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Syzygy Love  作者: おきついたち


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5/7

おまけ話「長男須恵」

唐突やけど六弘兄弟四男の伊万里です。

タイトルとちゃうやんか、と思うたかも知れんけど大丈夫。

兄弟ン中でオレが一番観察力あると思うんで、代表で少々語らせて貰おかと思います。

オレら5人仲はエエけど、ほんま外見も中身もバラバラなんで。

それぞれが話出したら収拾付かんよおなるやろし。

まあもし、もっと知りたいコトあったら訊いてください。

それこそ本人が居らんトコで何あんでもお応えしますんで~。


まずは長男須恵を紹介します~。

長男なのにスエなんか?て名前を考えた母ちゃんに、父ちゃんはツッコんだけど。

古墳時代から造られてた土器のことやから、一番始め言う意味ではピッタリなんかも。

ホンマにしっかり者で、頭も愛想も要領も良おて。

身体が一番デカイんは瀬戸兄やけど、誰も須恵兄に逆らったりせえへん。

ニコニコしとるのに怖いもん。そおニコニコしとる程怖い。

きっと大企業の営業とかで、笑顔で名刺交換しながら根回し済の契約件数獲得してまう感じ。

大学も政治経済学科やし、東京か大阪出て大手に就職するんやろなて思うてた。


それが急に。

「公務員試験受けるンで勉強して来るワ」て毎日図書館通いするようになって。

しかもめっちゃご機嫌顔。権力者の圧笑顔とはちょっと違うヤツ。

せやからこの間出掛けた時に、遠回りして図書館に寄ってみたんや。



図書館と役所の出張窓口がある建物の手前に公園があるんで、中突っ切ろ思うて。

生垣の近くを通ったら、須恵兄の声。背伸びして生垣の向こうを覗いてみた。


「こんちは海野さん」

「…何んか用ですか?」

「オレも飯喰うんで、隣座ってもエエですか?」

「どうぞ私はもお終わったし仕事に戻ります」

「あははは下手な嘘やなあ、今弁当箱のフタ開けたトコやないですか」

「イイんです、急いでますから」

「駅前商店街で評判のコロッケ買えたんですよ。

昼時はいっつも売切れやなのに。まだ温いですし味見しません?」

「…」

「季節限定の新ジャガ醤油味て、今しか食べられへんですよ。はい」

須恵兄はそのまま並んでベンチに座ったんで、見えるのは2人の背中だけ。

どんな顔してンのかは見えへんけど。

聞えて来る須恵兄の声と口調は、家では聞いたこと無いような穏やかさ。

思わずオレはしゃがみ込んで聞き耳立ててもた。


「海野さんが言うとった中東問題の2冊読み比べしてみました。

どっちから見るかで書き様も全然違うくて。めっちゃ興味深かったです。

さすが海野さんのお薦めや」

「そおですか」

「読んだ内容に何ンか思うたり考えたりする隙間が在るんが、書籍の良えトコですよね。

ネット情報や動画は作り手側の速さで流れて行ってもて、追い着くだけになってまうし」

「それはそれぞれのメリットデメリットやから。

良えとか悪いとかや無うて、見る側が使い分けるべきです」

「そおかあ、ホンマそおですね。

情報化言うても、そーゆーバランスが大事なんかもなあ。

あ、筑前煮もどおです?この総菜屋の味付けオレ好きなんですよ。味見してください」

「いや、あの。前もおかず分けて貰うたし…」

「エエやないですか。食事もバランスが大事やし野菜も肉も食べんと」

「…それって恵んどるつもりですか?」

「まさかあ!旨いもんは、誰かと美味しいなあて言いながら食べるンがエエからですよ。

はいどおぞ」



これ以上は聞かん方がエエ、そお思うてオレは静かにその場を離れて図書館に入った。

そんで広いフロアをゆーっくり歩いて、本棚を眺めながら時間を潰して。

休憩時間の入替で受付職員が変るのを待っていると、来た!

うみのと言う名札を付けているのは、若い男性職員。

須恵兄は読書室へ行ったんやろか?近くには居らんみたいやけど。

うみのさんは、大きな丸眼鏡を掛けてひょろりと細身にさらさら黒髪。

きゅっと結んだ口元は真面目そう。も少しリラックスしたら優しい顔になりそおやのに。

でも前髪が少し変?まるで自分で切ったみたいや。

サイズが大き過ぎるシャツの襟元はゆるゆるやし、身だしなみに金掛けてない風。

最近の図書館業務は経費削減のために委託とか派遣を使うらしーし、それはきっと安給料。

だからピンと来てもた。

須恵兄はうみのさんと喋りたあて、餌付けを兼ねた図書館通いをしとるに違いなーい!



真相の程はめっちゃ気になるけど。

もちろん須恵兄にツッコミなんか入れられへん。藪蛇がハブかコブラになって即死やし。

せやから帰宅しても黙っとたのに。

藪を突かんでも蛇が目の前で鎌首をもたげたら、もう誤魔化しは効かへん。

「伊万里、今日図書館に居ったな。何ンの用やったん?」

「えっ!いやえと図書館言うたらそらあ本借りに…」

「コロッケも筑前煮も旨そうやったやろ」

にーっこりと須恵兄が笑うから。はいすんません覗いてましたと頭を下げるしかナイ。


「可愛えヒトやろ」

「え?えーと何んか真面目そーで、警戒しとるみたいに見えたけど」

「まーまだそおやけど。そのうちにな。

海野さんの知識量はめっちゃ深いし広範囲やねん。話しとるとほんま面白い。

一緒に居ると楽しいて何時間でも話出来てまう。カワエエのにカッコエエ」

「はぁえらい気に入っとるんやな」

「そお。

派遣社員なんやけど、さすが地域んコトもちゃんと把握しとって。

六弘て名乗ったらじいちゃんのお陰で、オレんこともまあまあ信用してくれとる。

そろそろ飯誘って連絡先貰おかな」

いつの間にか須恵兄はふんふふん♪とハナウタモードでスマホをいじってる。

食べログでも検索しとるんやろか。

「須恵兄」

「ん?」

「公務員試験の勉強て…」

「うん。県下の図書システムて県庁で一本化しとるらしいねん。委託や派遣の管理もな。

公務員なっていきなり希望通りの配属は無理やろけど。

パイプ1本つながとったら、まあ何んとか出来るやろ」



ああほんまそおや。須恵兄は運命の赤い糸は信じんけど。

自分で太っいパイプ100本つなげに行くワ。しかもガッツリ固定して外れへんヤツ。

あんなひょろっとしたヒト、パイプ重過ぎて身動き取れんくなりそおやけど。

「ダイジョウブなん?怖がって図書館辞めてまうかもよ?」

「そんな不味いコトせえへんワ。

ほんまに図書館つーか書籍のコトを大切にしとる人やからな。

本の話題絡めたら問題無いし、あれこれ話たぁてウズウズしとるくらいや。

孝星も、汚してもた本を直して貰うたからて懐いとる。

海野さんはそーゆー子供の手ぇ払えるヒトちゃうしな」

須恵兄はいつも以上のニコニコ顔でそお言い切った。



わ~うみのさん詰みや~逃げ道ナシや~。


でもまあ弟の贔屓目かも知れんけど、須恵兄なら選んでも後悔せんと思う。

学校では後輩にも友達にも好かれとったし、カノジョカレシともいつも上手くやっとった。

そんな須恵兄が自分からホンキで狙うとるんやから絶対幸せにしてくれるはず。


「須恵兄」

「ん?」

「オレ今度図書館行ったら挨拶してもエエ?」

キラっと須恵兄の目が光る。

「そーいやTAKEOKIKUCHIのパーカー気に入っとったよな。譲ってやらんでもナイで」

「えっ♪あのアプリコットカラーのヤツ?オレめっちゃ好きや~あのデザイン」

「協力せえよ」

「するする~」


うみのさんガンバっ♪応援しとるで~。


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