23話 次はジェットコースターを作ろう
最初のアトラクション、メリーゴーランドがひとまず完成!
でも、一つだけではまだ遊園地とは呼べません。
次に作るアトラクションを考えてみます。
翌朝。
朝食を済ませた俺は、いつものようにリーベルの北門を抜け、遊園地予定地へ向かって歩いていた。
昨日、ようやく最初のアトラクションであるメリーゴーランドが完成した。
完成した、と言っても、俺が日本で見てきたものと比べればかなり簡素だ。
屋根はない。
華やかな装飾もない。
音楽も流れないし、木馬も上下せず、円形の床と一緒に回るだけ。
【鑑定】した結果だって、いまだに【簡易メリーゴーランド】のままだ。
それでも、魔石から供給された魔力で動き、操作盤のレバーを使えば、俺が直接魔力を流さなくても動かしたり止めたりできるようになった。
最初は人の手で押さなければ回らなかったことを考えれば、大きな進歩だ。
「次はどうするかな……」
歩きながら、二つ目のアトラクションについて考える。
メリーゴーランドが完成したこと自体は嬉しい。
でも、昨日帰る前に予定地全体を眺めて、改めて思ったのだ。
広い草原の中に、メリーゴーランドが一基だけ。
どう見ても遊園地ではない。
「やっぱり、あと二つくらいは欲しいよな」
三種類くらいのアトラクションが並べば、少しは遊園地らしく見えてくるはずだ。
もちろん、それで完成というわけじゃない。
入口も必要だし、園内を歩くための道も欲しい。
休憩する場所や、食べ物を売る店だって、いずれは作りたい。
それに、遊園地なんだからアトラクションは多い方がいい。
考え始めれば、やることはいくらでも出てくる。
「まあ、一つずつだな」
最初のメリーゴーランドだって、一日で完成したわけじゃない。
形を作って。
動かし方を考えて。
魔石を買って。
操作盤を作って。
重りを載せて何度も試した。
だったら、二つ目も同じように作っていけばいい。
そんなことを考えながら歩いていると、やがて見慣れてきた土地が見えてきた。
草を刈り、地面を整えた一角。
そこに、昨日完成させたメリーゴーランドが建っている。
俺はそのまま近くまで歩いていった。
「…………」
昨日と変わらない。
当然だけど、今日もぽつんとしている。
「やっぱり寂しいな」
昨日は完成したことが嬉しくて、それだけでも随分と遊園地へ近づいたように思えた。
でも、一晩経って改めて見ると、広い土地に遊具が一つ置いてあるだけだ。
「よし。二つ目、考えるか」
俺はメリーゴーランドの近くに腰を下ろすと、【無限収納】からスマホを取り出した。
電源を入れ、保存してある写真を開く。
この世界へ来てから何度も見ているけど、遊園地を作るうえではかなり貴重な資料だ。
画面を指で送りながら、今の俺でも作れそうなものを探していく。
「コーヒーカップか……」
円形の床の上に、いくつものカップが並んでいる。
床そのものが回り、その上でカップも回る。
メリーゴーランドと同じ回転系だから、今まで作った仕組みを応用できそうだ。
「これは候補だな」
今なら、少なくとも床を回すところまではそれほど苦労せずに作れる気がする。
問題は、それぞれのカップをどう回すかだけど、それも魔石や【付与魔法】を使えば何か方法がありそうだ。
覚えておくことにして、次の写真へ移る。
「観覧車……」
巨大な円形の骨組み。
その外周には、いくつものゴンドラが取り付けられている。
遊園地らしさという意味なら、かなりいい。
遠くからでも見えるし、これが一つあるだけで予定地の印象は大きく変わるだろう。
ただ――。
「これは、まだ怖いな」
作れるかどうかだけなら、もしかしたら作れるのかもしれない。
俺には【建築】がある。
必要な材料を揃え、構造を理解して、形をしっかり思い描ければ、それを組み上げる助けにはなる。
でも、作れることと、安全に人を乗せられることは別だ。
観覧車は、人をかなり高いところまで運ぶ。
もし途中で止まったら?
ゴンドラの取り付け方に問題があったら?
強い風が吹いたら?
「……やめとこう」
今の俺が作るには早い。
もう少しアトラクションを作ることに慣れてから考えた方がいい。
そうして画面を送っていき――。
俺の指が止まった。
「……ジェットコースター」
写真に写っているのは、何度も乗ったことのあるジェットコースターだった。
高く伸びたレール。
その上を走る車両。
ゆっくりと坂を上り、頂上を越えたところから一気に下っていく。
写真を見ているだけで、乗ったときの感覚を思い出す。
坂を上っていくときの緊張。
頂上へ近づくほど広がっていく景色。
そして、落ちる直前の一瞬。
そこから一気に加速していく感覚。
「……作りたいな」
遊園地を作ろうと決めたときから、いつか絶対に作りたいと思っていた。
ただ、写真に写っているものをそのまま作るのは無理だ。
いや。
【建築】を使えば、形だけなら作れる可能性はある。
でも、作れるからといって作っていいわけじゃない。
何十メートルもあるような巨大なジェットコースターを、二つ目のアトラクションとして作るなんて怖すぎる。
「もっと小さくすればいいんだよな」
そこで思い出した。
日本にいた頃、ネットで見たことがある。
高校の文化祭で作られた、小さな手作りのジェットコースターだ。
本物の遊園地にあるものとは規模がまるで違った。
高さも低い。
コースも短い。
乗れる人数も少ない。
それでも、人を乗せた車両がレールの上を走るという意味では、ちゃんとジェットコースターだった。
「そうだよ。別に最初からこんなの作らなくていいんだ」
スマホの写真を見ながら、自分が作れそうな大きさを考える。
一度に乗るのは、一人か二人。
高さも数メートル程度。
最初から急降下させる必要もない。
激しいカーブもいらない。
乗り場から出発して。
緩やかな坂を上って。
小さな頂上を越える。
そこから下り、大きく曲がって乗り場へ戻ってくる。
「…………」
頭の中で、小さなコースを走る車両を想像する。
「……いけるかも」
そう思った瞬間、さっきまでコーヒーカップと迷っていた気持ちはほとんど消えていた。
作ってみたい。
「よし」
俺は立ち上がり、スマホを持ったまま予定地の中を歩き始めた。
メリーゴーランドから少し離れた場所で立ち止まる。
「この辺かな」
周囲には何もない。
まだ土地には十分すぎるほど余裕がある。
俺は【無限収納】から木の棒を一本取り出すと、地面に大まかな線を描いていった。
「ここから出発して……」
最初は低い位置を真っ直ぐ進む。
そこから緩やかに上る。
「頂上は……この辺か」
あまり高くしすぎない。
俺の身長よりは高くなるけど、巨大なものにする必要はない。
そこから下る。
ただし、いきなり急降下させるのはやめる。
最初は緩めの坂でいい。
下った先で大きく曲がる。
そして、最初の場所へ戻ってくる。
「……こんな感じかな」
一度離れて、地面に描いた線を見る。
「…………」
少し違う。
カーブがきつすぎる気がする。
棒で線を消し、もう一度描き直す。
今度は少し大きく回るようにする。
「こっちの方がいいな」
何度か描き直しながら、少しずつ形を決めていった。
細かい設計図なんて描けない。
専門的な計算もできない。
それでも、俺はジェットコースターを何度も見たことがあるし、乗ったこともある。
気になって仕組みを調べたこともあった。
だから、少なくともどんな形をしているのかは分かる。
そして【建築】は、俺が理解していないものを勝手に完成させてくれる能力じゃない。
メリーゴーランドのときだって、俺が形や構造を考え、その通りに材料を組み上げるために使った。
今回も同じだ。
「まずは、レールと支柱だな」
地面に描いたコースを歩きながら、どこに支柱が必要になるかを考えていく。
地面に近い場所。
坂になっている場所。
頂上付近。
カーブ。
特に高くなるところは、一本の柱だけで支えるのは怖い。
「ここは横にも支えを入れて……」
棒で地面に印を付けていく。
完全に正しいかどうかなんて分からない。
だからこそ、最初から人を乗せるつもりはない。
まず作る。
何度も試す。
問題があれば直す。
「メリーゴーランドと同じだな」
ようやく大まかな形が決まったところで、俺は【無限収納】の中を確認した。
メリーゴーランドを作ったときに余ったラグナ樫材。
灰石。
どちらもまだ残っている。
でも――。
「足りないな、これ」
地面に描いたコースを見る。
レールだけじゃない。
地面に据える土台。
レールを支える柱。
柱同士を支える部材。
さらに車両も必要になる。
小さいとはいえ、それなりの量の材料を使いそうだ。
「先に取ってくるか」
この土地に生えている木については、遊園地を作るために使う分なら問題ないと商業ギルドにも確認している。
どうせアトラクションを増やしていけば、邪魔になる木は伐採しなければならない。
俺は予定地の中を歩き、今後使いそうな場所に生えているラグナ樫を何本か選んだ。
「これと……あっちもかな」
倒す方向を確認する。
周囲に人はいない。
ほかの木や、完成したメリーゴーランドにも影響しない。
「よし」
一本ずつ切っていく。
最初に予定地を整えたときにもやっているから、以前ほど手間取らない。
切断したラグナ樫がゆっくりと傾き――。
ズズンッ!
重い音を響かせて地面へ倒れた。
枝を落とし、使える部分を【無限収納】へ入れる。
次の木へ。
同じ作業を何度か繰り返した。
「これくらいあれば足りる……と思う」
正確な量なんて分からない。
ジェットコースターを作るのは初めてだ。
足りなくなったら、また追加すればいい。
伐採したラグナ樫を取り出し、【錬金術】で加工していく。
太い柱。
それより細い補強用の木材。
そして、レールとして使う細長い部材。
必要になりそうなものを、一つずつ作っていく。
「……結構あるな」
並べてみると、それなりの量になった。
それでも足りるかは分からない。
「まあ、やってみるか」
俺は地面に描いた線と、先ほど付けた支柱の位置をもう一度確認した。
頭の中で形を組み立てていく。
まず土台。
その上に支柱。
高くなる場所には、横からも支えを入れる。
その上へ二本のレールを並べる。
車両が走れる幅を保ちながら、緩やかに上っていく。
頂上を越えたら下る。
その先で大きく曲がり、出発地点へ戻る。
「……よし」
形がまとまった。
俺は資材へ手を触れる。
「【建築】」
魔力を流す。
並べていた資材が動き始めた。
最初に組み上がったのは、地面へ据える土台だった。
その上に支柱が立つ。
一本。
二本。
さらに横から支える部材が組み合わさる。
その上へ、二本のレールが並んで伸びていく。
「おお……」
自分で考えた形とはいえ、実際に組み上がっていくのを見ると面白い。
最初は低い。
そこから徐々に高くなる。
支柱も、それに合わせて長くなっていった。
用意していた木材が次々と減っていく。
「結構使うな……」
追加で伐採しておいて正解だった。
レールは小さな頂上を作り、そこから下り始める。
地面へ近づいたところで、今度は大きなカーブ。
そして最後は、出発地点の近くへ戻ってきた。
最後の部材が組み上がる。
動きが止まった。
「…………」
俺はしばらく、目の前にできたものを眺めていた。
さっきまで何もなかった場所に、木製のレールがある。
高さは大したことがない。
コースも短い。
俺が日本で見てきた巨大なジェットコースターと比べれば、笑ってしまうくらい小さい。
それでも。
「……ジェットコースターだ」
自然と笑みが浮かんだ。
「いや」
すぐに首を横へ振る。
「まだレールだけだな」
車両がない。
そもそも、このレールがちゃんと使えるのかも確認していない。
俺は近づき、組み上がった部分を順番に見ていった。
支柱を押す。
補強した部分を触る。
レールも確認する。
見たところ、大きくぐらつく場所はない。
「形は大丈夫そうだけど……」
これで安全だとは言えない。
【建築】で思った通りの形に組み上がったからといって、それだけで人を乗せていいことにはならない。
むしろ、ここから確かめることの方が多い。
「次は車両だな」
俺はレールの幅を確認しながら、車両の形を考えた。
最初は一人乗りでいい。
二人乗りにすればその分重くなる。
まず一人分で試して、問題なく走れるようになってから大きくした方がいいだろう。
「座るところがあって……」
頭の中で簡単な形を作る。
そして一番大事なのは、車輪だ。
昔、ジェットコースターについて調べたときに知ったことがある。
車両は、ただレールの上に車輪を載せているだけじゃない。
レールから簡単に外れないように、横や下からも支える車輪が使われているものがある。
「正確には覚えてないんだよな……」
どのくらいの大きさなのか。
どの位置に何個必要なのか。
そこまでは覚えていない。
だから、いきなり完成品を作ろうとは考えない。
「試作だな」
俺はラグナ樫材を取り出し、【錬金術】で必要な部品を作っていく。
車体。
座る場所。
車輪。
車輪も、今は木製だ。
本当に人を乗せるなら、もっと丈夫な素材を使った方がいいかもしれない。
でも、今はレールの上を走れるか確認するための試作品。
いきなり俺が乗るつもりもない。
「こんな感じ……かな」
作った部品を並べる。
レールの形を確認する。
車輪が上から乗る。
横からも支える。
さらに下側にも外れにくくするための車輪を付ける。
完璧かどうかは分からない。
それでも、ただ上に載せるだけよりはいいはずだ。
「【建築】」
部品が組み上がっていく。
しばらくして完成したのは、一人が座れる程度の小さな木製車両だった。
「おお……」
装飾はない。
色も木そのまま。
遊園地で見たジェットコースターの車両みたいな格好良さはない。
「……地味だな」
メリーゴーランドの操作盤を作ったときにも、似たようなことを言った気がする。
「まあ、今はいいか」
見た目より、まず走ることだ。
俺は車両を持ち上げ、レールへ載せる。
車輪の位置を確認しながら、ゆっくり収めていく。
「……入った」
軽く押してみる。
ゴロ……。
ゴロゴロ……。
「お」
進んだ。
もう少し押す。
ゴロゴロと木の車輪が音を立てながら、レールの上を進んでいく。
戻してみる。
これも動く。
「平らなところなら大丈夫そうだな」
ただ、今確認したのは出発地点付近の平らな部分だけだ。
この先には坂がある。
「…………」
俺は坂を見上げた。
当然ながら、車両を軽く押しただけで勝手に上っていくわけがない。
「これ、どうやって上まで持っていくんだ?」
ジェットコースターは、最初の坂をゆっくり上っていく。
日本で乗ったとき、ガコン、ガコン、と音を立てながら上っていくものがあった。
「確か……チェーンだったよな」
細かい仕組みまでは知らない。
でも、坂に沿って動く鎖のようなものに車両を引っかけ、上まで引っ張る方式があることくらいは覚えている。
「だったら……」
頭の中で考える。
長い鎖を作る。
それを輪にする。
歯車へ掛ける。
歯車を回せば、鎖も動く。
その鎖に車両を引っかければ――。
「上まで運べる……のか?」
たぶん。
問題は、その歯車をどう回すかだ。
「魔石を使って……」
そこで、俺は考える。
魔石から魔力を供給する。
その魔力で歯車を回す。
歯車が鎖を動かす。
鎖が車両を引っ張る。
「…………」
なんだろう。
できなくはなさそうだけど、随分遠回りしているような気がする。
「いや、でも日本のジェットコースターも――」
そこまで考えたところで、ふと視界の端にメリーゴーランドが入った。
「…………」
俺はそちらを見る。
昨日完成したメリーゴーランド。
円形の床。
木馬。
中央の軸。
そして少し離れたところにある操作盤。
あれを回すために、俺はモーターを作っていない。
複雑な歯車も作っていない。
最初は風魔法で押した。
その後、【付与魔法】で回転する効果を与えた。
そして魔石から魔力を供給して、その効果を働かせている。
「…………」
もう一度、目の前の車両を見る。
「……あれ?」
なんで俺は、ジェットコースターだけ日本と同じ仕組みにしようとしてるんだ?
ここは日本じゃない。
魔法がある世界だ。
しかも俺は【付与魔法】を使える。
「車両そのものを動かせばいいんじゃないか?」
思わず声に出した。
車両に、前へ進む効果を付与する。
魔力を与えたときだけ、レールに沿って進む。
それなら、最初の坂だって自分で上れるかもしれない。
「頂上まで上ったら、魔力を止めて……」
そこからは坂を下る。
下れば車両は加速する。
その勢いでカーブを走らせる。
「……いけるか?」
もちろん、そんなに簡単とは限らない。
付与した効果が強すぎれば、坂をものすごい速度で上ってしまうかもしれない。
弱すぎれば途中で止まる。
どこまで魔力を流すかも考えなければならない。
それでも、チェーンや歯車を一から作るより、今の俺には試しやすそうだ。
「だったら……」
俺は車輪を見る。
一瞬、別の考えが浮かんだ。
魔法で車両そのものをレールに沿って動かせるなら、車輪だって必要ないんじゃないか。
車体をそのまま浮かせるようにして、レールの上を滑らせる。
「…………」
少し想像して――。
「いや。車輪はいるな」
首を横に振った。
それは、俺が作りたいジェットコースターとは少し違う。
レールの上を車輪が走る。
坂を上る。
頂上を越える。
そこから下って、速度が出る。
俺が知っているジェットコースターは、そういう乗り物だ。
それに、魔法だけに全部任せるのも怖い。
何かの理由で魔力が途切れたとき、車両そのものを魔法だけでレールに留めていたらどうなる?
だったら、車輪で物理的にレールから外れにくくしておいた方がいい。
「使えるところは魔法を使う。でも、何でも魔法任せにする必要はないよな」
メリーゴーランドだってそうだった。
魔法があるからといって、床も中央の軸も木馬も必要なくなったわけじゃない。
必要な形を作った上で、動かす部分に魔法を使った。
ジェットコースターも同じでいい。
日本のものを、そのまま再現する必要はない。
かといって、全部を魔法に置き換える必要もない。
「この世界で作れるジェットコースターにすればいいんだ」
そう考えると、少し楽になった。
俺はレールへ手を置く。
そこで、もう一つ思い出す。
メリーゴーランドを作ったとき、ラグナ樫材に魔力を通しやすくする効果を付与して、魔石から中央部分まで魔力を送る道を作った。
「これも使えるか?」
魔石からレールへ魔力を流す。
その魔力を、レールに触れている車輪を通して車両へ渡す。
車両には、魔力を受け取っている間だけ前へ進む効果を付ける。
「…………」
俺はレールと車両を交互に見る。
「できそうな気はするな」
もちろん、まだ何も試していない。
レールから車輪へ魔力がちゃんと伝わるのか。
木製の車輪で問題ないのか。
坂を上れるだけの力が出るのか。
魔力を流す範囲をどうするのか。
考えなければならないことはいくらでもある。
下手をすれば、車両がいきなり勢いよく飛び出すかもしれない。
「最初は弱く試そう」
メリーゴーランドで、魔力の込めすぎには何度も気をつけてきた。
今回も同じだ。
いきなり人なんて乗せない。
まずは空の車両。
それがちゃんと走るようになったら、重りを載せる。
坂を上らせる。
下らせる。
カーブを走らせる。
一つずつ確認していけばいい。
俺は立ち上がり、少し離れた場所から全体を眺めた。
昨日まで、ここにはメリーゴーランドしかなかった。
今はその少し離れた場所に、木製のレールがある。
その上には、小さな車両。
まだ動かない。
人も乗せられない。
完成には程遠い。
それでも――。
「……ジェットコースターっぽくなってきたな」
小さい。
本当に小さい。
俺が日本で乗ったものと比べれば、同じ名前で呼んでいいのか迷うくらいだ。
でも、メリーゴーランドだって最初から完成していたわけじゃない。
人の手で押さなければ回らなかった。
それを一つずつ直して、昨日ようやく最初の形が完成した。
「こいつも同じだな」
まずは動かす。
坂を上らせる。
下らせる。
カーブを走らせる。
ちゃんと止める方法だって必要になる。
その途中で問題が出たら、そのたびに直せばいい。
「よし」
俺はもう一度、試作した車両の前へしゃがみ込んだ。
今日はまだ時間がある。
方法も思いついた。
だったら、考えているだけで終わる必要はない。
車両へ手を置く。
「次は、こいつを動かしてみるか」
メリーゴーランドで覚えた【付与魔法】と魔石の使い方。
それを今度は、ジェットコースターに使ってみる。
俺は目の前の小さな車両を見ながら、どんな効果を付与すればいいのか考え始めた。
二つ目のアトラクションは、ジェットコースターに決まりました!
もちろん、いきなり巨大なものを作るわけではなく、まずは小さなものから。
【建築】で形を作り、今度は【付与魔法】と魔石をどう使って動かすのか考えていきます。
少しずつですが、何もなかった草原が遊園地らしくなってきました。




