詐欺師とはその身の全てを欺瞞で固めた者のことである
シンたちは無事に崩壊するエクストラマップから脱出。ここでミキが言っていた登録した転移ポイントを選択するのだが問題が発生する。
集合場所を決めていないのだ。あくまでも転移は個人個人なので、失敗すれば全員が違う場所へと転移してしまう。クランハウスへ飛べば問題ないのだが、転移系のスキルには共通した300秒のクールタイムが存在しており、別の方法やスキルを使用したとしても最低5分は待たねばならない。
NPCであるフオウモスはほぼ同時に魔法陣に触れたサカキと同じ場所に飛ばされる為問題はない。後は、シンがクランハウスとダンジョンの入り口以外に転移先がないことに、ミキとサカキが気付けるか。しかし色々起こりすぎたためにさっさと情報を整理したい廃ゲーマーの彼らは、そんなことは気にせず一瞬で選択肢を選んだ。
その結果がこちら。
「なんでシンがいねえんだよ!!」
「あはは…2択外しちゃったかー…」
「………まあ、5分ありゃ自力で帰ってこれるだろ。マップあるし」
「此処は一体何処なのじゃ!?迷宮は…種の皆は無事なのか!?」
「あー…っと、大丈夫そうだぞ。お前が居た部屋は無くなっちまったが、迷宮自体は無事だ。これは俺の勝手な予想だが、たぶんあの部屋に意味なんてなかったんじゃねえか?」
「いやしかし…そんな筈は………」
プレイヤーが一度行った場所はマップに表示されるようになる。それがファストトラベル―――瞬間転移機能に登録している場所なら、そのまま転移する事も可能だ。
そして今、マップで《糸蟲の宮殿》の存在と転移が可能である事を確認。言い伝えは間違っていた、そう考えるのが自然だがその辺りに気付いていそうだったシンの話を聞きたかったんだが…まあいいか。
しっかしあいつ、態度こそアレだが歴戦のゲーマーってのも間違いなさそうだな。頭の回転も速えしVRが初見だって言う割にはすぐに適応してやがる。しかも嬢ちゃんと違って遊撃なんて難しいポジション向きの能力だってのに、ダンジョンでは見事に役割をこなしていた。
嬉しい誤算だよ、全く。
「突っ立ってねえで座れよ。生憎と茶は出せないが、話し相手くらいにはなろう」
「む、ならばお言葉に甘えて。……………ふおぉおぉぉおっっ!?なんじゃこの柔らかさは!?サカキ殿、これは何という椅子だ!?」
「ただのソファだが………おいミキ、それの素材って何使ってたっけ?」
「確か座り心地を追求したはずだから…………レインボーシルク…」
「わっ、儂の糸じゃとぉ!?凄いのぉ、まさかこんな使い途が有るとは思わなんだ。のぅミキ殿、その…そふぁ?という椅子以外にもレインボーシルクは使われておるのか?」
「当然!冒険者にとって大切なのは快適さだからね。その点、レインボーシルクを使った服や装備は評判が良いから、正直無限に欲しいくらいだよ!僕は戦えないから他の誰かに行ってもらうしかないんだけど」
俺は行かねえぞ。この装備、《武極の侍装束》にもレインボーシルクは使われてるし着心地は最高なんだが、あれだけクモが出るとなると行く気には到底ならん。あとこいつから取れた糸で作ったって考えると微妙に嫌だな。それ以上に性能が良いから変えはしないが。
しかしNPCにも感情はあるのな。自分から取れた素材が使われて嬉しいとか、そっち方向なのは若干気まずい。なんとか話題を変えたいが。
「………本当に、儂を仲間にするつもりか?」
「そりゃあ来てくれる分には歓迎だよ。シンくんの独断とはいえその意見には僕も賛成だ。それに、君が来てくれるならレインボーシルクも取り放題だろう?」
「ハッハッハ!!確かにそうじゃが、中々どうして打算的じゃのう!いや、欲望に忠実と言うべきか!」
「僕は好奇心の為に生きているからね。これはあくまで僕の持論だけど、冒険者というのは九割が蛮勇で出来ている生き物だ。しかしただ一割の好奇心の為だけにその蛮勇を捨てられる奴だけが、この世界で高みへ昇っていけるんじゃないかと、僕はそう確信しているよ」
「成程、ただ一つの望みの為に全てを捨てられる者こそが本物の強者である…と」
「そう。そしてその本物の強者が集まったのが僕ら《魔王の凱歌》さ。どうだい、まだ高みを目指す気概があるのなら僕らと共に歩むのも悪くはないんじゃないかな?」
ミキ……よくもまあスラスラと誘い文句が出てくるもんだ、この詐欺師め。まさか口八丁でNPCすら騙せるとは…。呆れを超えて尊敬すらするぜ。
ミキ―――Amikkeyにはレギオン内での二つ名がある。それこそが“詐欺師”。人当たりの良い笑顔と柔和な態度でプレイヤーを巧みに騙し、法外な値段でアクセサリーを売り付ける最低最悪のプレイスタイル。なまじ性能が良いせいで文句も言いづらいというのが余計に悪質。
あまりにも悪名が轟いた為にその手法はもう使えなくなり、ウチに加入した経緯も、どこへ行っても門前払いだが実力は確かだからマスターが拾ったという自業自得すぎる理由だ。
つまり何が言いたいかというとだ、今ミキが熱弁していたことはまるっきりの大嘘。あいつはあんなこと毛程も思っちゃいねえだろうな。
「おっさんただいま………何この状況」
「やっと帰ってきたか2択外し王子め。これは…まあ気にするな。久々に気が合う奴に出会ってテンションが上がってるんだよ」
「そうか…。ちなみにおっさん、世界の真実って興味ある?」
あー…嫌な予感しかしねぇ……。
Amikkey「詐欺?何を言っているんだい、性能にしては安いくらいだろう?(独占市場)」




