私はモブなんです!!!
連続更新しています。よろしくお願いします。
『君が為の花束』の隠しキャラの出現条件は、極めて難しいらしい。
私は、最初のフェリクス王太子攻略で飽きてしまい、その後は動画投稿サイトにあったゲーム画面で動画を見た。隠しキャラ攻略は、ご褒美キャラらしく出現条件の難しさに反比例して攻略は簡単に出来る。最初に影のある留学生に話しかけずに噴水の傍で泣いているクリスティーナに話かければいいだけ。
後は、クリスティーナが語りそこへ彼がやってくる。二人はクリスティーナから言葉を貰い、出された選択肢を間違えなければいいと言うだけ。
正解の選択をした後は、彼との甘々ストーリーが繰り広げられると言うものだ。
私は、そのクリスティーナの語る内容に興味を惹かれて原作者のブログの裏話を読み込んだ。
読み込んで思ったことは──────
二人が幸せになる道は、無いのか?だった。
◇
私が前世で知った情報では今日は、とても、とても悲しい出来事が起きる大きな切っ掛けとなる日でした。
クリスティーナとレオナルド様、ルーカス様は、今日と同じ様に一本木までピクニックに乗馬で出掛けるのです。でも今日と違うのは、物語ではクリスティーナはレオナルド様と一緒に乗ったこと。ルーカス様は一人サムに乗って向かうのです。
愉しく三人で馬を並走させて、おしゃべりをしながらゆっくりと歩みを進めていきました。後少しで、一本木がある草原に差し掛かったときに、悪戯を思い付いたルーカス様があることを仕掛けてきたのです。サムの腹を思いっきり蹴りルーカス様は、競争だと言ってレオナルド様たちを置いて駆け出しました。
クリスティーナとレオナルド様の乗ってフィンはとても力強い馬ですが、二人乗りのため追いつくことが出来ないのです。
一人独走でルーカス様がもう直ぐ一本木のところに着くという所で、今日のように雷が落ちてルーカス様の乗っていたサムは暴走を始めるのです。
レオナルド様はサムの軌道を読んで先回りしてルーカス様より手綱を奪い、旋回するように併走して誘導してサムの暴走を止めました。
物語のクリスティーナは大人しく、ポニーには乗るが大きな馬に乗るのは苦手な子でした。そのため恐怖で固まりフィンの首にしがみ付くのがやっとでした。
レオナルド様がルーカス様のサムを止め、フィンも一緒に止まった時。誰もが安心したときでした。
クリスティーナは、それまでしがみ付いていた体から力が抜けて、気を失いズルッと馬上から落ちてしまったのです。
それをレオナルド様がクリスティーナの体を寸前で掴んだのです。ですが、それも掴みが悪かったのか馬上から一緒に落ちてしまい、レオナルド様はクリスティーナを抱えて強かに体を打ち付けた。
クリスティーナは庇われ幸いに擦り傷と軽い打撲だけですんだのですが、レオナルド様は、大怪我をしてしまいました。
その後、大雨が三人を打ち付ける描写がありました。
レオナルド様の大怪我は、一生残るもので・・・腰を強く打ち付けたことで立つことが出来なくなったのです。
それまでレオナルド様は、柔和で穏やかな人柄とありましたがその日を境に人が変わってしまうのです。
誰にも感謝と尊敬を持って接していたのに、卑屈になり癇癪を起こすようになったのです。
クリスティーナは、事故の原因が自分にあるとレオナルド様に一生を捧げると、フォルトゥーナに移り住むことにしたのです。
人格の変わってしまったレオナルド様は、自由の利かないお体に苛立ち、クリスティーナに当たり散らすことが日常となっていました。それでもクリスティーナはレオナルド様に献身的に尽くし、だんだん二人の距離は縮まったように思えたのです。
ルーカス様も事故の一因があると自分を責められて、レオナルド様がされていた公務と勉強を引き継ぎ忙しい日々を過ごしていました。それまでの甘えを捨てて、責任感を持ち自分にいつも厳しく人に優しい嘗てのレオナルド様のように成長されていました。
それは、緩やかに変わりなく2年が過ぎていった日。
全てがまた、変わってしまうことが起きるのです。
マラカイトからクリスティーナへ悲しい知らせが入り、絶望に落とされるのです。
本当はマラカイトの家に今すぐ帰りたいクリスティーナなのですが、少しずつレオナルド様が立ち直っていこうとしたときだったので、そのことは誰にも告げずにいたのですが、どういう切っ掛けかレオナルド様に知られてしまい。
自暴自棄となったレオナルド様は・・・・・・
──────自害されるのです。
カチャッ!
大きな音が室内に響く。
あまりにも衝撃的な話だと思う。
何を言っているんだと、声を荒げてもいいと思う。
だが、誰も声を発しない。
小屋の中のソファは一つしかない。
屋敷のサロンにあるソファのように大きくないのに、こんな時までいつものように三人で並んで座っている。
話し辛いとは思ったが、一度決めたことだからと話しはじめればスラスラ言葉が出た。前世を思いだしてから、間違いがあってはいけないからとここまでは何度も思いだしては書き留めていた。
挫けそうなときに何度も見て、こんな未来は嫌だと心を新たにしたから覚えている。
あれから誰も何も言わない。
音も立てない。暖炉の中で薪が時々爆ぜる音が聞こえるくらい。雨音は聞こえない。止んだのか音が出ないような小ぶりになったのか、どちらにしても静寂が周りを包んでいる。
「・・・ふぅ」
一度、息を吐き唇を湿らせて続きを口にする。
レオナルド様が亡くなったのは、クリスティーナの誕生日でした。
クリスティーナは、レオナルド様が亡くなったことでお傍にいたのは贖罪ではなく愛していたからだと自覚して噎び泣きます。
ですがレオナルド様が亡くなったことで、クリスティーナがフォルトゥーナ国にいる意味はないとマラカイト国に帰されることになったのです。
ですが王妃様は、憔悴したクリスティーナにルーカス様の婚約者になってほしいと懇願されてしまい『こんなわたくしでもいいのでしたら・・・』と承諾されるのです。
ルーカス様も、敬愛していたレオナルド様が亡くったことで心に傷を負ってしまい、心の休息が必要だとフォルトゥーナを離れてマラカイトの学園に留学することになったのです。
クリスティーナと一緒に学園に入ることになりました。
ですがルーカス様は、そこで優しく美しいヒロイン、女性に出会い癒されて元気を取り戻されるのです。
私は、二人が結ばれたのを見届けて婚約を解消してもらい、フォルトゥーナの神殿に巫女として入りレオナルド様の御霊の側で生涯を過ごしました。
それが、私の知っている・・・・・起きてほしくない未来のことです。
「・・・・・・わたくしは、最初の落馬事故さえ起こらなければ、レオナルド様もルーカス様も悲しむような未来を作らずに済むと、それはこれから起こりうることを知っている私だから出来るのだと思って準備をしていたのです」
これですべてです。
そう静かに締めくくり、入れておいた、もう冷めてしまったお茶を一口喉に流し込んだ。
両隣に座るレオナルド様もルーカス様も、どちらの顔も複雑な表情のまま固まっていた。
可笑しな話だと、信じることが出来ない、人をバカにしているのか・・・そんな聞こえない罵倒が頭をよぎる。
「・・・まず、そのクリスの前世で知っているそのストーリー?・・・確かに今日の状況に似ていたけど・・・」
ルーカス様がまだ信じられないというように言ってきます。
そうですよね、お二人にはゲームとは言っていませんが書物か何かのように匂わせてそれに酷似している世界だとそこはぼかしたのですが・・・
「わたくしも、最初は信じられませんでした・・・ですが、お誕生日のプレゼントが毎年一致していたのです。レオナルド様は、花束、花のペーパーウェイト、天使の置物、アクセサリースタンド。ルーカス様は、魔道書、花図鑑、クリスタルの動物の置物、花模様のキーホルダー。
情報通り全て一致していました。それで疑いもないと確信しました」
そう言うとレオナルド様は左手を取り、優しく包み握ってくださいました。
レオナルド様の手は相変わらず温かい。
最初に話すと決めた時に握られた温もりと変わらない。
レオナルド様の手がとても温かく、ほっと安心した自分がいる。
「私が知っていることは、これですべてです。
信じられませんよね?」
不安からか笑う声が震え、歪な笑顔になっていることが自覚できる。
それに痛々しそうな顔のレオナルド様と悲しそうな顔のルーカス様。微妙に違う二人の表情。どちらも私を気遣ってくれていることはわかる。
でも、それとこの話を信じるかは別だと思う。
「クリスはどんな準備をしていたの?」
レオナルド様の質問は、私の思いとは違うものでした。
まさか、そんなことを聞かれると思いもしなかったけど、それも隠すことなく話します。
「えっ、と、・・・まずは、3年前より乗馬を習いました。侯爵家の護衛騎士たちの訓練に参加させてもらいまして、落馬の時の受け身と暴れ馬の調教を主にしました。最初はよく落ちていたのですが、受身を覚えることが目的なので怪我対策は万全で、魔術師に傍で対応してもらっていました。私が落ちたタイミングで、地面を綿のように柔らかくして、受け止めて貰っていたので怪我は少なかったです。その魔法は、私も教えてもらって、もしもの時はいつでも使えるように頑張って修得出来ました。とは言っても、タイミングが重要なので上手く出来るかは不安でしたけど、使うことがなくって良かったです。
それから、天気予報魔法です。急に天気が変わって、雷雨が予測出来れば少しでも回避出来るかと思ったのですが・・・。やはり、これは自然のことですね。わかっていても、回避なんて無理でした。
あとは、そうですねぇ、偶然の産物なのですが我が領で採れる林檎は、リラックス作用があるとわかりまして、子供たちに食べるように推奨していたのですが、思い付きで気性の荒い馬に食べさせたら幾分か落ち着いて調教がしやすかったので使えるかなぁと思いました。だから、出発前に食べてもらったのですが、どうですかね、少しは役に立ったのかな?何しろ、気が付いたのは最近で、確証がなくって、私の懐にも一応忍ばせたのですけど、流石に」
レオナルド様は話を聞いていくうちに大きく目を見開き、ルーカスも驚きに口をポカーンと開けている。
どんな表情でも美形の顔が崩れないのはうらやましいです。
零れんばかりに瞳を見開いて驚いていたレオナルド様は、私の大好きな輝くような笑顔を浮かべてソファーから立ち上がり、私の左手は離さないまま、私の前に跪きました。
「ありがとう、クリスティーナ。
君の話を聞いて、君の素晴らしさを再確認したよ」
美しいエメラルドグリーンの瞳を輝かせまっすぐこちらを見て頬むレオナルド様。
ああ、この笑顔がやっぱり好き。
胸がドギドギバグバグします。
この笑顔を見れただけで、今日のご褒美です。
「やっぱり、クリスこそが僕の『唯一』だ。
好きだ・・・愛してるクリスティーナ」
そう言うと跪いたまま左手に口付けをおとした。
ひゃぁぁぁぁぁっ!
なに?なんて言ったの?
いやぁ、待って、なんでそうなったの!!!
可笑しい!可笑しいですよ?
私はモブなのよ?
「ちょっ、まって、だって、前世の話って、信じてくれるの?私の頭が可笑しくなったとか思わないの!!」
あせって、言葉使いが荒くなる。
そうよ、まずはそこからじゃないの?
普通なら、その真偽を確かめるところから話すんじゃない?
「思わない!」
「最初は戸惑ったけど信じてる!」
自信満々に言い放つ2人。
いや、おかしいよ!?
何を信じているの?
大国の未来の王様が、妖しい話をそうホイホイ信じちゃいけません!
「ってか、兄上何をどさくさに紛れて告白してるわけ!」
「ふん!父上も母上も、もうなんだかんだと賛成して下さってるんだ。クリスさえ頷いてくれれば直ぐに父上に貰って婚約申込書を侯爵に渡す準備はで出来てるんだ。侯爵夫人からも許可を貰っている」
何?何?何?
お母様もグルなの?
はぁ?
何が何なの?
「母上からは聞いていたけど、まさか父上も抱きこんだのかよ!
クリス!・・・僕も、ずっと君が好きなんだ・・・僕のことも考えてくれないか?」
横から手が伸びてルーカス様の両手で頬を包み込まれて、正面を向かされルーカス様も何故、愛の告白をするんですか!
はい?
ルーカス様も何故?
どうして?
「レオナルド様もルーカス様もちょっと待って!私のキャパオーバー!!!」
「うん、待つよ。お願いを聞いてくれたらね」
頭を抱えるようにして嫌々と首を振るとレオナルド様が優しく囁く。
「お願い?何よ?」
もう、令嬢クリスティーナの言葉使いは崩壊していた。
「僕のことはレオと呼んで。呼んでくれたら婚約の申し入れを少し待ってあげるよ」
「あっ、僕も僕もルーって呼んで」
さらっと愛称呼びの嘆願ですか?
でも、婚約ってそりゃレオナルド様のことは好きですが私は、普通の地味っ子のモブなんですよ。
メインキャラ並みのキラキラ王子様に釣り合うわけ無いじゃない!!!
もう!折角、悲劇の運命のフラグ折り出来たのに!
「「ねえ、呼んでよ♪」」
甘く囁く王子様2人。
あぁぁぁぁぁ、だからぁ、私はモブなんだってばぁ!
モブが、無駄に出しゃばって頑張ったばっかりに!
わたくしの平凡なモブ生活を返してぇ!!!!
読んでくださりありがとうございます。
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第一章は、これで終了です。
現在、第二章を執筆中につき、暫くお待ちください。
5月には、形になると思います。
よろしくお願いします。




