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レベリングとは、終わらない虚無に身を投じることである

私はレベリングしないでストーリー攻略する派です。上げ過ぎてラスボスをボコボコにしてしまった経験があるので…。

 


 装備のあれこれを話し終えたところで、俺たちがしなきゃいけないのは今後の進め方。とっくに通常のルートから外れてる俺たちは、マップの攻略順もあったもんじゃない。だって最初から最前線マップにいるんだから。


 そんな普通じゃ考えられない悩みを抱いていると、装備を取りに行っていたマスターが帰ってきた。



「お待たせ。最初から強すぎる装備はつまらないだろうと思って、二人のレベル帯より少し低いそこそこの装備を持ってきたよ」


「…マスター、分かってますね」


「当然さ。RPGの面白さは強くなる過程にもあるんだから。その点で言えば二人はちょっとだけ可哀想だけど、レベル上限までの短い間だけでも楽しんでもらいたくて。それに、道中のレベリングという虚無の時間を飛ばせたと思えば、多少なりともマシに思えるんじゃないかな?」



 あれはキツかったなぁ…とマスターはしみじみ呟いている。その気持ちは分かる、俺だって別ゲーで地獄みたいなレベリングを経験したことがあるからな。あの時は丸々一週間やらないとレベルが足りなくて本当に心が折れそうになった。


 まあ…プラスに考えるしかないか。それにレベルアップに必要な経験値ってのは大抵加速度的に増えていく。だからたったの20レベル上げるだけでも相当な時間が掛かると予想はできる。その間だけでも普通のプレイを楽しもう。


 俺はマスターから装備を譲渡され、インベントリに入ったそれを早速装備する。



「これは…鎖帷子(くさりかたびら)っすか。うん、軽くて動きやすい。効果はVIT+30と、魔法ダメージ3%軽減……これ本当にそこそこなんです?」


「鎖帷子なんて誰も使わないからね。それより良い物になるとVITが100とか上がっちゃうから、それが今渡せる一番丁度良いやつなんだ」



 マスターから渡された装備の名称は《鎖帷子・極(きわみ)》。鎖帷子といえばどのゲームでも初心者の定番防具。一体どこのアホが鎖帷子を極めたというのだろうか。

 だが効果は悪くない。VIT+30ということは実質3レベル分のアドバンテージが得られる。それにしばらくは前衛をやるつもりだったから魔法ダメージを減らしてくれるのはありがたい。頼りきりになるようで悪いが、死ななければイロハに回復してもらえる。当然それも無限じゃないからPS(プレイヤースキル)は磨いていかないとな。

 武器の方も名称が《鉄の剣・極》だった。効果はSTR+30。マスター…やったな?


 その為にもまずはVR空間での戦闘に慣れなくちゃいけない。しかし前例が無いことをやるわけだからどうしたものか。



「わっ!これデザインが可愛いですねー!」


「イロハおねえちゃんかわいいー!」


「ああ、それはウチの服飾担当が思い付きで作った魔法職用のローブなんだけど、よくよく考えたらウチには女性の純魔法職は居なくてね。泣く泣くお蔵入りになってたのを引っ張り出してきたんだ。いやー、売りに出さなくて良かったよ」


「そうなんですね!その方に会ったらお礼を言わないと」


「遠くないうちに会うことになると思うよ。彼女は装備全般を担ってるから、二人の武器を作る時に顔を合わせる必要があるからね。彼女曰く、『顔見ないとアイデアが湧かない』そうだ」



 気のせいかな、その言葉どこかで聞いたような…。いや…やっぱ気のせいだな。たぶんどっかのアーティストが言ってたのを聞いただけだな。


 そんなわけでイロハの装備は首元から腰までを覆う水色のローブだ。脚が自由になっているから機動力も担保されている、見た目だけでもこだわりが見てとれる逸品。

 まあ、イロハはシンプルにデザインが気に入っているようだから余計なことは口出ししないが。性能重視で外見度外視なのはゲーマーの悪いところだな、と自分の装備を見てより強く思った。鎖帷子は初心者の定番であると同時に外見が終わってる防具でも定番だからな。悲しい。


 ともかく、これでようやくお悩み相談に移れる。そう思って口を開こうとしたが、先にミキさんからとある提案を受ける。



「そうだ、二人ともどうするか決めてないんだろう?それなら僕からのお願いを聞いてくれないかな。もちろん、報酬は弾むからさ」


「聞きましょう」


「即答か、君も中々現金な男だね。さて、お願いの内容なんだけど、さっきアクセサリーを作ってあげるって話をしただろう?実はそのために必要な素材が少しだけ足りなくてね。良ければ僕と一緒に取りに行ってくれないかな?」


「いやいや、むしろ俺たちの物なんですから俺たちに行かせてください。他のプレイヤーは自力で素材を集めて職人に依頼してる訳なんですし、それもしないのは流石に申し訳ないっす」


「報酬だなんて、こっちがお金を払うべきですよ!」


「ははっ、君たちは本当に優しいね。それなら今度素材が足りなくなった時にでもまたお願いさせてもらうよ。それじゃあ準備が出来たら行こうか」




 虫系モンスターの蔓延る、《糸蟲(しちゅう)の宮殿》へ。




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