17話 遊園地を作る土地を整えよう
遊園地を作る土地を借りることができたライガ。
いよいよ何かを作ろうと予定地へ向かいます。
しかし、実際に建物を作る前にも、やらなければならないことがあるようで――。
翌朝。
朝食を済ませた俺は、銀の小鹿亭を出ると、そのまま北門へ向かった。
目的地は、昨日正式に借りることになった土地だ。
何度も歩いた道なのに、今日はいつもより足取りが軽い。
それも当然だと思う。
昨日までは、遊園地を作るための土地を探していた。
でも、もう探す必要はない。
場所は決まった。
契約も終わった。
あとは、あの土地に遊園地を作っていくだけだ。
「最初は何がいいかな……」
歩きながら考える。
昨日も散々考えたことだけど、まだ答えは出ていない。
入口を先に作るのもいい。
遊園地に入るとき、大きな門が見えてくるだけでもワクワクする。せっかく作るなら、これから楽しい場所に入るんだと思ってもらえるような入口にしたい。
でも、入口だけ立派に作って、その先に何もなかったら意味がない。
だったら、先にアトラクションを一つ作ってみるのもありだ。
「ジェットコースターは……いきなりは無理だろ。観覧車も難しいよな」
どっちも大好きだ。
乗ったことは何度もあるし、気になって基本的な仕組みを調べたことだってある。
ジェットコースターの車両がどうやってレールから外れないようになっているのか。
観覧車のゴンドラが、一周しても同じ向きを保っていられるのはどうしてなのか。
安全バーがどうやって固定されているのか。
遊園地が好きだったから、そういうことを調べるのも楽しかった。
でも、それと実際に一から安全なものを作れるかどうかは別だ。
どんな材料を使って、どれくらいの強度が必要で、どう組み上げれば人を乗せても安全なのか。そこまで詳しく知っているわけじゃない。
だったら、もっと単純なものから始めた方がいい。
「メリーゴーランドとか……」
そこまで言ってから、少し考える。
メリーゴーランドなら、ジェットコースターや観覧車よりは簡単そうに見える。
中央を軸にして、円形の床が回る。その上に馬が並んでいて、回転しながら上下する。
「……いや、上下する仕組みまでは知らないな」
床を回すための仕組みだって、実際に自分で作ったことがあるわけじゃない。
俺の知っているものなら、電気でモーターを動かしていたはずだ。
でも、モーターを一から作れと言われたら無理だ。
それでも、最初から俺の知っているメリーゴーランドとまったく同じものを作る必要はない。
ここには魔法がある。
それに、まだちゃんと試していない能力もいくつかある。
まずは簡単なものを作って、少しずつ改良していけばいい。
「回るだけなら、なんとかならないかな」
そう考えているだけで楽しくなってくる。
何を作ろう。
どこに作ろう。
最初に作ったものを見た人は、どんな反応をするだろう。
まだ何一つ完成していないのに、頭の中では遊園地作りがどんどん進んでいく。
そんなことを考えながら歩いているうちに、目的の土地が見えてきた。
「着いた」
道の先に広がる草原を見て、俺は自然と足を速めた。
何度か見ている場所だ。
大きな起伏が少なく、遊園地を作るには使いやすそうな広い土地。少し離れたところには木が何本か生えていて、その向こうにも草原が続いている。
昨日までは、ここを借りられるかどうかばかり考えていた。
でも、もう違う。
ここは今日から、俺が実際に遊園地を作っていく場所だ。
「よし!」
自然と声が出た。
ここに入口を作る。
中へ続く道を作って、その先には広場。
ジェットコースターも欲しい。
観覧車も欲しい。
メリーゴーランドも作りたい。
アトラクションだけじゃなく、食べ物を売る店や土産物を売る店も必要だ。
疲れた人が休める場所も欲しいし、雨が降ったときに入れる場所だってあった方がいい。
いつかは朝から夜まで大勢の人が遊んでいて、どこからでも楽しそうな声が聞こえてくるような場所にする。
その最初の一つを、今日から――。
「…………」
そこまで考えたところで、俺は目の前の草原を見た。
風が吹く。
伸びた草が、ざわざわと音を立てながら揺れる。
もう一度、足元を見る。
草。
少し先にも草。
さらに向こうにも、当然のように草。
草原なんだから当たり前だけど、場所によっては膝近くまで伸びている。
しかも、その下の地面まで綺麗に平らというわけではない。小さな窪みや盛り上がりがあるし、ところどころに石も転がっている。
今までは気にならなかった。
遊園地を作る土地として見たときは、十分平らに見えていたからだ。
でも、実際に「ここへ何かを作る」と考えて見ると話が違う。
「……いや、何か作る前にこっちだろ」
俺は思わず頭を掻いた。
入口だとか、アトラクションだとか考えている場合じゃなかった。
何かを作るなら、まず作れる場所が必要だ。
「そうだよな。遊園地だって、最初から綺麗な地面に建ってたわけじゃないよな……」
考えてみれば当たり前だ。
俺が今まで見てきたのは、完成したあとの遊園地だけだった。
綺麗に舗装された道。
整えられた広場。
アトラクションが建っている場所だって、最初はこういう土地だったのかもしれない。
それを誰かが整備して、建物を建てられる状態にしたから、俺が知っている遊園地になった。
「まずは整備からか」
遊園地のことなら、かなり知っているつもりだった。
どんなアトラクションがあるのか。
どういう食べ物が売られているのか。
どんな場所を歩いているだけで楽しいのか。
でも、それは全部、遊びに行く側として知っていたことだ。
作る側になってみれば、知らないことの方がずっと多い。
「……まあ、分からないなら一個ずつやってけばいいか」
まずは目の前の土地を使えるようにする。
とはいえ、借りた土地全部を一度に整備するつもりはない。
そんなことを始めたら、いつまで経っても最初のアトラクションを作れない。
俺は道に近い側を歩きながら、最初に使いやすそうな場所を探した。
将来入口を作るなら、この辺りから始めるのがよさそうだ。
街から材料を運んでくるにしても、道から近い方が楽だろう。
「よし。この辺にしよう」
最初に整備する範囲を大体決める。
それから、改めて足元の草を見た。
「まず、これだよな」
草刈り。
鎌なんて持っていない。
昨日のうちに気づいていれば買ってきたけど、今から街へ戻るのも面倒だ。
何か代わりになるものはないか。
そう考えながら草を見ているうちに、ふと一つのことを思い出した。
「……そういえば」
俺は一本の草を摘む。
どこにでも生えていそうな、何の変哲もない草だ。
だけど、この世界では見た目だけで判断できない。
俺が冒険者になって最初に採取したヒールグラスだって、知らなければただの草に見えた。
「これも何かに使えたりしないよな?」
せっかく刈るのに、あとから価値のあるものだったと分かったらもったいない。
俺は手に持った草へ【鑑定】を使った。
【平原草】
平地や草原に広く自生する一般的な草。繁殖力が強く、家畜の飼料などに利用されることもある。単体での価値は低い。
「飼料にはなるのか」
完全に何の役にも立たないわけじゃないらしい。
だったら刈ったものを集めれば売れるのかとも思ったけど、すぐに昨日の契約の話を思い出した。
この土地は、遊園地を作って運営するために借りた土地だ。
そこにある木や石なんかを遊園地のために使うのはいいけど、それを商品として外へ売るような使い方は認められない。
「まあ、そうだよな」
そもそも【鑑定】にも、単体での価値は低いと出ている。
わざわざ集めて売るようなものでもないだろう。
俺が今やりたいのは金稼ぎじゃなくて、遊園地作りだ。
金が必要になったら、冒険者として稼げばいい。
「じゃあ、刈るとして……」
鎌を買いに戻るか。
そう考えかけて、自分の手を見る。
「魔法でできないかな」
俺には【全属性魔法適性】がある。
火や水だけじゃなく、風や土を含めたほとんどの属性魔法を習得できる能力だ。
もちろん、適性があるからといって最初から何でも使えるわけじゃない。
女神様からも、練習は必要だと言われている。
それでも、風魔法なら草を切れるんじゃないだろうか。
「強い風じゃなくて……切る感じか」
俺は周囲に人がいないことを確認してから、少し離れた草へ手を向けた。
まずは風を起こしてみる。
魔力を込めると、手の先から風が吹き抜けた。
ぶわっと草が大きく揺れる。
「……まあ、そうなるよな」
風を吹かせただけでは草は切れない。
欲しいのは強い風じゃない。
もっと薄く、もっと鋭く。
包丁や剣の刃みたいに、狭いところへ力を集中させる。
「もう一回」
頭の中に形を思い浮かべながら魔力を込める。
ヒュッ、とさっきより鋭い音がした。
近づいて確認すると、何本かの草に細い傷が入っている。
「さっきよりはいいな」
だったら、もう少しだ。
強くしすぎれば風が広がり、細くしすぎるとうまく維持できない。
何度か失敗しながら魔力の込め方を変えていくうちに、少しずつ感覚が分かってきた。
ただ風を飛ばすんじゃない。
切りたい場所を決めて、そこを横切るように鋭い風を走らせる。
「――っ!」
風が草の根元を横切った。
一瞬遅れて、何本もの草が倒れる。
「切れた!」
駆け寄って確認する。
途中から折れたんじゃない。
ちゃんと切れている。
「よし。これならいける」
それから俺は、無理に一度で広い範囲を狙わず、確実に切れる幅で何度も風を走らせていった。
慣れてくると、最初よりずっと速くなる。
刈った草は邪魔にならない場所へまとめておいた。
「魔法って、こういうことにも使えるんだな」
魔物と戦うためだけじゃない。
使い方を考えれば、遊園地を作るためにも使える。
しばらく草を刈っていると、それまで隠れていた地面の様子がはっきり見えるようになった。
「結構、石あるな」
小さな石が、あちこちに転がっている。
何かを作るなら邪魔になるだろう。
俺は近くにあった一つを拾い上げた。
「そういえば、これも……」
昨日、契約の話をしたときに、この土地にあるものは遊園地を作るためなら材料として使っていいと聞いている。
だったら、この石も何かに使えるかもしれない。
俺は手の中の石へ【鑑定】を使った。
【灰石】
この地方で広く見られる灰色の石。比較的加工しやすく、建築や石垣などにも利用される。強度はそれほど高くない。
「使えるんだ」
ただ邪魔なだけの石だと思っていた。
でも、加工すれば建築に使えるらしい。
「だったら、使えそうなのは取っておくか」
今すぐ何に使うかは分からない。
それでも、建築に使えるなら捨てる必要はない。
邪魔になる石を拾いながら、使えそうなものは【無限収納】へ入れていく。
灰石ではない石もあれば、細かすぎて今のところ使い道のなさそうなものもある。
そのたびに【鑑定】していると時間がかかるので、途中からは気になったものだけ調べることにした。
「……なんか、宝探しみたいになってきたな」
思わず笑う。
草を刈っているだけのはずだったのに、少しずつ土地の見え方が変わってきた。
さっきまで邪魔にしか見えなかった石の中にも、材料になるものがある。
だったら、あれはどうだろう。
俺は少し離れたところに生えている木へ目を向けた。
最初にこの土地を見たときから、何本か木があることには気づいていた。
でも、遊園地を作る場所として考えることばかりで、木そのものを詳しく調べたことはなかった。
近くまで歩いていき、幹へ手を触れる。
「【鑑定】」
【ラグナ樫】
この地方の平地や丘陵に自生する樹木。硬く丈夫な木質を持ち、家具や建築用の木材として広く利用されている。
「建築用……」
使える。
この木も、遊園地を作るための材料になる。
「……じゃあ、材料ってここにもあるじゃん」
昨日、契約を結ぶときに確認しておいてよかった。
借りている範囲に生えている木は、遊園地の建設や土地の整備に必要なら切ってもいい。
もちろん、木を切って街へ持っていき、商品として売るのは駄目だ。
でも、俺が欲しいのは売り物じゃない。
遊園地を作るための材料だ。
「これなら使えるな」
もちろん、これから遊園地を作っていけば、ここにあるものだけでは絶対に足りない。
大量の木材が必要になれば、街で買う必要も出てくるだろう。
石材だって、必要な種類や量によっては同じだ。
金属なんて、この草原を探したところで都合よく手に入るはずもない。
それでも、最初に何か小さなものを作るための材料なら、ここにあるものを使えるかもしれない。
俺はラグナ樫を見上げた。
許可されているからといって、片っ端から切るつもりはない。
遊園地にだって木はある。
暑い日には木陰になるし、景色を考えても全部なくしてしまう必要はないだろう。
「残せるのは残したいな」
だから今は、最初に整備すると決めた範囲で邪魔になりそうな木だけでいい。
その中から一本を選び、少し離れて立つ。
「問題は、どうやって切るかだけど……」
斧はない。
でも、さっき草を刈った風魔法がある。
草と木では硬さが全然違うけど、もっと鋭く、もっと強くできれば切れるかもしれない。
「やってみるか」
さっきの感覚を思い出す。
ただ強い風をぶつけるんじゃない。
薄く、鋭く。
今度は草を切ったときよりも、さらに狭い範囲へ魔力を集中させる。
「――っ!」
風が走った。
鋭い音がして、幹の表面に傷が入る。
「おっ!」
切れた。
いや、切れたというより、少し削れたくらいか。
当然だけど、草みたいに一発ではいかない。
「だったら、もっと集中させて……」
同じ場所を狙い、何度か風を飛ばしていく。
少しずつ傷が深くなってきたところで、俺はふと手を止めた。
「…………」
太い幹。
その上に伸びる枝。
俺より何倍も高い。
「これ、切れたら倒れるよな」
当たり前だ。
木を切ったら倒れる。
「……どっちに?」
急に怖くなって、俺は木から距離を取った。
狙った方向へ木を倒す方法なんて知らない。
適当に切り続けて、自分の方へ倒れてきたら洒落にならない。
俺は木の周囲を一周し、人や馬車が近くにいないことはもちろん、倒れた先に壊れそうなものがないことも確認する。
幸い、周囲はまだ何も建っていない草原だ。
「だったら、倒れ始めたらすぐ離れればいいか」
どちらへ倒れても巻き込まれないよう、逃げられる場所も確認しておく。
それから再び距離を取り、幹へ風を飛ばした。
一度。
二度。
少しずつ傷が深くなっていく。
やがて、ミシッ、と今までとは違う音がした。
「おっ……」
幹がゆっくりと傾き始める。
「来た!」
俺はすぐにさらに距離を取った。
木はそのまま傾いていき、枝を大きく揺らしながら地面へ倒れた。
ズン、と腹に響くような音が草原に広がる。
「……できた」
しばらく倒れた木を眺めてから、俺は息を吐いた。
「すげえな、風魔法……」
自分で木を一本切り倒した。
しかも斧も鋸も使っていない。
魔法だけで。
戦うときにも魔法は便利だった。
でも、俺がやりたいのは魔物を倒すことじゃない。
こうして遊園地を作るためにも使えるなら、そっちの方がずっと嬉しい。
俺は倒れたラグナ樫へ近づいた。
「これも材料なんだよな」
さっきの【鑑定】では、建築用の木材として使われていると出ていた。
だったら、ここに最初の何かを作るときにも使えるかもしれない。
そう思って、倒れた木を上から下まで眺める。
太い幹から枝が何本も伸びている。
樹皮もついたままだ。
「…………」
俺が欲しいのは、板とか柱として使える木材だ。
「これ、どうやって木材にするんだ?」
木が材料になることは分かった。
でも、切り倒したらそれで終わりじゃない。
枝を落として、樹皮をどうにかして、板や角材に加工する必要があるはずだ。
「……まあ、それはあとで考えるか」
今は土地を整えるのが先だ。
俺は倒したラグナ樫を【無限収納】へ収納すると、草を刈った場所へ戻った。
草がなくなったことで、地面の状態がよく見えるようになっている。
小さな窪みもあれば、少し盛り上がった場所もある。
地面に半分埋まった石もあった。
「次はこっちだな」
俺はしゃがんで、埋まっている石を引っ張ってみた。
「……抜けない」
思ったより大きいらしい。
少し掘れば取れそうだけど、今度はスコップなんて持っていない。
そこで、さっき草を刈ったときのことを思い出す。
「風で草を切れるなら……土は土魔法で動かせるよな?」
俺には土属性の適性もある。
もちろん、これもほとんど使ったことがない。
でも風魔法と同じで、試してみる価値はある。
「石を動かすんじゃなくて……周りの土をどかす感じで」
俺は地面へ手を向けた。
石の周囲にある土が横へ移動するところを想像しながら、魔力を込める。
「……動け」
ぼこっ。
「うわっ!」
石の横の土が突然盛り上がった。
「違う違う。そこに増やしたいんじゃない!」
慌てて魔力を止める。
土を動かすつもりが、変な場所に小さな山を作ってしまった。
「風より難しいな……」
でも、土そのものは動いた。
なら、あとは加減の問題だ。
今度はもっと少ない量を意識する。
土を消すんじゃない。
ここから、あそこへ移す。
何度か失敗しながら試していると、少しずつ狙った方向へ土を動かせるようになってきた。
石の周囲の土をどかしていき、埋まっていた部分を露出させる。
「おお。結構でかかったんだな」
両手で持てるくらいではあるけど、最初に見えていた部分よりずっと大きい。
持ち上げる前に、俺は【鑑定】を使った。
【灰石】
この地方で広く見られる灰色の石。比較的加工しやすく、建築や石垣などにも利用される。強度はそれほど高くない。
「これも灰石か」
だったら、これも取っておこう。
俺は掘り出した灰石を【無限収納】へ収納した。
そのまま土魔法を使って、今度は地面そのものを整えていく。
高くなっている場所から少しだけ土を動かし、窪んでいる場所へ移す。
最初は加減が分からず、平らにするつもりだった場所を逆に窪ませてしまった。
「うわ……」
直そうとして土を戻したら、今度は少し盛り上がる。
「難しいな、これ」
魔法が使えるからといって、何でも簡単にできるわけじゃない。
それでも、一度に大きく変えようとせず、少しずつ土を移動させていけば形にはなる。
石があれば取り除き、使えそうなら【無限収納】へ入れる。
そうやって作業を続けていると、朝まで草に覆われていた場所が、少しずつ平らな地面へ変わっていった。
しばらくして、俺は手を止めた。
「……こんなもんかな」
少し離れて、整えた場所を見る。
土地全体から考えれば、本当に小さな範囲だ。
それでも、朝とは明らかに違う。
草がなくなった。
邪魔になっていた木も一本なくなった。
大きな石も取り除いた。
凸凹していた地面も、見た目にはかなり平らになっている。
「これなら何か作れそうだな」
思わず笑ってから、ふと足元を見る。
地面を何度か踏んでみた。
「……でも、平らなら大丈夫ってわけじゃないよな」
俺がやったのは、あくまで表面を平らにしただけだ。
この地面がどれくらいの重さに耐えられるのかまでは分からない。
小さなものならともかく、いつか観覧車や大きなジェットコースターみたいなものを作るなら、もっとちゃんと調べないと危ないはずだ。
「地面の強さとかも、いつか調べないとな……」
また知らないことが出てきた。
でも、今すぐ全部分からなくてもいい。
俺はもう一度、整えた場所を見渡した。
朝から慣れない魔法を何度も使ったせいで、それなりに時間は経っている。
それでも、一日が終わるにはまだ早い。
「……まだいけるな」
せっかく、何かを作れる場所までできたんだ。
ここで帰るのは、なんとなくもったいない。
それに、俺にはもう一つ気になっていることがある。
俺は【無限収納】へ入れたラグナ樫を思い出した。
木はある。
灰石もある。
どちらも建築に使えることは【鑑定】で分かっている。
問題は、そのままでは使いにくいことだ。
特にラグナ樫は、まだ枝も樹皮もついた一本の木でしかない。
「これを板とか柱にできれば……」
そうすれば、今日のうちに何か作れるかもしれない。
普通なら、木材に加工する方法を誰かに聞くところだろう。
でも、その前に一つだけ試してみたいことがある。
「そういえば……【錬金術】って、こういうのに使えたりするのかな」
俺がこの世界へ来たときにもらった能力の一つ。
まだ、何ができるのかちゃんと試したことはない。
できるかどうかは分からない。
だったら、試してみればいい。
「よし」
俺は整えたばかりの地面を見渡した。
朝ここへ来たときは、何を作ろうかと考えていた。
それが実際に始めてみれば、最初にやったのは草を刈って、木や石を取り除いて、地面を平らにすることだった。
でも、そのおかげでようやく、何かを作るための場所ができた。
「じゃあ次は――本当に何か作ってみるか」
遊園地を作るための最初の場所はできた。
まだ時間はある。
なら、このまま次へ進もう。
お読みいただきありがとうございます!
今回から、いよいよ遊園地作りが始まりました。
さっそく何かを作ろうとしていたライガでしたが、その前に必要だったのは土地の整備。
今まで遊びに行く側だったライガにとって、完成した遊園地では当たり前になっていることも、いざ自分で作るとなると知らないことばかりです。
そんな中、風魔法で草を刈ったり木を伐採したり、土魔法で地面を整えたりと、これまでとは違った魔法の使い方も見つかりました。
さらに、何もないと思っていた土地にも、木や石といった建築に使えそうなものがあることが判明。
まだ入口もアトラクションもありませんが、遊園地を作るための最初の一画はできました。
次はいよいよ、手に入れた材料をどうやって建築に使うのか。
ライガが最初に何を作るのかも含めて、続きも楽しんでいただけたら嬉しいです!




