糸王の宮、禁域に棲むは虹の主―3
最初から最後まで、一体何が起きてるのか分からなかった。おっさんが分裂して…ボスにやられても復活して…気付いたらボスが真っ二つ。
これがトッププレイヤー、魔界最強の一角…!
「いやー、おつかれー!」
「「おろす」」
「おろす!?ちょ、意味が分からないんだけど!?」
「冗談だ。ドロップはどうだ?必要な分は足りてるか?」
「足りてる…足りてるんだけど………」
妙に歯切れが悪いな。足りてるならそれで良いんじゃないのか?そういやダンジョンってどこから出るんだろうな…………出口っぽいのは見えてるが…。
「ミキさん、ダンジョンってどこから出るんすか?」
「ああ…初めて来るシンくんはそりゃ知らないよね。ダンジョンはボスを倒すとボス部屋の真ん中に転移陣が出現する仕様なんだ。それに乗るとダンジョンの前か、登録した転移ポイント―――これはまた今度紹介するけど、そこに飛べるはず……」
「言われてみれば無いな…」
「そうなんだよねぇ。さて、どうやって帰ろうか」
「?あの扉じゃないんすか?」
「いや、あれはこの部屋のデザイン………怪しいね」
なんだデザインか。まあ他に手段も無いし一応確…。
「開いたー!?」
「何だと…?」
「えぇ………」
三者三様の反応。だが扉を開けた先にはさらに扉。それと同時に通知ウィンドウが開く。
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ユニーククエスト《父王よりの謝礼》を受注しました。
エクストラマップ《冠者の蚕宮殿》が解放されました。
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なんだこのふざけた名前…。いや、それよりもユニーククエスト?こんな簡単な条件でユニークなら誰かが発見して情報が出回っててもおかしくない。それなのにこの二人が初見なんてことが…。
「なんだこのふざけた名前は…」
「でもユニークだってさ。こんな情報、軍隊も把握してなかったよね?」
「だろうな。あいつらが情報を隠蔽するとは思えんし、扉を開けるだけが条件とも思わん。何らかの追加条件があったんだろう」
軍隊っていうのが何者かはさておき、出口が無い以上俺たちは進む以外の選択肢はない。何よりクエスト名が謝礼なんだからご褒美クエストだと思っていいよな。
一応武器を構え、警戒しながら扉を開ける。すると目の前には溢れんばかりの金銀財宝。そしてその中心に鎮座する王冠とマントのみを纏った全裸の昆虫。
え、また?
「「「んふっ」」」
「なんじゃ、人の顔を見るなり吹き出すとは。息子を倒した気概のある奴らかと思うておったが全く失礼じゃのう」
「最近のAIってすごいのな…」
「感心するとこそこじゃねえだろ…ぶふっ」
「うはっ、もうムリ…!これどういう状況なのさ!」
「この親にしてあの子あり…か」
「「ぶははははっっ!!!」」
ダメだこれ、ボケずにはいられねえ。口調と声が違うだけで見た目は全く同じだし、マッスルポーズを取らないのも逆に面白くなってくるし。断言する、俺たちは今どんなことでも笑える自信がある。
しかし諦めたのか、父キングモスはため息をひとつ吐いただけで何も言ってこなかった。ひとしきり笑った後、先に口を開いたのは父キングモスの方だった。
「ようやく落ち着いたか…。慣れたものだから良いが、儂が現役じゃったら冷静で居られる自信はなかったぞ。改めて自己紹介しよう。儂の名はシルキード・“グレイト”・フオウモス3世じゃ。よろしくのぅ、客人方よ」
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ユニークモンスター《シルキード・フオウモス》に遭遇しました。
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「どっから来たんじゃグレイト3世…」
「やめてシンくん、語尾が感染ってる…!」
「悪ノリしすぎだシン…腹いてぇ…!」
「なんだあんたら…失礼な奴だな。だよな、シルキード・“グレイト”・フオウモス3世さん?」
「「フルネームやめろっ……!!」」
「全くよ。お主は儂の価値観を理解してくれるようじゃの。流石は糸に愛されし者よ」
いや1ミリたりとも理解してないが。キングモスだから父王ってか?なんか面白いから二人には腹が捩れるほど笑ってもら………糸に愛されし者?
待て、何を言っている?AIがめちゃくちゃに成長してんのは知ってるが、俺に反応してセリフが変わっているのか…?
キングモスの能力は糸を操ること……蚕宮殿…シルキード…まさか。
「なあシルキード・“グレイト”・フオウモス3世さんよ。ここに入れんのって俺たち…いや、俺だけか?」
「確かにここに立ち入った者はお主らが初めてだがそういう訳ではない。糸を愛す力が重なりし時にのみこの部屋は門戸を開く。特にお主、シン…と言ったか。お主からは我が一族に受け継がれし糸の秘法、その原点たる力を感じる。まさかお主は…」
「ごくり……」
「我がご先祖様か?」
「そんなわけあるかぁっ!!!」
これ本当にAIか?
レギオン開発裏話:《糸蟲の宮殿》の設計者は極度の虫嫌い。出来るだけマイルドにしようとした結果、あのボスが産まれた。




