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失恋聖女は祠を破壊する~私を選ばなかったはずの神官が追放先まで追いかけてきます!?~  作者: 天木奏音


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5.村人、偽聖女にグイグイいく

「ようこそおいでくださいました、偽聖女様。おれはこの村の村長代理のニックです。どうか我々をお救いください!」


「えぇっと……偽聖女かどうかはわかりませんが、歓迎ありがとうございます。マリーエと申します。その、村長さんは……?」


「村長の親父は、腰をやっちまって湯治に出掛けているので、今この村にはいないんです。前村長のじーさんはもう高齢でなもんで、俺が代理を務めてるんです。ささっ、まずはこちらへ」


 まだ状況が飲み込めていない私は、とりあえず移動しながら話を聞くことにした。


 ここハザマ村は、私を追放したエンデ侯爵家が治める領地内にある。数時間前に『王都の大神殿でご神体を破壊した偽聖女をそちらに追放する』と村に連絡があり、大慌てで準備をしてくれたらしい。


「おっ、騒がせして申し訳ないです……!」


「なに言ってんですか偽聖女様!俺たちみんな、貴女様のような逸材を待ってたんです!」


「逸材?とは……?」


「侯爵様は、ご神体がヤバいから神官を派遣してくれと、いくら訴えても全然取り合ってくれなかったんですよ。それがようやく村に救いの手を差し伸べてくださったんだと、みんな喜んでます」


 どう考えても、エンデ侯爵家にそんな意図はないとわかる。

 ハザマ村の人々は私に何を期待しているのだろう。知りたいような、聞くのが怖いような。

 

『マリーエ、この村なんかおかしいわね。妙に空気が重苦しいわ』


「ハルメイア様!」


「猫が喋った!?あ、偽聖女様の使い魔ってやつですか?」


「え、えと、はい。たぶん、そういう感じです」


 ここでハルメイア様が愛の女神だと明かしたら、村の方たちが妙な盛り上がりを見せる予感がしたので、はぐらかしておくことにした。


 それより、普段は猫のフリをしているハルメイア様が人前で喋ったということは、私にすぐ伝えなきゃいけない内容なのだろう。


「おっしゃる通り、あまり清浄な空気ではありませんね。この地には、何か悪しきモノがいるのでしょうか?」


『その可能性があるわ。そこのお前……あたくしのマリーエに、何をさせるつもり?』


 急に指名され睨みつけられたニックさんは、驚きのあまりびょいんと跳ねて、ぎこちなくハルメイア様の問いに答える。


「おっ、俺たちは、この村のご神体をぶっ壊したいんです!だけど、何人で行っても誰一人近寄ることすら出来なくて……」


「ご神体を壊すだなんて!ど、どうしてそのようなことを……!?」


 予想以上にとんでもない役目を求められていると知り、私もびょいんと跳ねてしまう。それと同時に、歓迎された理由もよくわかった。破壊を求められても全然嬉しくないのが本音だけど、ニックさんをはじめ村の皆さんがあれだけ盛り上がるということは、相当困っているに違いない。


 何か私に出来ることがあるだろうかと思案していると、少し離れたところから二人の女性がこちらにやってきた。


「まぁ、ニックってば!長旅でお疲れの偽聖女様をいつまでも立たせておくなんて!うちの人ってば、気が利かなくて申し訳ありません」


「ニック兄早く来てよ!みんな偽聖女様のことちょー待ってるよ!!」


 綺麗な女性と、私と同い年くらいの少女にも偽聖女様と呼ばれて、何とも言えない気分だ。この呼び名が定着する前に、せめて名前で呼んでもらえるよう軌道修正を図りたい。


「そちらの猫さんは、偽聖女様の使い魔さんでしょうか?王都には見たことのないような美しい毛並みの猫さんがいるのですね」


『あら、わかってるじゃない小娘!』


 綺麗な女性に褒められたハルメイア様は、ようやくニックさんを睨むのをやめてくれた。


「さぁ、偽聖女様。歓迎の宴の準備が整っております。猫さんが食べられそうなものも用意してきますね」


「ご飯もお酒もいっぱいあるから!今日は盛りあがってこー!!」


 「あ、ありがとうございます……?えっ、今、宴って言いました……?そ、そもそも、あなたたちは……」


「私、ニックの婚約者のエデルといいます。この子は妹のルーナです。この村は偽聖女様のような方をお待ちしておりました。どうか、私たちに力を貸してください!」


「え、えぇっと、私はマリーエと申します。偽聖女かどうかはなんともですが……」


「じゃあ、マリっちって呼ぶね!みんなーーー偽聖女様来たよぉーーー!!」


 周辺の建物と比べると少し大きなお家に招き入れられ、手を引かれるがままに奥へと連れていかれる。そこで目にしたのは、驚きの光景だった。

 



「「「カンパーーーーイ!!!」」」

 

 


「いやーようやくあのご神体とおさらばだ!!」


「領主さまも、あたしらのことをちゃんと考えてくれてたんだねぇ。涙が出そうだよ……」


「偽聖女様って、王都の大神殿の宝物庫をめちゃくちゃにしたんでしょ?」


「そうらしいぜ!大聖女様が封じた呪物を粉々にしたって噂だぜ!!」


「どう考えても壊せなさそうなモンを壊したんだ。この村のご神体なんて、一瞬で木っ端みじんに違いねぇ!!」


 なんてことだろう。

 私の悪行は、どうやら村中に知れ渡っているらしい。穴があったら入りたい。だけどニックさんが、広間中に響き渡る声で宣言してしまった。


「おーいお前たち!偽聖女マリーエ様のお通りだ!!道を開けろー!!!」


「「「おーーー!!!!!」」」


 村に着いた時もそうだったけど、あまりの大歓迎っぷりにちょっと引いてしまう。思わず固まっていたら、エデルさんにそっと背中を押された。


「さぁ、偽聖女様。この村の特産品を使ったごちそうを用意してあります。まずはお腹を満たして、改めて私たちの話を聞いていただけますか?」


 そういえば、今日は朝食以降何も食べていない。テーブルの上のごちそうを見たら、お腹がきゅうと情けない音を立てた。


「…………はぃ」


 空腹時にはろくなことを考えないのが、人間という生き物だ。ひとまずはエデルさんの勧めに従うことにした。

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