糸王の宮、禁域に棲むは虹の主―4
丁寧に、丁寧にお話ししてフオウモスの誤解は解けた。途中から「ご先祖様ァ!!」とか言って平伏しだしたのは本当に怖かったから二度としないでくれ。
さっきからずっと腹抱えて笑ってる二人はさておき、フオウモスから聞いたこのクエストの大筋をまとめるとこうだ。
・フオウモスは先代のダンジョンボスでさっき倒したキングモスの父親である。
・親子仲がすこぶる悪く、キングモスにはさっさとくたばって欲しい。
・ダンジョンの仕組みについては大まかに理解している(自身が前任者であるため)。
・俺は糸使いの中でも特殊な糸、ご先祖様と同じ糸を扱う存在。
先祖と同じ糸を扱うとは言ったが、こいつらの先祖は当然モス―――蚕だ。人型をとってこそいるが人間の血が流れている訳ではない、とフオウモスは言っていた。流石にそんな設定足してたら製作陣の正気を疑う。……こいつらを生み出してる時点で既に正気ではないか。
それで俺たちが扉を開けられた理由を聞いてみたんだが。
「儂にも良く分からんのじゃ!」
「さっき糸が重なって〜とか言ってたじゃん。あれは何だったんだ?」
「ああ、『糸を愛す力が重なりし時にのみこの部屋は門戸を開く』か?あれは一族に伝えられて来た伝承でな。儂が王を退く時はひとりでに開いたんじゃ。まあ理由ははっきりしておるがな」
「それって?」
「儂の父が死んだ、それだけじゃ。この空間に父王がおらねば迷宮は維持出来ぬ。他の迷宮がどうかは知らぬが、少なくともこの迷宮はご先祖様がそのように設計したようじゃ」
なるほど、王と父王、二人が別の空間にいることでダンジョンは存続できていると。これはあれかな?親子で仲良くするなとご先祖様に呪われてたりするのか?化け物生み出した挙げ句こんな根深い設定まで付けやがって、もう好きなのか嫌いなのか分かんねえよ。
しかし“糸を愛す力”か。俺は別に糸を愛しちゃいないし、言葉の意味を読み取るなら糸使いという“能力”そのものが伝承の“糸を愛す”の部分に繋がるのかもな。さっき俺以外でも入れるって言ってたから、糸に関するスキル持ちなら誰でもクエスト自体は発生させられそうだな。
あと気になるのは“重なりし時”って部分。もしも俺の考察が正しいなら…。
「ミキさん、アクセサリー職人だって言ってたっすよね」
「そうだよ。僕のジョブは《手工芸師》。アクセサリーの製作に補正が掛かる、世にも珍しい生産系のユニークジョブだ」
「ユニークだったんすか!?…ちなみに、縫い物とか出来ます?」
「出来るよー。僕のジョブにはアクセサリーなら何でも作れるって便利なスキルがあってね。その為に必要な技術ならスキルレベルを上げれば全て習得出来るんだ」
「それっす。たぶん俺たちがこの部屋に入る為には、『糸関連のスキルを所持』かつ『そのどちらかがユニークである』という条件を満たさなきゃいけなかったんすよ」
「なるほど…じゃあサカキくんはただボスを倒しただけで金銀財宝を手に出来る運だけ野郎ってことかい?」
「貰えるかは分かりませんが、まあそうなるっすね」
「俺の扱い雑すぎねぇ?」
おっさんの戯言はまあいい。フオウモスにNPCにも伝わるように濁して伝えた回答は「YES」。よし、これでゲーマーとしての義務は果たした。発生条件を公開するかは後々考えるが、クエスト報酬次第では高値で流せそうだなぁ…。
おっと、ついつい悪い面が出てしまった。別に金が全てとは思っちゃいないが、始めたばっかの俺には幾らあっても困ることはない。稼ぐ手段は持っとかねえとな。
じゃあ本題の報酬の話に入ろうか。良い加減変態は見飽きた。
「で、俺たちはあんたの息子をぶっ倒してここに来た訳だが…」
「ああ、無論感謝しておるぞい。此処にあるものであれば、好きなだけ持って行くが良い」
「え、マジで?」
「やったねシンくん!これだけの財宝があれば早速金欠問題が解決じゃないか!」
「いやぁ、俺にはそれよりも欲しいものがあるんすよねぇ…」
謝礼というクエスト名、そして色々話を聞いた結果、俺は一つの結論に至った。
「俺が欲しいのは―――あんただ。シルキード・“グレイト”・フオウモス3世さん」
「わ、儂!?困ったのぅ…儂にそっちの気は無いのじゃが…」
「そうじゃねえよ!?だーかーらー、俺はあんたを仲間にしたいんだ。ここを出て、俺たちと一緒に冒険の旅に出ないか?」
なあ運営さんよ、わざわざアホみたいな回答を用意してるんだ。こういうルートも想定してたってことだよなぁ?
シルキード・“グレイト”・フオウモス3世「ぽっ…///」




