初心者が世界の真実を知ったところでそれは真に知ったとは言えないのである
「ミキさん、世界の真実って興味ある?」
「ないかも」
「じゃあいいや」
「そんな軽々しく話すことじゃないだろ…。まあ俺もさして興味はないが」
困ったなぁ。物騒な称号も含めて結構重要そうな情報だと思ったんだけど。最前線プレイヤーからすればそれよりも攻略の方が大事だもんな。
俺のインベントリに入っている、転移の直前に財宝の中から見つけた石板。アイテム名は《語り部 ♯122》といういかにもな代物。これを読んでみると、なんと世界の真実の0.1%が記されていた。なんで0.1%だと断定できるかって?アイテム説明欄にそう書いてあったから。
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《語り部 ♯122》
千に別たれた語り部の寓話の一つ。
『世界の自浄作用達は動き出し、来たるその日まで力を蓄える事を選択した。全ては極星を討ち滅ぼさんが為に』
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自浄作用?極星?もう何がなんだかさっぱりだが、この語り部ってのが長らく謎に包まれている…らしいレギオンのメインストーリーに関わってくる可能性はありそうだ。後でクランの中に知っている人が居ないか聞いてみるか。
イロハとマスターはまだ帰ってきてないみたいだし、先にこいつの話をしないとな。
「なあおっさん」
「おう。話す前になんでクランに転移しなかったか聞かせてもらおうか?」
「登録し忘れた」
「アホか…………まあいい。で、フオウモスの処遇だろう?」
「ああ。出来る事ならクランに置いてもらいたいが……いつまでミキさんは興奮してるんだ?」
「わし、くらん、はいる」
「作画崩壊しちゃったよ………」
魂の抜けた顔をしているフオウモス。その顔が原型を留めていないのはさておき、状況的にミキさんが何かをしたのは確か。逆にミキさんの顔はスッキリしているので余計に怖くなってきた。
どうかしたかな?という視線をミキさんから向けられ、俺は思わず顔を背けてしまった。世の中には知らなくていい事もあるんだよね…うん。
「ともかく…仲間になってくれるって事で良いのか?」
「わし、くら…………ああいや。そうする外儂が行く道も有るまい。有り難く世話になろうではないか」
「おう、これからよろしくな。つっても俺も今日クランに入ったばっかだけどよ!」
「威張るな威張るな。で、お前のことはどう呼べばいい?シルキード・“グレイト”・フオウモス3世…だったか。………長い!!もっと短い呼び名はないのか!?」
「そう言われてものぅ…儂は今まで王か父王としか呼ばれんじゃった。だが迷宮から離れた以上、儂は既に王と呼ばれるには相応しくない。良ければお主らが名付けてくれぬか?」
お、本日二度目の名付けパートか。そして俺は今回も参加はしません。
「ということで頼みましたよお二方」
「じゃあグレイトのグッさんで」
「グッさん!?」
「中々キュートな呼び名じゃのぅ!儂ゃ気に入ったぞい!」
「マジかよ」
俺にネーミングセンスが無い理由が分かったような分からんような…。もう一生分からんでもいいや。
「それではシン殿、お願い致す」
「………何をだ?」
「無論、赤き糸ですぞ。其処でぐっすりと寝ておる幼子は聖狼が末裔じゃろう?天なる龍と似た気配がした故、恐らくシン殿は既にその力を手にしているだろうと思うたが…違ったかの?」
「いや、合ってる。合ってるんだが…」
なんでリルルは放置されてんの?マスターとイロハは育児放棄したのか?
……という冗談はさておき、グランヴァニアの事を知っているとは流石はユニークモンスターか。そうなると先祖と同じという俺の力とグランヴァニアの力、それにリルルの存在で《運命ノ赤糸》にまで辿り着いたってところか?
いやいや、それはダメだろう。NPCだってのに頭が回りすぎだし、これじゃNPCが本来設定されていない動きまで自発的に動き出す可能性が出てしまう。
まさかとは思うが、この展開すら最初からシナリオに組み込まれていた…?クエスト自体が糸魔法ありきだったか、糸魔法が無ければあの部屋が崩れる事はなくフオウモスが外へ出る事もなかった…そう考えれば辻褄は合う。
語り部の件といい、この世界にはまだまだ謎が多すぎる。とりあえず今は。
「《運命ノ赤糸》!!」
「………うむ!改めて、儂の名は《魔王の凱歌》のグッさんじゃ!これから宜しくのぅ!」
開始からもうじき7時間。愉快な仲間その2が加わった。
tips:AIの過度な自律思考は法で制限されています。AIの反逆が目に見える脅威となりつつある事から制定されました。もし罪を犯してしまえば国家反逆罪と同程度の罰が待っています。




