66# 霞む月、煌々と輝く月
「イカー!タコー!このタコー!エビいたー!」
ジャンセンに言われて仕方なく入江に来たディアーナは、剣を振り回しながらイカやタコの魔獣とじゃれているレオンハルトを見ている。
その手には、既に息絶えた大きなイカとタコを握りしめ。
「レオンハルト様、明日のご飯は手に入れましたんで、バーンと終わらせて下さい!」
「ば、バーンと!?それ、すっげ魔力消費して浄化しろって意味だよね!?俺、砕けちまうんだけど!」
「ヒットポイント1、位で何とか耐えて下さい!」
「無茶言うなー!!」
夜が明けかけ空が白んで来る頃、入江の近くの柔らかな草地にディアーナは座っていた。
膝の上には眠るレオンハルトの頭を乗せ、その髪を撫でている。
ディアーナに言われて、バーンと浄化魔法を使ったレオンハルトは、バーンと直立不動のまま倒れた。
幸い、砕け散る事は無かったが、レオンハルトの身体の亀裂はやや深くなっている。
浄化魔法の力加減を間違えれば、本当に砕け散っていたかも知れない。
「ディアーナ……」
ディアーナに膝枕をされていたレオンハルトが薄く目を開く。
「お帰りなさい、レオン…。」
「夢…?」
「夢じゃないわ。」
「ディアーナ…なんで、裸…」
「あなたと、同じ時をいつまでも一緒に過ごしたいから。もう先に逝くのも、砕け散られるのもゴメンですもの。」
生まれたままの姿のディアーナは美しかった。
まだ昇りきっていない太陽に海岸線が白く縁取られ、空の月は白く霞んでいる。
「俺の月は…ここに居る…ディアーナ…愛している。」
ディアーナの頬を撫で、指先に藍色の髪を絡める。
「あなたは、私の太陽ね…レオン」
クスクスと笑って、ディアーナはレオンハルトに身体を預ける。
二人が心も身体も重なりひとつとなった刻。
二人は白い白い世界に居た。




