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24話 ジェットコースターを動かしてみよう

二つ目のアトラクション、ジェットコースターの形ができました。

でも、まだレールと車両ができただけ。

今度は、この世界の魔法を使って実際に動かしてみます。

 俺は、レールの上に載せた小さな車両の前へしゃがみ込んだ。


 昨日まで何もなかった場所には、ラグナ樫で組み上げた支柱が並び、その上を二本のレールが一周するように伸びている。


 乗り場から始まり、緩やかな坂を上る。


 小さな頂上を越えれば下り坂になり、その先で大きく曲がって、再び乗り場の近くへ戻ってくる。


 そして今、そのレールの上には一人が乗れるくらいの簡素な車両がある。


 見た目だけなら、それなりにジェットコースターらしくなった。


 ただし――。


「こいつ、まだ自分じゃ走れないんだよな」


 車両を軽く押す。


 ゴロゴロと木製の車輪が音を立て、レールの上を進んでいく。


 平らなところなら問題ない。


 昨日もそこまでは確認した。


 けれど、そのまま押して最初の坂へ差しかかると、当然ながら速度が落ちていく。


 途中で手を離せば、車両は止まり、そのまま後ろへ戻ろうとした。


「おっと」


 慌てて押さえる。


「まあ、そうなるよな」


 昨日は、ここをどうやって上らせるか考えた。


 元の世界にあったジェットコースターなら、チェーンなんかを使って車両を頂上まで引き上げるものがある。


 最初は俺も、それを真似しようとした。


 歯車を作って、鎖を作って、それを魔石の力で動かして――。


 でも、そこまで考えたところで気づいた。


 ここには魔法がある。


 わざわざ俺が詳しくもない仕組みを、そのまま再現する必要はない。


「使えるところは魔法を使えばいい」


 だからといって、車両そのものを浮かせて飛ばすつもりはない。


 俺が作りたいのはジェットコースターだ。


 車輪でレールの上を走り、坂を上って、頂上から下る。


 そこは残したい。


「問題は、最初の坂だけだな」


 昨日は、レールへ魔力を流して車両を動かす方法も考えた。


 けれど、改めて実物を見ながら考えてみると、それよりもっと単純な方法がある。


 俺が動かしたいのはレールじゃない。


 車両だ。


「だったら……」


 俺は車両の後ろを見る。


「魔石も車両に積めばいいんじゃないか?」


 メリーゴーランドは、その場から動かない。


 だから少し離れた操作盤に魔石を入れて、そこから中央部分まで魔力を送った。


 でも、ジェットコースターは車両そのものが移動する。


 だったら、魔力を供給する魔石も一緒に動かしてしまえばいい。


「よし。試してみるか」


 まだ専用の魔石は買っていない。


 本当に使えるかも分からないのに、いきなり新しいものを買う必要はないだろう。


 俺はメリーゴーランドの操作盤へ向かった。


 後ろの蓋を開け、中に固定してある魔石を取り外す。


「ちょっと借りるぞ」


 昨日完成したばかりのメリーゴーランドに断ってから、ジェットコースターへ戻った。


 まずは、魔石を載せる場所だ。


 そのまま座席へ置いたら、走っている途中で転がるかもしれない。


 俺は余っていたラグナ樫を【無限収納】から取り出し、【錬金術】で加工する。


 それを車両の後ろ側へ組み込み、魔石がぴったり収まる小さな箱を作った。


 魔石を入れて蓋を閉じる。


 車両を何度か揺らしてみる。


「大丈夫そうだな」


 次は、この魔石から車輪へ魔力を送る。


 メリーゴーランドで使った方法と同じだ。


 魔力を通したいところに、そのための道を作る。


 車両の内部へ細いラグナ樫の部材を通し、魔石を収めた箱から車輪の軸まで繋いでいく。


 そして、その部材へ【付与魔法】を使った。


「魔力が、ここを通って……こっちまで」


 魔石から出た魔力が部材を通り、車輪へ届く。


 何度もやっているから、最初に試したときよりずっとイメージしやすい。


 続いて、車輪へ手を触れた。


「魔力が流れている間だけ、前へ回る」


 車体そのものを押すんじゃない。


 車輪を回す。


 回った車輪がレールを蹴ることで、車両が前へ進む。


「【付与魔法】」


 淡い光が車輪へ広がる。


 一つだけではない。


 車両を進ませるために必要な車輪へ、同じ効果を付与していく。


 全部終わったところで、俺は一度車両を平らな場所へ戻した。


「さて……」


 今は魔石と車輪の間を、まだ完全には繋いでいない。


 実験だから、俺が最後の部分を手で接触させる。


「動いてくれよ」


 二つの部材を触れさせた。


 魔石から魔力が流れる。


 次の瞬間。


 ゴロッ。


「お」


 車輪が回った。


 そのまま部材を接触させていると、車両がゆっくり前へ進み始める。


 ゴロゴロ……。


「動いた!」


 俺は車両の横を歩きながら、車輪を見る。


 ちゃんと回っている。


 車体そのものを魔法で前へ押しているわけじゃない。


 魔石の魔力で車輪が回り、その力でレールの上を進んでいる。


「だったら……」


 いったん接触を切る。


 車輪の回転が止まり、車両も少し進んでから停止した。


 俺は車両を乗り場へ戻した。


「次は坂だな」


 もう一度、魔力の道を繋ぐ。


 車輪が回る。


 車両が進み始め、そのまま上り坂へ入った。


 平らなところより明らかに遅くなる。


「行け……」


 ゴロ……ゴロ……。


 それでも、止まらない。


 少しずつではあるけれど、車両は自分の車輪で坂を上っていく。


「おお……!」


 思わず笑みが浮かぶ。


「上れる!」


 昨日はチェーンを作ることばかり考えていた。


 でも、この方法なら車両そのものに坂を上らせられる。


 ただ――。


「…………」


 俺は車両の横を歩きながら、魔力を繋いでいる部分を見る。


 今は俺が手で押さえている。


「これじゃ意味ないな」


 手を離せば魔力が途切れる。


 かといって、ずっと接触させたまま固定すれば、今度は車輪が回り続ける。


 頂上を越えてからも、魔石の力で走ることになる。


 それでは、俺が作りたいジェットコースターとは違う。


「最初の坂だけ動けばいいんだよな」


 車両を乗り場へ戻す。


 そして、車両の内部を眺めながら考えた。


 必要なのは二つ。


 乗り場で魔力を繋ぐ。


 頂上で魔力を切る。


「……だったら」


 メリーゴーランドの操作盤で作った仕組みを思い出す。


 二つの部材を接触させれば魔力が流れる。


 離せば止まる。


 なら、同じことを車両の中でやればいい。


 俺は車両の後ろ側へ、小さな接続部分を作った。


 普段は二つの部材が離れている。


 そこへ小さな木製の留め具を押し込むと、片方の部材が動いて接触し、その位置で固定される。


「これで繋がる」


 留め具を外す。


 部材が元へ戻り、接触が切れる。


「うん」


 あとは、乗り場でこれを押し込み、頂上で外せればいい。


 まずは乗り場からだ。


 メリーゴーランドのものよりずっと簡単な、小さな操作盤を作る。


 レバーを倒すと、乗り場に止まっている車両の留め具を押し込む。


 それだけの仕組みだ。


 魔力を送る必要すらない。


 ただ、レバーの動きを木製の部材で車両まで伝えているだけ。


「これなら……」


 車両を停車位置へ置く。


 俺は操作盤の前へ立った。


「いくぞ」


 レバーを倒す。


 カチッ。


 伸びた部材が車両の留め具を押した。


 車両の中で、離れていた魔力の道が繋がる。


 直後。


 ゴロゴロ……。


「おお!」


 車両が動き始めた。


 レバーから手を離しても止まらない。


 車両の中では接続部分が固定されているからだ。


 そのまま乗り場を離れ、坂へ入っていく。


「発車はこれでいいな」


 問題は、頂上だ。


 俺は車両を止めて乗り場まで戻すと、今度は坂の頂上へ向かった。


 車両が頂上を越える少し手前。


 そこへ、レールの横から小さな棒が出るようにする。


「車両がここを通ったら……」


 車両側にも、留め具を外すための小さな突起を作った。


 坂を上ってきた車両がこの場所を通る。


 そのとき、レール脇に固定した棒と車両の突起が触れる。


 その力で留め具が外れる。


 留め具が外れれば、魔石と車輪を繋いでいる部材が離れる。


「魔力が切れる」


 単純だ。


 魔石が何かを判断するわけじゃない。


 車両が通ったときに、物理的に接続を外すだけ。


「これなら俺にも分かる」


 俺は何度か手で車両を動かし、接触する位置を調整した。


 一度目は棒が短すぎて、突起に触れなかった。


「もうちょっとこっちか」


 位置を変える。


 二度目。


 今度は触れたけれど、留め具が外れなかった。


「力が逃げてるな……」


 棒の角度を変える。


 三度目。


 カチッ。


「あ」


 留め具が外れた。


 車両の中で、魔力の道が切れる。


「よし!」


 俺は車両を乗り場へ戻した。


 今度こそ、本当に走らせてみる。


 操作盤の前に立つ。


「頼むぞ……」


 レバーを倒した。


 カチッ。


 車両の中で魔力の道が繋がる。


 車輪が回り始めた。


 ゴロゴロと音を立てながら、ゆっくり乗り場を離れていく。


 そのまま上り坂へ。


 速度は落ちる。


 それでも車両は止まらない。


 少しずつ、少しずつ上っていく。


「行け……」


 頂上が近づく。


 車両の突起が、レール脇に作った棒へ近づいていく。


 そして――。


 カチッ。


「!」


 留め具が外れた。


 車輪を回していた力が消える。


 でも、車両はすぐには止まらない。


 それまで上ってきた勢いが残っている。


 ゆっくりと頂上を越え――。


 車体が前へ傾いた。


 次の瞬間。


 ゴロゴロゴロゴロ――!


「うおっ!」


 一気に加速した。


 さっきまでとはまるで違う。


 魔石の力でゆっくり進んでいた車両が、坂を下ることで一気に速度を上げていく。


「これだよ!」


 思わず声が出る。


 今、車輪を動かす魔力は流れていない。


 坂を下った勢いだけで、車両はレールの上を走っている。


 下り坂を抜け、そのまま大きなカーブへ。


 ゴロゴロゴロ――!


「外れるなよ……!」


 思っていたより速い。


 車体も少し揺れている。


 それでも、レールを挟み込むように作った車輪は外れず、そのままカーブを抜けた。


「よし!」


 車両は後半へ入る。


 少しずつ速度が落ちていく。


 それでも進む。


「そのまま……」


 乗り場が近づく。


 あと少し。


 あと――。


 ゴロ……。


「……あ」


 ゴロ……。


 車両が止まった。


「…………」


 乗り場まで、あと少し。


「惜しい……!」


 俺は止まった車両のところまで歩いた。


 押してみる。


 ほんの少し進めば、乗り場へ着く。


「ここまで来たなら、最後だけ魔法で動かせば……」


 そこまで言って、首を横に振る。


「いや、それは違うな」


 途中で勢いが足りなくなるたびに魔力で進ませるなら、坂を下る意味が薄くなる。


 ジェットコースターなら、最初に得た高さと勢いで走り切ってほしい。


「だったら、コースの方を直す」


 俺は一周歩いてみた。


 最初の頂上。


 下り坂。


 大きなカーブ。


 後半。


 実際に走らせたことで、どこで大きく速度が落ちていたのかもなんとなく分かる。


「頂上を少し高くして……」


 それからカーブを少し緩やかにする。


 後半にあるわずかな上りも、できるだけ小さくする。


「このくらいか?」


 修正後の形を頭の中で思い描く。


「【建築】」


 魔力を流す。


 支柱とレールの一部が組み直されていく。


 頂上が少し高くなり、カーブの形も変わった。


 普通なら、一度作ったコースをこんなふうに何度も直すのは大変なんだろう。


 でも、【建築】がある俺なら試しながら変えていける。


「よし。もう一回」


 車両を乗り場へ戻した。


 レバーを倒す。


 発車。


 坂を上る。


 頂上手前で、カチッと留め具が外れる。


 魔力が切れる。


 そして――。


 ゴロゴロゴロゴロ――!


 下る。


 さっきより速い。


 カーブへ入る。


「……!」


 車体が揺れる。


 俺は思わず息を止めた。


 でも、外れない。


 そのままカーブを抜ける。


 後半へ。


「行け、行け……!」


 さっき止まった場所が近づく。


 車両は――。


 通過した。


「おお!」


 まだ進んでいる。


 乗り場が近づく。


「来た!」


 車両が戻ってくる。


 そのまま乗り場へ入り――。


 俺の前を通過した。


「…………」


 一瞬、固まる。


「待て待て待て!」


 慌てて車両を追いかける。


 乗り場へ戻ってくるようにはなった。


 でも、止まらない。


 当然だ。


 乗り場まで勢いが残るようにコースを直したんだから、勝手にそこで停止するはずがない。


 車両は乗り場を通り過ぎ、次の上り坂へ入ったところで急速に速度を失った。


 少し上ったところで止まり、今度は後ろへ戻ろうとする。


「うわっ!」


 俺は慌てて車両を押さえた。


「危な……」


 もし人が乗っていたら笑い事じゃない。


「乗り場まで戻るだけじゃ駄目だ。ちゃんと止めないと」


 車両を乗り場へ戻す。


 さて、どうするか。


 メリーゴーランドは、魔力を切れば少しずつ速度が落ちた。


 でも、今の車両にはそもそも魔力が流れていない。


 坂を下った勢いで走っている。


「なら、普通にブレーキを作るしかないか」


 俺は車輪を見る。


 元の世界の自転車を思い出した。


 車輪へ何かを押し当てて、回転を抑える。


 正確に同じものを作る必要はない。


 要するに、車輪へ抵抗をかけられればいい。


「でも、乗ってる人が操作するのは違うよな」


 遊園地の乗り物なんだから、乗客に止めてもらうわけにはいかない。


 乗り場へ戻ってきたら、自動でブレーキがかかるようにしたい。


「……さっきと同じでいいのか」


 頂上では、車両が通ったことで棒が押され、魔力の接続を切った。


 なら、乗り場でも車両が通ることで何かを動かせばいい。


 俺は乗り場の少し手前へしゃがみ込んだ。


 ここから停車位置まで、ある程度距離がある。


 いきなり止めるんじゃなく、ここから少しずつ速度を落とす。


「車両がここへ来たら……」


 レールの横に、小さな突起を作る。


 車両の下にも、それに触れる部材を追加した。


 車両がここを通ると、その部材が押される。


 すると車両に取り付けた木製のブレーキが、車輪へ触れる。


「こんな感じか?」


 手で車両を押してみる。


 突起へ触れた。


 ブレーキが動く。


 車輪へ押し当てられる。


 ガッ。


 車両が急に止まった。


「うおっ」


 手を離す。


「……駄目だな」


 これでは急すぎる。


 人が乗っていたら、身体が前へ投げ出される。


「もっとゆっくり……」


 ブレーキが一気に車輪へ押し付けられないよう、部材の形を変える。


 車両が進むにつれて、少しずつ押し込まれていくようにする。


 もう一度。


 車両を手で押す。


 ゴロゴロゴロ……。


 突起へ触れる。


 ブレーキが少しだけ車輪へ当たる。


 さらに進む。


 押し込まれる。


 抵抗が強くなる。


 ゴロゴロ……。


 ゴロ……。


「お」


 止まった。


 さっきよりずっと緩やかだ。


「これなら……」


 とはいえ、手で押した速度と実際にコースを走って戻ってきた速度は違う。


 走らせて確かめるしかない。


「何回目だろうな」


 車両を乗り場へ戻す。


 でも、不思議と面倒には思わなかった。


 一つ問題が見つかる。


 直す。


 また走らせる。


 別の問題が見つかる。


 また直す。


 そうやって少しずつ、自分が知っているジェットコースターへ近づいていく。


「よし」


 操作盤の前へ立つ。


 レバーを倒した。


 カチッ。


 車両が発車する。


 ゴロゴロと車輪を回しながら、ゆっくり坂を上っていく。


 頂上の少し手前。


 カチッ。


 留め具が外れる。


 魔力が切れる。


 車両はそのまま頂上を越えた。


 そして――。


 ゴロゴロゴロゴロ――!


 一気に下る。


 カーブへ入る。


 抜ける。


 後半へ。


 速度を残したまま、乗り場へ近づいてくる。


「来た……」


 俺は車両を見つめる。


 ブレーキを作った場所へ入った。


 車両側の部材が突起へ触れる。


 ゴロゴロゴロ――。


 ブレーキが車輪へ触れた。


 速度が少し落ちる。


 さらに進む。


 ブレーキが強くなる。


 ゴロゴロ……。


「いいぞ……」


 まだ急には止まらない。


 少しずつ。


 少しずつ速度を落としながら、車両が乗り場へ入ってくる。


 ゴロ……。


 ゴロ……。


 そして。


 止まった。


「…………」


 俺はしばらく、動かなくなった車両を見つめていた。


 乗り場の、ほとんど狙った場所だ。


「戻ってきた……」


 操作盤から発車した。


 自分の車輪で最初の坂を上った。


 頂上で魔力が切れた。


 そこからは坂を下った勢いだけでレールを走った。


 大きなカーブを抜け、一周して乗り場へ戻ってきた。


 そして最後は、ちゃんと速度を落として止まった。


「……ジェットコースターだ」


 昨日も同じことを言った。


 でも、あのときはまだレールと車両があるだけだった。


 今は違う。


 目の前の車両は、本当にこのコースを一周して戻ってきた。


「できた……!」


 嬉しくなって、思わず車両へ近づく。


 けれど、すぐに足を止めた。


「……いや。まだだな」


 メリーゴーランドのときと同じだ。


 一度動いたからといって、それで人を乗せていいわけじゃない。


 今走ったのは、何も載せていない空の車両だ。


 人一人分の重さが加われば、坂を上るときの動きも変わる。


 下る速度だって変わるかもしれない。


 カーブで車輪やレールにかかる力も大きくなる。


 止まるまでの距離だって、今とは違うはずだ。


「それに……」


 座席を見る。


 今は、本当に座る場所があるだけ。


「これじゃ人は乗せられないな」


 走っている途中で身体が浮いたり、カーブで横へ振られたりすることを考えれば、身体を支えるものが必要だ。


 安全バー。


 それも作らなければならない。


 車輪やレールの強度も、もっと確認した方がいい。


 何度も走らせて、どこかが緩んだり削れたりしないかも見たい。


「やること、まだあるな」


 それでも。


 俺は少し離れたところまで歩き、改めて予定地を見渡した。


 草原の中にメリーゴーランドがある。


 その少し離れた場所には、小さいながらも木製のジェットコースターがある。


 少し前までは、本当に何もなかった。


 それが今は、二つのアトラクションが並んでいる。


 片方は完成した。


 もう片方も、自分で一周できるところまで来た。


「……遊園地っぽくなってきたな」


 まだまだ寂しい。


 道もない。


 入口もない。


 店もない。


 アトラクションだって二つしかない。


 それでも、最初にここへ来たときとは全然違う。


「二つ目も、あと少しだな」


 俺は乗り場に止まっている車両を見る。


「……早く乗ってみたい」


 坂を下ったときの速度を見たら、余計にそう思ってしまう。


 小さいとはいえ、ちゃんと楽しそうだった。


 でも、今すぐ乗るつもりはない。


 重りを載せて走らせる。


 何度も繰り返す。


 安全バーを作る。


 問題があれば直す。


 それを全部やってからだ。


「最初の客は俺なんだから、ちゃんと帰ってこられるようにしないとな」


 そう言って、俺は小さく笑った。


 乗った人が楽しめること。


 そして、無事に降りてこられること。


 その両方ができて、初めてアトラクションだ。


 俺はもう一度、完成に近づいた小さなジェットコースターを眺めた。

ご覧いただきありがとうございます!


ジェットコースターが、ついに一周しました!

車両に魔石を積み、操作盤から発車。

頂上から先は魔法で押すのではなく、坂を下った勢いで走る仕組みになりました。

とはいえ、まだ走ったのは空の車両だけ。

実際に人を乗せる前に、重りを使った試験や安全面の確認が必要です。

次回も楽しんでいただけたら嬉しいです!

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