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失恋聖女は祠を破壊する~私を選ばなかったはずの神官が追放先まで追いかけてきます!?~  作者: 天木奏音


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9/11

9.マリーエ、ご神体の元へ

 男性はしばらくキョロキョロしながらルーナさんを探していたけど、少ししたら諦めてその場から去っていった。


「マリっち、超凄いじゃん!結界とかあたしには全然見えないんだけど、どうなってんの?」


「神力がない人には見えないんですよ。見えたとしても、術者の私以上の神力を持たない人には破ることが出来ないので、こうしている限りは安全です」


 なにせ私は、自分より神力が多い人には出会ったことがない。その上この結界はハルメイア様の御力を借りている特別製だ。


「あの、今の男性は……」


「ごめんねマリっち、怖かったっしょ。アイツ……クルトは幼馴染みたいなものなんだけど、あのご神体の影響で急にあたしのことつけ回すようになってさぁ。ワケわかんないんだよね」


「あんな風になってしまった方が、他にもいるのですか?」


「まったく同じようなのはいないけど、近い感じのはいるよ。老若男女問わずね!」


「……結界で隠れたまま移動しましょう…………」


 今はある程度範囲を広げて張っているけど、身体に沿うよう薄く延ばして張ることも出来る。おかしくなっている人の実例をとりあえず一人見ることが出来たので、危機回避を優先させていただこう。


 ルーナさんの同意を得て結界を張り直し、再び小神殿に向かって歩き出した。


 ◇◇◇


「わぁ……!すごい!!きれいです!!」


 進んでいくと、ブルーベルの群生地が見えてきた。この国では大聖女ブルーベルにちなんであちこちに植えられているので、国内のいたるところでこのような光景が見られるけど、ハザマ村のブルーベルは格別に美しかった。


「へへー、凄いっしょ。あたしもここは気に入ってるんだ」


「はい……空気も澄んでいて、とても気持ちがいいですね」


 大神殿も清浄な空気が満ちているけど、屋外の自然な空気はまた違った趣がある。心が沸き立つようだ。


 だけど、小神殿に近付くにつれて、晴れやかな気持ちがどんどん沈んでいった。


「ハルメイア様…………だいじょぶですか…………?」


『げえぇぇぇぇ……なんなのよこの重っ苦しい空気はぁ…………』


「二人とも、だいじょぶ?そんなにヤバそげ?」


 この村に辿り着いた時に感じた重苦しさが、何倍にもなって私たちに襲い掛かっている。


「け、結界があるので、なんとか……これは、早急に元を断たないと危険ですね……」


「お、マリっち気合十分だね!その調子で、あのご神体をぶっ壊しちゃおー!!」


 ルーナさんは私の発言を受けてご機嫌だけど、まだ壊すとは言っていないので早まらないで欲しい。


 この国では、数多の神に祈りを捧げることで多大なる恩恵がもたらされている。私のように実際に神の分身体と共に暮らして直接力を貸していただけるのは稀なことだけど、それだけじゃない。人々が真摯に祈りを捧げることで、そのお礼に人々が健やかに暮らせるよう、神々が手を貸してくれるのだ。何らかの理由で祈りが足りなくなると、災害や飢饉が起きやすくなると、歴史が証明している。


 村人が小神殿を大事にして、足繫く祈りを捧げに通うことで、神の覚えがめでたくなる。そのことが、村人たちの安寧に繋がるのだ。


「国内の各地にある中小の神殿は、国の隅々にまで神々のご加護を行き渡らせるために必要なものなのです。そこにあるご神体を壊してしまえば、この村から神のご加護が失われるかもしれません」


『ただ、ここの神殿では明らかに何かが起こっているわ。ご神体が原因かはわからないけど、早急に手を打つ必要があるのは間違いないから、ひとまず奥に進んでみましょう』


「ハルメイア様のおっしゃる通りです。急ぎましょう……!」


 ルーナさんの案内で奥に進み、小さな扉の前に辿り着く。


「この中に祠があって、ご神体はそこに入ってるんだけど……ホントにだいじょぶ?あたしが持ってこようか?」


「だ、だめです!清掃係の皆さんみたいに、ルーナさんまでおかしくなっちゃうかもしれません……!」


 私たちは重苦しさを感じることはあれど、村の人たちのように精神に悪影響を及ぼすことはまずない。影響は大きいけど、その分防ぐ手立てもわかっているからだ。


『ルーナ、あなたはここまでよ。後はあたくしとマリーエが見て来るから、下がっていなさい』


「ここまで連れてきておいて言うのもアレなんだけど、二人とも、無理しないでね……!」


 こくりを頷き、意を決して扉を開けてみる。何が待ち受けているのかはらはらしたけど、内部は驚くほど静かで、何も感じられなかった。


「あれ……なんか、妙に静かですね……?」


 ここで私は、予想に反して何もなかったことで、うっかり油断してしまったのだろう。


『マリーエ、それ以上近付いてはだめよ!!!』


 ご神体を見てみようと一歩踏み込んだところで、ハルメイア様の鋭い制止の声が響いた。


「…………っ!」


 その直後に、祠から真っ黒なモヤが噴出してきて、私の意識はここで途絶えた。

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