ゲーム初心者イロハちゃん、装備について学ぶ。
何ともあっけない結末となってしまった俺たちの入団テストは、正式に合格を告げられた。これで俺たちも正式に魔王の凱歌の一員である。リルルもやりたそうにしていたが、おじさんが死んじゃうから、と諌めた。
俺は気になってさっきの会議で何を話してたのか聞いてみた。すると3人の回答はまさかの「ヒーラー少なすぎ問題」だった。
「それってなんでしょうか?」
「ああ、イロハちゃんはゲーム初心者だったよね。こういうMMOゲームにはありがちなんだけど、みんなアタッカー系のジョブばかり選ぶせいでタンクやヒーラーが不足するって問題が度々起こるんだ。ウチにはタンクはいるけどヒーラーが今までいなくて回復は全部ポーション頼みだったから、イロハちゃんは本当に救世主なんだ」
「そ、そこまで言われちゃうと照れますね……。不肖の身ではありますが、精一杯頑張らせていただきます!」
「期待しているよ。まあ一番は前衛がダメージを受けないことなんだけど。ねぇ、サカキ?」
「カウンターとユニークが使えてればシンの最後の一撃も貰ってなかっただろうよ。それを禁じたのはヘッドだろうが」
「だってそれじゃあ勝ち筋が無くなってしまうじゃないか。君のカウンターは半自動スキルなんだから奇襲も意味を成さなくなってしまう。そういう意味では勝ち筋を見出したシンくんを褒めるべきだと思うけどね」
話の流れで褒められた。嬉しい。てか半自動カウンタースキルってなんだよ。飛び道具無効化するスキルがあるのに近接も反撃で実質無効化。おっさん、俺との戦いじゃ実力の半分も出してなかったんだろうな…。
だが入ってしまったからには俺もあのレベルを目指さなきゃならない。道のりは長そうだ。
その後、これからのことを話し合うためにエレベーターで上へ戻る。やっぱ魔物がいる世界にこれはオーバーテクノロジーだろ。
「さて、二人とも今日はまだインしていられるのかい?」
「俺は大丈夫っす」
「私もお休みなので大丈夫です!」
「そういえば世間は連休だったね。私は休みが無いから忘れていたよ………話を戻そう」
世知辛いなぁ…。
「まず君たちには装備を与えようと思う。間に合わせの物で悪いけど、私たちの仲間に加わる訳だから、初期装備のままにはできないからね」
「いやいや、金欠の俺たちにはありがたい限りっす!だよなイロハ?」
「もちろんです!………それで、装備ってなんですか?」
「そこからだよなぁ…」
装備の定義は幅広い。それこそプレイするゲームによって大きく異なる程には。今回はあくまでもレギオンに限った話になる。
ステータス画面を開けば分かるのだが、大まかには2種類。武器と防具だ。
武器は言わずもがな、俺だったら片手剣、サカキのおっさんなら刀といった具合に、アタッカーなら攻撃力、タンク―――前衛で敵を引きつける担当なら防御力、イロハのようなヒーラーなら回復力を上げる、野球で言えばバットみたいなもの。
対して防具は、身体に身につける服のことだ。今俺たちが着ている皮の服にもVIT+1の効果が付いてるはずだ。これをマスターが装備している軽鎧とかおっさんの侍装束に変えたりできる。
上がるステータスは防具って名前だけあってVITが中心だが、その他にも色々上が………りますよね?上がる。良かったー。あ、野球ならグローブみたいなもんね。
ここからは僕が説明を代わろう。さっきシンくんに紹介してもらった武器と防具以外にも、アクセサリーっていう分類の装備もあるんだ。例えばこのネックレスとか、マスターさんが着けてる耳飾りみたいな物さ。
これは物によるけど、基本的にはどのステータスも上げることができるんだ。武器じゃないけどSTRが上がったり、防具じゃないけどVITが上がったり。LUKが上がる物だってあるんだ。僕のネックレスがまさにそれ。
シンくん風に言うなら、バットが滑らないようにするバッティンググローブみたいなものかな。
「ちなみに僕はアクセサリー職人なんだ。すぐに君たちの分も作ってあげるから楽しみに待っててね」
「はえ〜…勉強になりました。それで、今私たちが貰えるのって…」
「武器と防具だね。見たところ、イロハちゃんは後衛、シンくんはオールラウンダーっぽいから、それに合わせた装備を渡そうと思っているんだけど、何か希望はあるかい?」
「私は分からないので何でも大丈夫ですっ!」
「はは、素直でよろしい。シンくんはどうかな?」
「俺は…」
正直、悩んでいる。マスターも間に合わせの物だと言っていたし、後で別のものに変わるのは理解してる。でも最初に使った装備の感覚が馴染みやすいのも事実なんだよなぁ。俺は糸で武器を作れるが、強度がカスすぎて使い物にならないし燃費も悪い。
でも弓の感覚は悪くなかった。恐らくこれからも使うことになる。ただこれからも一緒にやることになるであろうイロハは後衛。弓使いになってしまえば俺も後衛になって役割が被ってしまう。
いや、決めた。俺がやるべきは前衛。中・遠距離は糸でカバー出来るが、近距離はどうにもならないと感じたからだ。その上で俺が使うべき装備は。
「片手剣っすかね。防具は軽めだと助かります」
「へえ。その心は?」
「武器は近距離のカバーですね。糸で剣を作ろうにも生成速度が速いわけではなさそうなので。防具は感覚です。ただ、重装備は合わなそうだなと」
「いやー、やっぱりゲームに詳しい人がいると助かるね!私も元々ゲームなんてやってこなかったから、今でもみんなが言ってることが理解できない時があるんだよ!」
「おいおいヘッド、仮にも初期勢がそりゃないぜ…」
この人たちは凄くユーモアのある人たちだ、と心の底から思った瞬間だった。同時に、おっさんはともかく他の二人が最凶と呼ばれるようには思えない。その辺りもいつか聞いてみよう。
プロローグでも書きましたが、近未来世界においてもスポーツの人気は廃れていません。
あとどうでも良いですが作者は野球大好きおじさんです。




