも耐えてやりたいところだな。
「イロハ、街だ!念のために回復魔法の準備を!」
「分かりました!」
「あるじー、リルルはー?」
「変身…は人がいるから無し!イロハにくっついて大人しくステイ!」
「わかったー!ぎゅー!」
「はうっ、かわいい…」
さあ、運命の時だ。
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一方その頃、地上にて。
金の長髪と無精髭がトレードマークで腰には刀を携えた、まるで侍のような格好をした男が街の大通りを練り歩いていた。当然目立たないはずはないのだが、話しかける者は誰一人としていない。
それは彼が魔界での有名人であり、例えるならそう、全く変装をしていないハリウッドスターがショッピングモールをうろついているようなものだ。
そして男には災難が、文字通り降り掛かろうとしていた。
「何の音だ…?」
「うわあぁぁぁ!!よ、避けてくれぇーーっ!!」
「リルルちゃん、絶対、絶対離れないでくださいね!お姉ちゃんが守ってあげますから!」
「リルル、たぶん平気だよ?」
あ、そういえばこの子ホーリーフェンリルだったわ…。
もう人とぶつかる、というところで最初に落ちてくる俺だけ見事にスルー。一方、後から降ってきたイロハとリルルは軽々しくキャッチしていた。
「ぶべぇ!?」
「きゃっ!…あ、ありがとうございます!助かりました!」
「礼には及ばねえよ。その装備、嬢ちゃんたち新人だろ?なんで空から降って来たのかは知らねえが、まあ楽しんでってくれ」
「おい待てやおっさん。女性陣は助けたのにぃ、なんで俺のことは華麗に躱したのかぁ、ちゃんと理由を聞かせてもらえますかぁ?」
「…絶妙にウザいな。男に興味なんざねえよ。魔界には女性プレイヤー自体が珍しいのと、ここに来る男はイキリ野郎かイカれ野郎の二択だ。どっちみち俺には関係ねえ…が。お前、妙な匂いがするな。着いてこい、お前たちに興味が湧いた」
怒涛の展開で着いていけないんだが、とりあえずこのおっさんは嫌いだ。匂いで人を判断するのも意味不明。
落下したら生きてたけど第一村人の印象は最悪です。
幼女形態のリルルのステータスは魔物形態から変わらないので、現状ではシンや一般プレイヤーよりも断然高いです。幼女最強。




