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一日目

これは俺がこの不思議な世界にやってきた日の出来事である。


爽やかな風と硝煙の匂い。

時折耳をかすめる鋭い音の中で俺は目を覚ました。

ここはどこであろうか?俺は確か、遅くまでやっていたFPSゲームの「DeltaCam」を閉じて自室のベッドに横たわったことが最後の記憶なんだが、どう考えてもここは自室じゃない。

それどころかここは芝生のうえではないか?

それに先ほどから聞こえてくる音は何度もゲーム内で聞いてきた戦場の音そのものだ。


俺はなるべく安全なように眼球だけを動かしてあたりを見回した。

するとまず目に入ったのは、自分のすぐそばに落ちていたSRであった。

これはAWM、精密射撃が可能なSRであり、俺がよく愛用している武器の一つだ。

そして次に見えたのは起伏のある野原と、まばらに見える廃墟たち。


そうして周りを見ている間も銃撃音は止まず、近くの壁に当たった破片が降りかかってくる。

もはや疑う余地もない。ここは現実の戦場で、俺は今まさに集中砲火を受け続けているようだ。

俺は困惑を残しつつも、何度も乗り越えてきた状況であると判断し、取りえず遮蔽物に隠れることにした。


これが現実に近いものであるからなのか、その場で衛生兵を呼ぶことしかできない...ということはなく、思い動きながらも匍匐で射線を切ってようやく少し余裕になった。

冷静さを取り戻すべく、ボディーアーマーのポケットに入っていた双眼鏡で先ほどから弾幕を展開している方向を見てみた。


どうやら敵は四名ほど。

ARを装備した歩兵が2人、

LMGを構えた歩兵が一人、

衛生兵が一人といったところである。

と、夢中になってみていたところ双眼鏡のレンズが光を反射していたのか、先ほどまで多少まばらであった弾幕が纏まったものになって俺の位置へと攻撃をしてきた。


さすがにまずいし、今の状態では反撃もできない。

一旦場所を移して体制を整えようか。


俺はさっき目を覚ました場所へ戻り、AWMを取って移動をした。

攻撃の焦点からは離れたし問題はないだろうと思ったのも束の間。

何かが俺の足元に転がった。


グレネードだ!


想定外のことに俺は固まってしまった。

しかしそこに現れた味方によって俺は少し離れた地面へと転がり、寸前で爆発から逃れた。


「おい大丈夫か!何ボケっとしてんだ死ぬぞ!」

俺を窮地から救った味方(筋肉モリモリマッチョマン)はそう言いながら身を隠すための塹壕へと手招きした。俺は立ち上がってその味方を追おうとしたが立ち上がれなかった。

どうやら先ほどの爆風で飛び散った外殻が俺の右脹脛を貫いたようで、地面には血が流れだしていた。


アドレナリンが出ているようで、痛みは全く感じられないが見てしまった以上動けなくなってしまったな。どうするか...緊急治療キットもないし...まずいな。


俺はここにきて本格的に命の危険を感じていた。

だがこの後に起きた事は今日体験した数々の驚きの中でも1,2を争うものであった。

突如、動けずに横たわったままの俺のもとに、スモークが炊かれ、緑色の光を放つ小型ドローンの大群が現れた。


まさかこれは...回復ドローンってやつか⁉

ここまでかなり現実でもあり得そうな世界観だったのに、こいつはまさに最近使い始めていた衛生兵のスキルそのもの...これは、いよいよ別の世界にやってきたんだと思った方がいいな。


そう考えているうちに致命傷になりえた先程の怪我は跡形もなく消え、痛みも残さなかった。

俺はスモークの消えゆかないうちに塹壕へと滑り込み、改めて装備の確認をした。


メインウェポンはAWM。

残マガジンは15発。

装填済みのものが残り2発で合わせて17発。

サブウェポン、デザートイーグルは残マガジン0で装填済みが5発。

とりあえず少し場所を移動して遮蔽物から機関銃士を撃つか…。

だがどこにそんな都合のいい場所があることやら。そうだ!あれがあるではないか!

SRを持っている偵察兵といえば俺が知る限りただ一人はドローンを飛ばせる。


俺は思い立ち、塹壕の中でも特に安全な、本部を求めて移動を開始した。


自軍の塹壕とはいえここは戦場。

システムも現実味がないことから、敵が突撃してくる可能性も高い。

俺はサブウェポンを構えて慎重に歩いた。


警戒をしつつ移動して3分ほどたった頃だろうか、塹壕の角にて簡単なクリアリングを行おうと覗き込んだところ、俺の耳の傍を何かが駆け抜ける音がした。


敵だ。


俺は生存率を上げるため、EMPグレネードを投げ込んだ。2秒後、呻き声が聞こえる。

俺は突撃し、一気に敵の頭部に2発撃ち込み制圧した。念の為、もう1発脳幹目掛けて撃ち込み、先に進んだ。


残弾数は2発、このまま接敵すればSRをショットガンみたく使う必要がありそうだとか思っていたところ、俺の射撃に駆けつけた味方が前方からやってきたことで一息をつけた。


「大丈夫か!…クソ、敵共め塹壕まで入り込んでくるとはな。ありがとう、お前のおかげで惨事を防げたようだ。この先に陣営の本部があるが来るか?」


と、後ろを指さしながら問いかけられた。

もしやと思ったが、本部があるならありがたい。俺は引き続き警戒をしつつ味方について行った。


ーーー✝


そこはかなりの広さで、場所は塹壕の中でも一際低い位置にあり、防御も硬い場所のようであった。

俺は先程の味方に声をかけ、偵察ドローンを飛ばす間の警戒を任せることにした。


ドローン。と言っても俺は飛ばしたことがなく、精々がキーマウでの簡易的な物のみであったのだが、なんとまぁ不思議なことにそのドローンを飛ばした瞬間俺の視点はドローンに同期され、意識した方への移動が可能であった。

しかもバッテリーはかなり優秀で、広範囲を偵察することができた。


どうやらここは廃墟と化した神殿を中心に戦線が張られているらしく、至る所に意匠の込められた柱が転がっていた。

また、石造りの家の跡がそこらにあり、中でも敵味方が密集して見える部分があったのだが、見覚えのある景色からどうやらそこが目を覚ましたところのようであるとわかった。


さすがに先程のスモークは消えたようであったが、未だ敵の弾幕は途切れず、自陣側では時折被弾して衛生兵に回復を求める姿も写った。


そうして偵察を続けること2分後、俺は遮蔽物がありなおかつ戦いやすそうな高台を見つけた。そこは丁度多数いる敵の機関銃士を叩ける場所のようであった。

俺はそこに行くことにしたが、ひとつ忘れてはならない事がある。


このドローンは元より偵察を目的としているが、EMPグレネードを内蔵していることを忘れてはならない。

俺は囮目的and敵の電子装備を破壊し孤立させるため、その高台と反対方向へと移動して敵陣地に自爆突撃をした。


爆発の寸前で視界は途絶え、先程の本部へと戻った。


俺は偵察で得た情報を伝え、高台へ移動する前にサブウェポンの弾薬を補給し、一人衛生兵を連れて走り出した。


先程は塹壕内に敵が現れたが、あのような者は1人のみだったようでその後の偵察には映らなかった為、堂々と走れたのだ。

さらには衛生兵に一直線のスモークを炊いてもらい、それを遮蔽に駆け出した。


そして移動をすること5分。高台へとたどり着いた俺と衛生兵はそこに伏せ、弾薬箱を設置してもらい別れることにした。


「助かった。幸運を祈る」

そう告げ、俺は見覚えがあるその弾薬箱を見つめた。


この世界は本当に不思議だ。

前世でプレイしていたゲーム、「DeltaCam」と同じ仕様になっていて、半径1.5mの円を囲む緑の円にいる間は常に体が癒され弾薬も無限ではないが補給されるという仕組みだ。


そうしてSRにとっては無限に近い力を得た俺はバイポッドを立ててスコープを覗き込み、倍率を12倍に上げ、弾道計算機で表示された点の通りに機関銃士の頭部へ打ち込んだ。

距離は500m。


マズル初速750m/sを誇る弾頭はいとも容易くヘッドショットを決めた。

血飛沫が飛び、倒れ伏す姿はグロテスクであったが、アドレナリンからか全くもって何も感じさせなかった。


それと、SRなのにサポートも居らず一発で当てられたのは恐くゲーム的な補正と言うものであろう。

息付く暇もなく、俺はその隣に居た衛生兵を1人、突撃兵を2人処理して遮蔽物に隠れ、リロードを行った。


耳を澄ませると厄介な敵兵が倒れたことで前線が大きく進み、敵が少し後方へと撤退したことがわかった。


ここでようやく一息、二息。

俺がそばの岩のもたれかかっていると、先程の衛生兵が現れた。

話を聞くと、名を「jack」と言うらしいことが分かった。


周囲の危険度が下がった事で俺たちは一旦休憩を挟んだ。

防弾チョッキに入れていた補給物資の中からコーヒーのスティック粉末を取り出し、jackと自分の2人分の湯を沸かした。


そのコーヒーは香りが強く、しかし味はさっぱりとしておりアメリカンに近いものを感じた。何よりそのコーヒー、戦場での気付け用なのかカフェインが強烈で、一口でアドレナリンが溢れ出してくるやばいものであった。

美味いんだがね。


話の中で、jackは移動しなくていいのか?と俺に聞いてきたことがあった。


「戦線は進んだが、奏は行かなくていいのか?」

「心配ないさ。ふむ...距離は1000mならば問題なく俺の射程圏内さ。」

「信じがたいが,,,頼もしいな。てことはしばらくここから支援するってことでいいのか?まぁ必要ないとは思うが俺はこの辺でできることをやっておくよ。コーヒーありがとな」


といった会話を経たのち、俺らは単独行動を開始した。

ところで、俺には一つ自信を持てることがある。

前世でSRを使っていたころ、最適射程160mに対し642mのヘッドショット記録がある。約4倍だ。

だが恐らく、この世界ではその記録が大幅に伸びていると考えられる。


どんなゲームでも普通はARの射程は20~50m程度と設定されているが、フィールドに限りの無いここではその数値は現実に近い200~300mが有効射程と考えて差し支えないはずだ。


この世界のSRの実用射程が500m程度なら――最低でも2000m以内は問題なく当てられるはずである。


それからしばらくして、俺は再び遮蔽物の隙間から銃身を露出させ、遠くの方で自軍と交戦している敵兵を捉えた。

驚くことに、これほどまで離れていても関係なく一人、また一人と敵を倒し、その日は日が沈む時まで支援の手を緩めず戦った結果、大きく占領地を広げ勝利をしたようだった。


さすがに有効射程が遥かに長いとはいえ、敵が何キロも先に行ってしまっては無駄な消費も増えると考え、夕暮れごろにはサブウェポンで敵地へと突撃し、味方の支援を行った。


と、言うのが俺の転生後最初の戦いであった。

なかなかぶっ飛んだ話であることは俺もわかってはいるが、そこは転生者の補正というものか、それともゲームでの知識と経験が役立ったのか。定かではないが現実の話であるのだ。


因みにキル数は、45程度。

現実的に考えれば大した戦果かもしれないが、ヘッドショットのみが確殺でそれ以外のダウン状態、けがを負ったぐらいでは衛生兵が無傷にしてしまうのだから、あまりおかしな話でもないだろう。

疲れからか後半は命中率が下がってしまったが、けがを負わせることで士気を下げてやるぐらいのことはできたと思う。


それにしても、人を殺したというのに心が揺らがないのは変な話だ。

少し恐ろしくもある。確かに未だ夢でも見ていてここは本当にゲームの中の話に過ぎ無いのではと考えているがそれにしてもだ。


まぁ、まだまだこの世界についてはシステムの不明点もあるが、また暇があればこうして日記にしていこうと思う。

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