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輝蝶は舞う、夢幻のように―4

 


「新しい切り札かい?今レベルが上がったとかスキルを覚えたとかではないんでしょ?」


「そっすね。やろうと思って試してなかったことがあったんですけど、ワンチャン刺さりそうなんでやってみようかと」



 貫通属性の通りが良いなら斬撃が効かない道理はない。ならどうやって近づけば良い?

 答えは簡単、そもそも()()()()()()()()、だ!



「その糸、刺さって痛そうだなぁ。綺麗さっぱり抜いてやるよ、汚ねえ翅ごとなぁ!!」


「キシュアアァァァァッッ!?!?」


「刺さった糸で翅を切り落とした!?確かに射った矢の方向を操作できるのなら身体から離れた糸も操れる…なんという発想力…!君は本当に凄まじい、まるでVRの申し子だ!」


「言い過ぎっすよ。それに奴からすれば大したダメージにはなってなさそうですが」



 俺がやった事は至って単純、翅に刺さった糸を操っただけ。百条(ヘンダート)掃射(マルチプル)でやっていた方向操作の要領で、刺さった2本の糸の端と端を結び合わせ、後は好きなように動かして切り刻むだけ。

 強度はお粗末だからすぐに糸がほつれて使い物にならなくなるが、たった2本でこれだけのダメージになるならコスパは最高だ。


 だがぐちゃぐちゃに刻んだはずの翅はいつの間にか再生していた。ま、そう簡単な話じゃねえよな。

 そんで様子がおかしい。なんだ?何をしてく………。



「キ…シャアァッッ!!


「Zzz……………」


「あぁーっ、シンくーん!!」



 ナイトドリーミング・パピヨンの咆哮と共に、再生した翅を震わせて風を生み出すことによって強制的にプレイヤーを遠ざける。それに混ぜられた鱗粉をモロに吸い込んだシンは、見事に睡眠の状態異常にかかってしまった。


 その名の通り、ナイトドリーミング・パピヨンが得意とするのは高頻度の睡眠付与。常に鱗粉を撒き散らしてくるだけでなく、巨大な翅を震わせて放つ突風にも混ぜてくる。

 それに加えて、元になったボスモンスターの《パララミックデイ・パピヨン》が得意とする毒と麻痺の鱗粉も所持していることから、何かしらの対策をしていない限り状態異常を二つ以上同時に受けた瞬間に詰むという鬼畜仕様。


 魔法攻撃推奨(ボス以上の威力必須)、状態異常対策必須、打撃系統ダメージ軽減、自己再生能力を所持しているため消耗戦になればボスの方が有利。

 これがこのダンジョンが嫌われるもう一つの理由。ボスと戦いたくなければ素材を半分捨て、ただでさえ厄介なボスと戦おうとすれば低確率でそれの比にならない程強力なレアエネミーが出現する。


 その他にも全く笑えない冗談のような能力があるのだが、少なくとも今のシンはそれどころではない。



「《キュアー》!《ヒール》!」


「う、ん…………はっ!!俺は今寝ていたのか…!?」


「おはようシンくん。これが奴の鱗粉さ。高頻度高確率でヒットする状態異常、それをMPも使わずに飛ばしてくるんだ。魔法攻撃が使えない僕らには天敵のようなボスだよ」


「何とかならないもんか…。クソっ、意識飛んだから弓も壊れちまった」



 イロハの回復魔法で状態異常と減ったHPは元通りになった。だがせっかく強度を優先して生成した弓が糸くずに戻っちまった。幸いMPは温存してあるから大した痛手にはならないが、全く無駄な消費であることに変わりはない。


 にしてもあの風、本当に防御手段があるのか疑いたくなるほど範囲が広かった。イロハが落ちたら終わりだからタクさんが咄嗟にイロハを守ってくれたけど、守りを捨ててた俺には直撃した。麻痺は当たらなかったが睡眠と毒とかいう凶悪なコンボでHPもかなり削られた。


 ヤロウ…あの感じで攻防自在とかオーバースペックだろうが…!



「今のがHP残量が75%を下回った際の特殊行動だ。あれは全体攻撃だから回避のしようがないから割り切ろう。翅こそ再生されてしまったけどダメージは確実に通ってる。このまま地道に削っていこうか」


「なるほど…回避は出来ないけど防御は出来るって事すか。了解、俺はこのまま攻撃を続けます。イロハ、守りは完全に捨てるから回復は頼んだぞ」


「分かりました!」



 その後はひたすらに矢を放ち続けるだけの作業。特殊行動の予兆が見える度にタクさんの後ろへ避難、終わったらまた矢を放つだけの作業。なんだ、攻略法さえ分かってしまえばこんなもんか。


 さ、残りHP25%の特殊行動も終わったし、あとは殴り続けてフィニッシュだ。



「キ…キシャ………」


「………?今までの予兆とは違う…タクさん、これって」


「シンくん、イロハちゃん、僕の後ろに下がってて。…()()()のが来る」



 タクさんがさっきよりも険しい表情になり、カースドバックラーも大盾に変更している。


 次の瞬間、ボス部屋を異様な空気が覆い尽くした。



「はぁっ………はぁっ………………」


「なん、ですか…これっ………」


「分から…………来た!二人とも全力防御姿勢!!」



 俺たちは身体を屈め、そして其は姿を現した。



「キシャ…キシュアアァァッッ!?!?」


「蝶が…吸収されていく…?」


『ふむ…私に翅は無いが…足りぬ。まだ足りぬ。…ああ、貴様らは私の欲を満たしてくれるか?』




 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———



 ユニーククエスト《亡禍(ボウカ)詠人(ヨミビト)未知ヲ求ム、()既ニ死知(シシ)咎人(トガビト)》が開始されました。


 ユニークモンスター《死の求道者レイガス》と遭遇しました。



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