糸王の宮、禁域に棲むは虹の主―5
俺がこの可能性に辿り着いたのは、先祖云々の話になった時。フオウモスの先祖がこのダンジョンを創ったと、確かにそう言っていた。それなら同じ糸の力を持った俺に出来たっておかしくはないと、話が進むにつれて少しずつ確信に近付いていった。
でも創るのはめんどいしゲームの仕様的に出来るとも思わん。精々ダンジョンの乗っ取りが関の山だろうし、これも狩場の独占問題が起こるから出来ないだろうな。
じゃあ妥協ラインを探すならどこだ?財宝を好きなだけ与える?それでも良いが、特殊条件の報酬にしてはちょいと弱いな。ユニークにユニークを重ねたこの条件で、通常のクエスト報酬が数倍になる程度で終わらすか?いいや無いね。
そもそもここに来たのは糸素材が必要だったからだ。なのに糸はおろか、素材すら無いなんてもっとありえない。製作陣だって分かってるはずだ、こんな所に居る連中が今さら金を欲する訳がねえんだよ。
そうなると素材か何か特殊なアイテムって線が濃厚になるが、始めたばっかの俺にはどっちの価値も分からん。それならリルルも仲間に出来たし、フオウモスを仲間に出来るルートだってあるんじゃないかと思ったんだが。
「ふむ…魅力的な提案じゃが、先に言った通り迷宮を存続させる為には儂がこの場に残らねばならぬ。せめて解決手段があれば良いのじゃが…」
「あのキングモスを父王にするんじゃダメなのか?」
「ならぬ。彼奴はまだ王となって日が浅い。子も居らぬ故、儂らの血が途絶えてしまうのじゃ」
「なあシン。お前の能力でこのダンジョン作り変えらんねえの?」
「さっきから試してるんだが、この空間自体に魔法が無効化される結界みたいなのが付与されてるみたいなんだよ。仲間に出来るとは思うんだがなぁ」
「それ不壊属性付いてないよな。なら壊せる。《祓》」
おっさんが天井に向かって刀を振る。すると、先程まで俺の魔法を無効化していた嫌な空気が消え去り、ついでに幾つか財宝も壊れた。
「ああー!!何やってんのサカキくん!!」
「ぬわぁーー!?儂の椅子がぁーー!!」
「悪りぃ、スキルの範囲が広くてな…」
「でかしたおっさん!これ、強制イベントだ!」
強制イベントとは、一定の条件を満たすとストーリームービーが流れたり、物語の序盤で絶対に勝てない敵が出てくるあれだ。
この場合は恐らく条件の方。その条件とは―――。
「見てくれ、空間の崩壊が始まった!!条件は―――結界の決壊だ!!」
「ぶっふぅ!?」
「冗談言ってる場合じゃねえぞ!!ミキ、さっさと拾えるもんは拾えぇっ!!」
「なんじゃなんじゃ、何が起きておる!?」
「お前も逃げるんだよ!ほら行く…おっも!?!?」
結界とやらを破壊した瞬間、地響きのような音と共に空間が崩壊を始めた。ミキさんは全力で財宝の回収、俺は重要そうな書物が無いかを捜索…無さそうだな。おっさんは出口の捜索とついでにフオウモスも連れて行こうとしていたが、近接職のSTRで持ち上げられないとかどんだけ重いんだよ。
しかし出口が見つからないぞ………どこだ…!ここまで来て死ぬのは勘弁願いたいねぇ!!
「サカキくん、足下だ!瓦礫を退けた下に魔法陣がある!」
「何っ!?《祓》!!」
「ああー!?また財宝がー!?」
「全ロスよりかはマシだろ!!早く行けぇっ!!」
「………儂は此処に残ろう。残らねば種族の皆に申し訳が」
「うるせぇ行けぇっ!!!」
「ほげぇーーーっ!?!?」
フオウモスを足蹴にして魔法陣へとぶち込み、自分も魔法陣へと吸い込まれていくおっさん。これは後でマスターに報告だな。さて、俺もさっさと脱出しますか。
「…………その前に」
俺も財宝貰っていこう。
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エクストラマップ《冠者の蚕宮殿》が消滅しました。
ユニーククエスト《父王の謝礼》を達成しました。
称号《真理(虫)》《反理》を獲得しました。
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「長かった…これでようやく…」
魔法陣は踏んだ瞬間に即起動する破壊不能オブジェクトです。反応するのはプレイヤーか特殊NPCのみなので、瓦礫や財宝といったオブジェクトはその場に残ります。




