輝蝶は舞う、夢幻のように―3
tips:レギオンでのパリィは盾と判定される装備でのみ可能です。成功させると自分へのダメージを99%軽減し、攻撃してきた相手にダメージを与えます。パリィのダメージは装備者のVITが参照されますが、ジャストタイミングからズレるごとに相手へのダメージは下がり、ダメージの軽減率も低下します。
レアエネミー。所謂色違い的な存在であり、ダンジョンやマップに稀に出現する。元になったモンスターの特徴を引き継いでさらに強化したような能力を持つ。基礎ステータスも跳ね上がっているが、討伐すると通常よりもドロップが多くレアドロップ率も高い。
「その中でもこいつはボスがレアエネミー化する珍しい例でね。倒せばドロップは美味しいけど、近接攻撃が少ないこいつは僕と相性が悪いからあまり戦いたくはない。でも出会ってしまった以上は…」
「やるでしょ。こいつを倒せば聖骸布落ちるかもしれないなら戦わない選択肢はないっすよ。てか戦わない選択肢あるんすか?」
「自害すれば一応。アイテムは半ロスするけど、あれだけオリハルコンがあるなら全滅よりかは余程マシ。それでもやるかい?」
「当然。これくらいやれなきゃ最凶は名乗れないっす…!」
「私も、少しだけワクワクしてます。この蝶々を倒せば自主規制な時間も終わる可能性が高いんでしょう?全力の殺意が湧いてきました!」
「君たち、なかなかマーダーだね…」
まあウチにはもっとマーダーな幼女がいるんで。そういえばリルル、まだお昼寝中かな。あの子昨日からずっと寝てる気がするんだが。帰ったら散歩にでも連れて行ってあげよう。
そんなマーダーな俺たちだがまだ理性は残ってる。タクさんが言うには、《ナイトドリーミング・パピヨン》には明確な弱点がある。
それは状態異常無効と火属性。状態異常を軸に攻撃してくる蝶である奴には確かに分かりやすい弱点ではある。しかし前者はタクさんしか持っておらず、イロハも即回復出来るだけで状態異常は受けてしまう。後者も全員持っていないため、特に俺は立ち回りが肝心になってくる。
「後は、そうだな…。弓とか槍に付いてる貫通属性の攻撃は比較的マシだけど、奴は風系統の攻撃も得意にしているからある程度の威力は必要になる。状態異常が効かないと見るや即座にステータスの暴力に手段を変えるんだ。あの見た目で意外と脳筋だよ」
「基本は遠距離からちまちま、ですかねぇ。正直言って相性悪すぎて萎えるっすね」
「私のユニークを使いましょうか?」
「うーん…俺がやれるだけやってみるわ。ダメそうだったら頼む」
「分かりました」
「そういえば僕はイロハちゃんのユニークについて知らないんだけど……」
戦う前にタクさんにイロハのユニークについて共有しておく。ただのヒーラーではなく、高すぎる自衛能力を持つヒーラーだと。
「そりゃあマーダーになる訳だよ…。じゃあ基本は純ヒーラーとして考えていいんだね?」
「そうですね。回復は私に任せてください!」
「分かった。これで遠慮なく戦える。まず僕が前衛として攻撃を受けてヘイトを取ろう。そうしたらシンくんが後方から火力を出す。イロハちゃんに攻撃手段は?」
「ありません!」
「オーケー。僕に状態異常は効かないからシンくんの回復をとにかく意識してくれ。僕は欲しい時にお願いするから」
「了解です、頑張りますっ!」
元気良く返事をするイロハ。うーむ、空気が綺麗で美味しいなぁ。こんな空気を汚す失礼な蝶々さんにはキツーいお仕置きが必要だな。
「じゃあ行こうか。我らが魔王の名に於いて、その首貰い受けよう―――《シールドバッシュ》!」
「キシュアアァァァァァ!!!」
まずはタクさんが盾を構えて突撃する。最初に使うだけあってヘイトは一気にタクさんに向くが、ダメージにはなっていないようだ。
「やっぱりこの手のタイプは打撃属性に耐性あるよねぇ!」
「なら俺がっ!《白弦一条》!」
「シャアァッッ!!」
「チッ!!風で弾かれる!!」
MP消費を抑えてる分、矢の大きさも威力も小さくなってる。そのせいで、一極集中の一条でさえ軽く翅を動かすだけでも簡単に避けられるなり弾かれるなりされちまう。
剣ならMP消費をさらに抑え、敵のMP切れを狙う消耗戦に持ち込むことも出来るが、奴のMP残量が不明な以上は不確実な手段はナシ。
ついでに剣に持ち替えたところで常時振り撒いてる鱗粉が厄介で近づけない。タクさんがヘイトを取ってるとはいえ、イロハの負担が増えすぎるのも避けたい。
予定通り、ちまちま削るしかないか。
「正面がダメなら…《白弦掃射》!」
「キシュアッッ!?」
「なるほど、思考操作か!それにしたってなんて緻密な精度……これは負けてられないな」
ひたすらに掃射で全方向から糸を飛ばす。速く鋭い硬糸は風の防御を超えて、ナイトドリーミング・パピヨンの身体に突き刺さる。一本一本の威力は大したことはないが、タクさんの言っていた通りによく貫通するもんだ。
加えてヒットした糸が刺さったまま残り続けている。スリップダメージが入ってる感じは無いし、残り続ける意味も感じな―――。
「待てよ。………まあ、やってみる価値はあるな」
「シンくん?どうかしたのかい?」
「新しい切り札思い付いたかもしんないっす」
シンはニヤリと笑って蝶の翅を見据えていた。




