15話 遊園地の土地はいくらですか?
遊園地を作りたいと思える土地を見つけたライガ。
しかし、土地を見つけただけでは遊園地は作れません。
今回は、いよいよその土地を手に入れるための話です。
そして、その景色を本物にするために次に知らなきゃいけないのは――どうやら、この土地の値段らしい。
候補地の確認を終えた俺たちは、来たときと同じ馬車に乗ってリーベルへ戻った。
帰りの馬車でも、俺は何度か窓の外を振り返った。
少しずつ遠ざかっていく草原は、まだ俺の土地でもなければ、遊園地を作っていいと決まった場所でもない。
それでも、行く前とはもう見え方が違っていた。
あそこに入口を作りたい。
道を伸ばして、その先に乗り物を置きたい。
いつか大きな観覧車を作って、遠くからでも遊園地があると分かるような場所にしたい。
そんな景色が、さっきからずっと頭の中に残っている。
だからこそ、気になる。
あの土地を使うには、いったいいくら必要なんだろう。
俺は自分の持っている金額を思い浮かべて、少しだけ不安になった。
……いや。
かなり不安だ。
あれだけ広い土地が、銀貨何枚かでどうにかなるとはさすがに思えない。
全部を使う必要はないと言われているけど、それでも遊園地を作るなら、それなりの広さは必要になる。
買うにしても、借りるにしても。
いくらになるのか、まったく想像がつかなかった。
◇
リーベルへ戻った俺たちは、そのまま商業ギルドへ向かった。
街の外まで同行していた護衛たちとはそこで別れ、商業ギルドの中へ入ったのは、俺とアイラ様、ギルドマスター、土地担当者。それにアイラ様のそばへついている二人の護衛だ。
案内された部屋へ入り、俺たちは机を囲むように席についた。
「では、先ほどの続きといこう」
ギルドマスターがそう言うと、土地担当者が机の上に大きな地図を広げた。
描かれているのは、さっき実際に見てきた候補地と、その周辺らしい。
「こちらが北街道です。そして、こちらが候補地へ続いている脇道になります」
「あ、ここですね」
俺は地図を覗き込む。
実際に現地を見てきたあとだから、前よりもずっと分かりやすい。
北街道から西へ入って、その先に広い草地がある。
土地担当者はその草地のかなり広い範囲を指で示した。
「こちらが、本日ご案内いたしました候補地の全体となります」
「こうして地図で見ても広いですね……」
「はい。ライガ様が希望されていた将来的な拡張まで考慮して、余裕を持った範囲を候補としておりますので」
俺は地図を見ながら、さっき歩いた土地を思い出した。
確かに広かった。
入口を作って、道を伸ばして、乗り物をいくつも作る。
いつか大きなジェットコースターや観覧車を作るとしても、今すぐこの全部が必要になるとは思えない。
「それで……」
いよいよ聞かなきゃいけない。
「この土地って、買うといくらくらいするんですか?」
「本日ご案内した範囲すべてを、ということでしょうか?」
「一応、それを聞いておきたいです」
買えるとは思っていない。
でも、どれくらいするのかくらいは知っておきたい。
土地担当者は地図と手元の資料を確認してから答えた。
「正確な価格については改めて算定する必要がございますが、この範囲をすべて購入されるのであれば、金貨七十枚前後になるかと思われます」
「……金貨七十枚?」
「はい」
聞き間違いではなかったらしい。
金貨一枚は銀貨百枚。
つまり、金貨七十枚なら銀貨七千枚だ。
俺は頭の中で自分の持っている金額と比べようとして――やめた。
比べる意味がない。
「無理ですね」
「随分と早いな」
アイラ様が少し面白そうに俺を見る。
「だって金貨七十枚ですよ? 俺、金貨なんて一枚も持ったことないですからね」
「それなら、確かに七十枚は難しいだろうな」
「難しいっていうか、どうやったらそんなに貯まるのかも分からないです」
冒険者になってから、依頼をこなせば少しずつお金を稼げるようにはなった。
でも、これまで俺が受け取ってきたのは基本的に銀貨や銅貨だ。
銀貨七千枚。
それを冒険者の仕事だけで集めようとしたら、遊園地を作り始める前に何年かかるのか分かったものじゃない。
「だから、最初からすべてを購入する必要はないと言っただろう」
ギルドマスターが地図へ目を落とした。
「君自身、最初は小さく始めたいと言っていたな?」
「はい」
「ならば、実際に最初から使う範囲だけを購入する方法もある」
「それなら、もう少し安くなりますよね?」
「もちろんだ」
土地担当者が頷いた。
「ただし、遊園地として使用する以上、ある程度まとまった土地は必要になるかと思われます。かなり範囲を狭めたとしても、金貨十数枚程度は見ていただいた方がよろしいでしょう」
「十数枚……」
七十枚を聞いた直後だから、一瞬だけ安くなったような気がした。
でも、金貨十枚でも銀貨千枚だ。
俺にとっては十分すぎるほど大金だった。
「……やっぱり買うのは無理そうですね」
「今すぐ購入するのであれば、そうだろうな」
ギルドマスターにもあっさり言われてしまった。
でも、ここまではある程度予想していた。
そもそもアイラ様は、購入するか、それとも借りるのかと言っていた。
「じゃあ、借りる場合はどうなるんですか?」
「その場合は、購入のように一度に大金を用意する必要はございません」
土地担当者が地図の一部を指で囲う。
「ライガ様が最初から候補地全体を使用する必要はないのであれば、まずはこちらの範囲から始めるのがよろしいかと思います」
「街道から来やすい側ですね」
「はい。先ほど現地でもご覧いただいた脇道に近く、入口を設けるにも都合のよい場所です。また、将来的に遊園地を拡張する場合にも、隣接する領主管理地へ広げやすい位置となります」
俺は地図を見ながら考える。
最初から巨大なジェットコースターや観覧車を作れるわけじゃない。
だったら、まずはここから始める。
小さくても遊園地を作って、そこから少しずつ乗り物や施設を増やしていけばいい。
「俺も、最初はこのくらいでいいと思います」
「では、ひとまずこの範囲を基準として考えましょう」
「この範囲だと、いくらくらいになりますか?」
「通常の条件であれば、月に銀貨十枚ほどです」
「銀貨十枚……」
今度は金貨七十枚ほどの衝撃はなかった。
払えない金額ではない。
冒険者として依頼を受けていれば、銀貨を稼ぐことはできる。
でも、これは一度払えば終わりじゃない。
毎月だ。
土地を借りている限り、遊園地が完成していようがいまいが、銀貨十枚を払い続けることになる。
しかも、土地さえ借りれば遊園地が勝手にできるわけじゃない。
木材や石材、金属。
何を作るにしても材料が必要になる。
【建築】を使ったとしても、何もないところから建物を生み出せるわけじゃないことは、牧場の柵を直したときに分かっている。
それ以外にも、自分の生活費は必要だ。
いずれ人を雇うようになれば、その人たちに払うお金だっている。
「……払えない金額ではないんですけど」
俺は地図を見たまま呟いた。
「毎月となると、結構きついですね」
「そうだろうな」
ギルドマスターが頷いた。
「土地を借りた時点で、遊園地から金が入ってくるわけではない。完成するまでは、土地の使用料を払いながら、建設に必要な金も用意することになる」
「ですよね……」
「普通であれば、それも含めて事業を始めるための資金を用意するものだ」
「うっ」
正論だ。
俺の場合、遊園地を作ると決めてからお金を稼ぎ始めたようなものだから、最初からまとまった資金なんて持っていない。
「俺、まだ冒険者として稼ぎ始めたばっかりですからね……」
「その状態でこれほど大きなことを始めようとしている者も、そうはいないだろうな」
「自分でもそう思います」
少し笑ったけど、問題そのものがなくなったわけじゃない。
毎月銀貨十枚。
土地代だけなら、冒険者の依頼を増やせば何とかなるかもしれない。
でも――。
「土地代を払うために冒険者の仕事を増やしたら、その分だけ遊園地を作る時間が減るし……」
もっと稼ごうとすれば、今度は材料を集めたり、実際に何かを作ったりする時間がなくなる。
土地を借りるために働いて、そのせいで遊園地を作れない。
それじゃ意味がない。
「……思ったより厳しいな」
思わず本音が漏れた。
「私もそう思う」
「え?」
声がした方を見る。
そう言ったのはアイラ様だった。
「アイラ様もですか?」
「ああ」
アイラ様は机の上の地図へ視線を落とした。
「通常の条件で貸すだけなら、月に銀貨十枚。それで話は終わる」
「はい」
「だが、今の君から毎月銀貨十枚を取れば、土地の使用料を稼ぐために冒険者の仕事を増やすことになるだろう」
「たぶん、そうなります」
「その結果、遊園地を作る時間も金も足りなくなる。そうなれば、この土地を貸したところで、いつまで経っても遊園地はできないかもしれない」
「…………」
否定できなかった。
というか、俺自身が今まさに同じことを考えていた。
アイラ様はしばらく地図を見ていた。
それから、ギルドマスターへ視線を向ける。
「ならば、条件を変えてはどうだ?」
「条件を、ですか?」
「ああ」
ギルドマスターも、何を言い出すのかまでは分かっていなかったらしい。
アイラ様は地図の上に示された土地へ目を落とした。
「遊園地が営業を始めるまで、毎月の使用料を銀貨三枚まで下げる」
「……三枚?」
思わず聞き返した。
ギルドマスターも、土地担当者もすぐには答えなかった。
通常なら銀貨十枚。
それを銀貨三枚。
七枚も違う。
「伯爵閣下」
先に口を開いたのはギルドマスターだった。
「それは、通常の条件からかなり外れます」
「分かっている」
「何の条件もなく、というわけではありませんよね?」
「もちろんだ」
アイラ様は頷いた。
「営業を始めるまでは月に銀貨三枚。そして営業を始めたあとは、その銀貨三枚に加えて、遊園地で得た売り上げの十分の一を領主側へ納めてもらう」
「売り上げの……十分の一」
頭の中で考える。
もし銀貨十枚売れたら、そのうち一枚。
銀貨百枚なら十枚。
遊園地が大きくなって売り上げが増えれば、納める金額もどんどん増えていく。
「それって……遊園地が成功したら、普通に借りるより高くなりません?」
「なるだろうな」
「やっぱりなるんですね」
「その代わり、君は遊園地を作るまでの負担を大きく減らせる」
確かにそうだ。
通常なら月に銀貨十枚。
それが銀貨三枚になれば、毎月銀貨七枚も違う。
今の俺にとって、銀貨七枚は決して小さな金額じゃない。
その分を材料費に回せるなら、遊園地作りを進めやすくなる。
「ですが……」
土地担当者が少し戸惑ったように口を開く。
「遊園地が完成しなかった場合、通常よりかなり低い使用料で土地を貸し続けることになります」
「あ」
そうだ。
俺にとって安くなるということは、貸す側が受け取るお金も減るということだ。
「もし俺が遊園地を完成させられなかったら……」
「こちらが損をする」
アイラ様があっさり答えた。
「ですよね」
「ああ」
「だったら、どうしてそんな条件を?」
アイラ様が遊園地に興味を持ってくれていることは知っている。
だからといって、面白そうだからという理由だけで土地を安く貸すとは思えない。
俺がそう考えていると、アイラ様は少しだけ表情を緩めた。
「君のためだけに条件を変えるわけではない」
「俺のためじゃない?」
「ああ。私は領主だからな」
アイラ様はそう言ってから続ける。
「先日も話したが、君の言う遊園地が本当に遠くから人を呼べる施設になるのであれば、利益を得るのは遊園地だけではない」
その話には覚えがある。
「リーベルの宿とか、店ですか?」
「そうだ。遠くから来た者が宿を使い、食事をし、物を買う。馬車を利用する者もいるだろう。人が増えれば、新しい商売が生まれる可能性もある」
そこでギルドマスターも頷いた。
「商業ギルドとしても、そこは興味深いところだ」
「ギルドもですか?」
「当然だろう」
ギルドマスターは地図へ目を落とした。
「街で商売をする者が増え、今いる商人たちの売り上げも増えるのであれば、我々にとっても悪い話ではない。それに、遊園地そのものを作るにも物資が必要になる」
「あ……」
「木材や石材だけとは限らない。将来、食事を出す店を作るなら食材もいる。土産物を扱うなら、それを作る者や売る者も必要になるだろう」
言われてみればそうだ。
遊園地は、俺一人だけで全部が完結する場所じゃない。
俺はどうしても乗り物や建物のことばかり考えてしまうけど、実際に大きくなれば、いろんな人や商売が関わることになる。
「もっとも、それは遊園地が本当に完成して、人が集まればの話だがな」
「……ですよね」
「今のところ、我々は遊園地というものを見たことすらない」
それを言われると弱い。
俺にとっては当たり前に知っている場所でも、この人たちにとっては、まだ俺の話の中にしか存在していない。
「だからこそ、こちらにも危険はある」
アイラ様が言った。
「通常なら得られるはずの土地の使用料を減らし、その間に君が遊園地を作るのを待つことになる」
「はい」
「だが、本当に完成し、人を集めることができたなら、その後はこちらも売り上げに応じた利益を得られる。さらにリーベルにも人と金が入る可能性がある」
アイラ様はそこで一度言葉を切った。
「私は君に土地を恵んでやるつもりはない。最初の負担を軽くする代わりに、遊園地が成功したなら、その成功からこちらも利益を得る。それだけの話だ」
「……なるほど」
それなら分かる。
俺だけが得をする話じゃない。
むしろ、最初はアイラ様たちの方が危険を引き受けることになる。
その代わり、俺が遊園地を成功させれば、あとからその分を返していくような形になる。
「条件として形にすることは可能だろう」
ギルドマスターが考えながら言った。
「ただし、このままではまだ曖昧な部分が多い」
「曖昧?」
「ああ。まず、どの時点を『営業開始』とするのかを決める必要がある」
「あ」
言われてみればそうだ。
「乗り物が一個できたら営業開始になるんですか?」
「それだけで営業しているとは言わないだろう」
「じゃあ……お客さんを入れたら?」
「そのあたりも正式な契約では明確にしておいた方がいいな。客から料金を受け取って営業を始めた時点、とするのが分かりやすいか」
「なるほど」
月銀貨三枚と、売り上げの十分の一。
数字だけなら簡単に思えたけど、実際に契約にしようとすると決めることが出てくるらしい。
「売り上げの範囲についても同じだ」
ギルドマスターは続けた。
「君が遊園地の中で食事や土産物を売った場合、それを含めるのか。将来、別の商人に店を出させた場合はどうするのか。その店の売り上げまで含めるのか、それとも君がその商人から受け取った金だけを対象にするのか」
「……そんなところまで決めるんですか?」
「後になって揉めたくなければな」
「確かに……」
俺は少し感心しながらギルドマスターを見る。
俺だったら「売り上げの一割」で分かった気になって、そのまま話を進めていたかもしれない。
でも、何を売り上げとして扱うのか。
そこを決めておかなければ、遊園地が大きくなったあとで困ることになる。
「そのほかにもございます」
今度は土地担当者が手元の書類を確認した。
「土地の使用範囲、契約期間、毎月の使用料を納める時期と方法、契約を終了する場合の土地の扱いなども決めなければなりません」
「……結構ありますね」
「ございます」
即答だった。
土地を借りるというのは、俺が考えていたよりずっと大変らしい。
「それと、もう一点ございます」
「まだあるんですか?」
「重要なことです」
そう言われると聞かないわけにはいかない。
土地担当者が地図の上で、俺が最初に借りることになりそうな場所を指した。
「ライガ様は、最初は小さく始め、将来的に遊園地を広げたいとお考えでしたね」
「はい」
「でしたら、周囲の土地についても考えておく必要がございます」
俺は地図を見る。
最初に借りようとしている場所の周りには、まだ広い領主管理地が残っている。
「今は使わなくても、遊園地を広げるときに必要になるってことですか?」
「その通りです」
そこで俺も気づいた。
最初は小さく始めればいい。
そう考えていたけど、その周りの土地がずっと空いている保証なんてない。
何年かして遊園地を広げたくなったとき、すぐ隣が別の用途で使われていたら困る。
「でも、今から全部借りたら……」
「当然、その分だけ使用料も増える」
ギルドマスターが答えた。
「ですよね……」
使わない土地にまで毎月お金を払う余裕なんて、今の俺にはない。
「その一帯については、当面こちらで管理を続ければいい」
アイラ様が言った。
「ただし、君のために永久に空けておくという意味ではないぞ」
「はい」
「領地の状況が変われば、別の用途で土地が必要になることもある。遊園地を作ると言っただけで、広大な土地をいつまでも使わず残しておくわけにはいかない」
「それは分かります」
「だが、君が実際に遊園地を作り、さらに土地が必要になった場合、隣接する土地については君との話を優先する。その程度なら問題ないだろう」
最後の言葉は、ギルドマスターへ向けられていた。
「そうですね」
ギルドマスターが頷く。
「どこまでの範囲を対象とするのか、いつまでその条件を認めるのかは決める必要がありますが、契約に含めることは可能でしょう」
「本当ですか?」
「ああ。ただし、優先して話をするというだけだ。将来も必ず今と同じ条件で借りられる、という意味ではないぞ」
「それでも十分です」
最初から全部を手に入れる必要はない。
今の俺に必要な分だけ借りて、そこから遊園地を作り始める。
そして、本当に大きくできたなら、そのときにまた土地を増やしていけばいい。
少しずつだけど、どうすれば遊園地を始められるのかが見えてきた気がする。
「俺、その条件で借りたいです」
「待ちなさい」
「え?」
すぐに返事をした俺を止めたのは、ギルドマスターだった。
「まだ大まかな条件を聞いただけだろう」
「あ……」
「月にいくら払うかだけが契約ではない。今説明した契約期間や支払い方法、途中で契約を終了する場合の扱いも決めなければならない。それに、伯爵閣下が今提示された条件についても、正式に契約へ落とし込む必要がある」
「……そうでした」
月銀貨三枚という部分に喜んで、もう借りられるような気になっていた。
「遊園地のことになると、どうも先に進みたくなるようだな」
アイラ様が少し楽しそうに言った。
「……気をつけます」
「悪いことではない。だが、契約は別だ」
「はい」
「君が納得して結ぶものでなければ意味がない」
ギルドマスターもそう言って、机の上の書類へ目を落とした。
「今日は大まかな条件を整理するところまでにしよう。正式な契約書はこちらで用意する。完成したら、改めて内容を一つずつ確認してもらう」
「分かりました」
その方が俺としてもありがたい。
土地を借りる契約なんて、当然初めてだ。
知らないまま勢いだけで決めるより、ちゃんと説明してもらってからの方がいい。
俺はもう一度、机の上に広げられた地図へ目を落とした。
少し前までは、遊園地を作る土地を手に入れるなら、途方もない金額を貯めなきゃいけないと思っていた。
実際、候補地を全部買おうとすれば金貨七十枚前後。
今の俺にはどう考えても無理だ。
でも、全部を買う必要はなかった。
まずは必要な範囲だけを借りればいい。
通常なら月に銀貨十枚ほどかかる土地を、アイラ様が提示してくれた条件なら、遊園地が営業を始めるまでは月に銀貨三枚。
その代わり、営業を始めたあとは、その銀貨三枚に加えて売り上げの十分の一を納める。
遊園地が完成しなければ、アイラ様たちは本来得られるはずだった土地の使用料を失う。
成功すれば、俺が納める金額は増える。
そして、本当に遠くから人を呼べるようになれば、リーベルの街にも利益が生まれるかもしれない。
ただ安くしてもらったわけじゃない。
俺がこれから遊園地を本当に作れるのか。
その可能性に、少しだけ賭けてもらったんだ。
そう思うと、嬉しいだけじゃなく、少しだけ責任も感じた。
まだ正式な契約は終わっていない。
決めなきゃいけないことも残っている。
それでも、少なくとも金貨七十枚を貯めるまで何も始められないわけじゃないことは分かった。
俺は地図に描かれた、最初に借りることになるかもしれない土地を見つめた。
今はまだ、線で囲まれただけの何もない場所だ。
だけど、ここを借りることができたら。
この場所から、本当に遊園地作りを始められる。
まずは、正式な契約を結ぶこと。
そして、この土地を使えるようになったら――。
いよいよ考えなければならない。
ここに最初に何を作るのかを。
お読みいただきありがとうございます!
今回は、遊園地を作るための土地について、具体的なお金の話になりました。
候補地すべてを買うなら金貨七十枚。
今のライガには、とても手が届かない金額です。
それでも、必要な土地だけを借りるという方法と、アイラから提示された新しい条件によって、遊園地作りへの道が少しずつ見えてきました。
まだ正式な契約は終わっていませんが、土地の問題もあと少し。
そして土地を使えるようになれば、次はいよいよ「最初に何を作るのか」を考えることになりそうです。
続きも楽しんでいただけたら嬉しいです!




