メインクエスト24「古代の王の墓を暴け⑩」
形勢は逆転した。
今や追い詰められているのは、王の骸だ。
その事実が受け入れ難いのか、奴は眼窩の鬼火を燃え上がらせ、激情に駆られた様子を見せた。
「その方ら、もはや助かる道は一つだ」
しかし彼は声を荒げることはせず、むしろその激情から一転して、静かな声で言った。断じて怒りが消えたわけではない。感情の爆発を抑えた、静かな気迫に満ちた声だった。
「それを、余が自ら提示してやる」
そう言った王の骸はワープホールを開き、それを通して部屋の隅に積まれていた金貨の山の中に手を突っ込んだ。そこから金貨を一枚つまむと、何を考えたのか、それをブサメンに投げてよこした。
パシッ、と黄金に輝くそれをキャッチする。
「何の、つもりだ?」
ブサメンは眉をしかめる。
「それが欲しかったのだろう? くれてやる。賃金というやつだ。能力のあるやつは何人いてもいい。戦士長の代わりも必要だ。それで余に仕えろ。その方の生きる道は、もはや他にはないぞ」
ロゼちゃんに振られたくせに、ブサメンならいけるとでも思ったのか。
ふはっ、ヴァカめ。
「ククク、笑わせてくれる」
「……なんだと?」
こんな金貨一枚貰うより、お前をぶっ飛ばして財宝全部ぶんどった方がいいに決まってんだろうが。
(じゃ、邪悪だ)
「こんなはした金でこの俺を雇おうなどと、どうやら時代遅れの老害は、相場というものを理解していないらしい」
そう言いながらクロロに詠唱してもらい、三つの加速魔法陣を王の骸に向かって一直線に並べた。この魔法陣を通った物体は、レースゲームの加速ポイントのごとく速度が跳ね上がるのだ。
ブサメンは指で金貨を弾き、加速魔法陣の中に放り込んだ。
瞬間、ボッ、と空気の壁を突破したような音がして、爆発的な速度に達した金貨が、銃弾のごとく王の骸に放たれた。狙うは奴の頭――だが金貨の銃弾は、惜しくも白骨化した頬を掠り、後ろの壁にめり込んだ。
「今は返す。すぐに俺の物にするが、な」
狙いは外れたが……まぁ良しとしよう。
王の骸の指輪がまた一つ、砕け散った。かすり傷でもダメージはダメージ。守護の指輪が一つ消えた。
「痴れ者がぁ!!」
我慢の限界が訪れたらしい。
王の骸の激高と共に、赤い月光が王笏の先端に収束していく。やがて巨大な光の球になったそれは、風船が破裂するかのように、パンッ、と弾け、全方位に小さな月光弾をまき散らした。
空間を埋め尽くすように、月光弾が四方八方に飛び散るその光景は、まるで弾幕シューティングゲームでもプレイしているかのような光景だった。
「無茶苦茶やりやがる!」
弾幕の隙間に入り込みながら、躱しきれない月光弾を魔弾で撃ち落としていく。
それでもなお濃密な月光弾の弾幕は、こちらの魔弾を物量で押し切ってくる。魔弾が撃ち漏らした月光弾は、雷鳴剣で斬り裂き、獣狩りの戦槌で叩き落すしかなかった。
だが、小回りが利く雷鳴剣はまだしも、隙の大きいハンマーでそのすべてを迎撃するのは不可能だったようだ。
ハンマーの迎撃をすり抜けた月光弾が、ロゼちゃんの小柄な身体を撃ち抜いた。
「あぐ!」
彼女は、悲痛な叫びをあげて、地面を転がった。だが、休んでいる暇はない。さらなる追撃をかけられたロゼちゃんは、そのまま転がりながら月光弾をなんとか躱し、即座に起き上がる。
「生きてるか!?」
「く、ぐ……はい! ですが、これはさすがに、厳しいのでは!? 聖域を――」
「待て、まだ使うな!」
聖域展開のスキルを使おうとするロゼちゃんを押しとどめ、身を隠せる場所を探す。
「柱の裏だ! 援護する! 行け!」
ブサメンは咄嗟に叫び、前を走るロゼちゃんの後を追うように王の間を支える太い柱の裏に走り込んだ。
「おい、無事か?」
「……左肩を撃ち抜かれただけです。問題ありません」
そう言うロゼちゃんの額にはうっすらと脂汗が浮かんでいる。
月光弾で撃たれた箇所は、酷い火傷のようになっていて、出血はない。
血を流しすぎて動けなくなることはないだろうが……皮膚が……これは……酷いな。
しかし治療しようにも、王の骸を倒して王墓から脱出しなければ、それもままならない。
チッ、あの全方位型月光弾の弾幕さえなければ、多少強引にでも王の骸に近づいて攻撃してやったものを。
(それにしてもあの王様、空間転移使ってこないね)
ああ。柱の裏にワープホールを出現させれば、隠れているブサメンたちを攻撃することだってできるだろうに。
さらに全方位型月光弾と複数のワープホールを組み合わせれば、全方位にばらまかれた月光弾が、開かれた穴という穴を通って、あらゆる角度から、ブサメンたちに向かって襲ってくることになる。そうなればもう、迎撃も回避も隠密も意味をなさないだろう。
それこそがブサメンが恐れていた攻撃だ。その攻撃を唯一回避できるのが、ロゼちゃんの聖域展開だ。だから彼女にはそのスキルを温存してもらったんだが……。
なぜ、その戦法をとってこない?
(もしかしたら、できないんじゃないかな?)
できない? 全方位月光弾と空間転移は同時に使えないと?
(それだけの規模の月光弾と制御が難しい空間転移の併用は、宝具にかかる負担が大きいからっていうのは、可能性としては、十分に考えられるよ)
まぁ、そうだな。そうであることを祈ろう。もし、全方位月光弾と空間転移が同時に使えるのに、まだ使っていないだけなのだとしたら……単に温存しているだけなのだとしたら、最悪だ。
そしてその最悪一歩手前の状況まで追い込んでくれやがった王の骸は、ブサメンたちが無様に柱の裏に逃げたのを見て多少、留飲を下げたのか、幾分か余裕を取り戻した声で語りかけてくる。
「最後通告だ。余の配下になれ。余が作りだす最強の軍団の戦士に、な」
王の骸の戯言に、ブサメンは柱の後ろから腕だけをのぞかせて中指を突き立てた。
「余に仕える栄誉をくれてやろうと言うのだ。何が不満だ?」
奴が何事かをほざいている内に、作戦会議をすることにした。
「で、この危機的状況で、頭脳担当のイケメンさんは、何かいい攻略法は思いつきましたか?」
「ふん。いくら俺の頭脳が優秀だからと言っても、思考を放棄していい理由にはならんぞ。少しは自分で考えたらどうだ」
「可愛いうえに超強い私が頭脳労働までするようになったら、イケメンさんの魅せ場がなくなっちゃうでしょう? 私はあなたに花を持たせようとしてあげてるんです」
お優しい配慮ですこと。涙がちょちょぎれそうですわ。
だってよクロロさん。ブサメンの中の頭脳労働担当さんは何かいい作戦あります?
(まるで面倒な仕事を上司から押し付けられた中間管理職が、そのまま部下に丸投げするかのような投げやり感……さては君、生前の職場であんまり部下から好かれてなかったな?)
ほっとけ。人の悲しい過去をほじくり返すんじゃあないよ。
で、どうなの?
(そうだな……例えば魔力切れを狙うのは……まぁ、現実的じゃないか)
だな。空間魔法なんて、とんでもない魔力を食いそうなものだけど、そこは魔王の冠でダンジョンコアから魔力供給してるみたいだからな。魔力切れを狙う作戦で行くなら、まず魔王の冠を破壊するところから始めないといけない。
(だったらもう単純に、超高火力で攻めちゃうのは? あの月光弾を撃ち込まれても、その弾幕を押し返せるだけの高火力魔法で一気に片を付けるんだ)
それ、単純でいいな。頭脳担当とは思えない脳筋戦法だけど、そういうわかりやすいのがいいと思う。複雑な作戦提案されてもよくわかんないし。ライ〇ーゲームとかでゲームのルール説明されてもよくわかんないんだよね、ブサメン。
(でも、転移には気を付けて。生半可な魔法は、返される)
なら、とっておきをぶっ放すか。
「俺が魔法で突破口を開く。銀髪、貴様は詠唱のための時間稼ぎをしろ」
「! 任せてください」
自信ありげに頷いたロゼちゃんは、大きく息を吸うと、王の間に響き渡るような大声を張り上げた。
「おい、そこの白骨死体!!」
ビーストモードで。
「!?」
可愛いお声で吐き出される暴力的な言葉に、王の骸がぎょっとしていたのが分かった。ロゼちゃん(ビーストモード)のインパクトはすごいからな。でも、そのおかげで、王の骸の気を引くことが出来そうだ。
「なんなんです、あなた!? さっきから仕えろだのなんだのって! 可愛い可愛いロゼちゃんを傍に置きたいのはわかりますけどぉ、戦士なんてそんなもん集めてどうすんですか!? そんな誘いにホイホイ乗ると思っているんですか!? 馬鹿じゃないの!? うぜぇんですよ!!!」
「な!? し、知れたこと。余の王国を再興するのだ。生者を皆殺しにし、死者の国を作る。そしてその国を足掛かりに、再び世界を支配するのだ。死者の楽園だ!」
魔獣としての殺戮本能と、かつて王だった頃の、自分の国をより強大にしたいという欲求が混ざり合ったが故の願望。それがこの王の骸を動かす原動力か。
ロゼちゃんの豹変っぷりに動揺しながらも、自らの野望を語る王。だが、ロゼちゃんからすれば、その内容は酷く滑稽だったのだろう。彼女は静かに笑いだした。
「……ふ、ふふ、クスクスクスクス」
「……何が、おかしい」
「そう言えばそうだった。あなた、生前は世界征服した気になってたんでしたっけ?」
「気になって、だと? 何を馬鹿な。余は確かに世界を……」
「あなたがしたのは、大陸征服であって世界征服じゃありませーん! 残念でしたぁ! ぷぎゃあwww」
このあふれ出る小物感よ。ロゼちゃん、君、本当に王族かい?
っていうか、それを言うのやめてあげなよ。大陸征服だって十分すごいことじゃん。
ブツブツと詠唱しながらも、ロゼちゃんの容赦のなさにブサメン、戦慄。
「国を再興して? 世界征服? いやいや、このダンジョンから出ない方がいいですって! これは親切心からの忠告です。ダンジョンを出て、ボク世界征服した王様でーす、なんて言おうものならいい笑い者ですから!」
……きっつ。
「……笑止。ならば今度こそ真の世界征服に挑むまで」
「なんか格好良く言ってますけどぉ、声震えてますよー」
待てロゼちゃん。王の骸が大嫌いなのはわかるけど、それ以上はまずい。
「――ッッッッ!!!! 消えろ!! 愚物がぁ!!!」
王の骸が吠える。
突如、ブォン、と音がして、ブサメンとロゼちゃんの真ん前、古代の王からしたら柱の裏側に黒い穴が現れた。ワープホールだ。
ほらもおおお! 怒らせたあああ!
「逃げろ!!」
煽り散らかすのに夢中でワープホールに気づいていないロゼちゃんに警告を飛ばし、慌てて柱の裏から飛び出す。間一髪のところで転移してきた月光弾を躱し、すぐさまロゼちゃんに文句を言う。
「おい貴様ぁ!! いい加減にしろよ貴様ぁ!! 貴様のせいで攻撃されただろうがぁ!!」
クソ! しかも文句言ったせいで、詠唱を中断する羽目になっただろうが!
一応クロロにも詠唱してもらってるから大丈夫だけどさぁ!
「はぁ!? 私のせい!? あなたがあいつの気を引けって言ったんでしょー!?」
「貴様のあれは『気を引く』ではなく『煽り散らかす』だ馬鹿が!」
「はー!? やるんですか野郎!」
「仲間割れか? 愚かな!」
ぎゃーぎゃーぎゃーと言い合うブサメンたちを見て、王の骸は鼻を鳴らした。野蛮な冒険者など、こんなものか、と。
「俺のプランを無駄にしよってからに! 我慢ならん! 銀髪、貴様から始末してやる!」
「上等です!」
さらにはブサメンがロゼちゃんに向かって魔弾をぶっ放ち、ロゼちゃんがハンマーを構えたことで、完全に仲間割れを起こしたと思った王がその隙を狙って月光弾を撃ち込もうとした、その時。
ズドンと、とんでもない勢いですっ飛んで行った雷の魔弾が、王の骸に直撃した。
「!? な、なんだと!?」
バカめ、油断したな!
ブサメンが放った魔弾をロゼちゃんがハンマーで打ち返して王の骸の方に飛ばしたのだ。普通に魔弾撃っても、ワープホールに飲みこまれて返されるだけだからな、意表を突いたのだ。喧嘩と見せかけての連係プレー、どうだ。
(でもあの口喧嘩は演技とかじゃないよね。心の底からの叫びだったよね)
まぁそうだけど。それを攻撃につなげるこの機転のよさを褒めてくれ。
さて、これで奴の守護の指輪は残り一つだ。
(だね。で、丁度こっちも詠唱終わったよ)
ロゼちゃんに文句を言ったせいでブサメンの詠唱は中断されてしまったが、クロロが詠唱を完了してくれたおかげで、なんとかでかい魔法一発は撃てそうだ。
かませ、クロロ!!
(オッケー!)
「天に触れる。東の空から出づる黄龍、雷鳴をもたらす摩天の王、曇天雷光にて穿ち、蜷局渦巻く龍となりて三千世界に顕現す。轟く咆哮は雷鳴となり、総じて四方万里を撃滅する雷光と化す――荒れ狂う雷よ、龍となれ」
クロロが魔法の名を口にした瞬間。
ドォッ!! と、激しい落雷が天井を突き破り、王の間に落ちてきた。一条の雷はそのまま巨大な蛇のような龍の姿となり、宙を泳ぎ始めた。
「雷の……龍、だとっ?」
唖然と呟いた王の骸に、雷の龍が食らいつこうと肉薄する。そうはさせまいと、王の骸は月光弾をぶつけるが、その程度で雷龍は止まらない。
ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!
雷龍が鋭い牙をむき出しにして咆えれば、辺り一帯に落雷が降り注ぎ、その暴力的な光景がこの魔法の威力を物語っていた。
これに捕まるわけにはいかない、そう判断した王の骸が雷龍の進路上にワープホールを開く。確かに転移させてしまえば、いくら威力が高かろうと関係ない。だが雷の龍はワープホールの前で大きな口を開けると、そのままその黒い穴を飲み込んでしまった。
「く! 王に逆らう害獣め!」
ならばと、王の骸は隠し玉を使うことにしたようだ。
混沌の王笏が赤い月光を収束させていく。しかしこれまでのような球体状ではない。細長く、杖の先端から伸びるように月光が集まっていく。そして。
「顕現せよ、余の聖剣よ!!」
禍々しい巨大な剣の形になった。まるで雷鳴剣の月光バージョンだ。
雷龍が月光剣ごと王の骸を丸呑みにしようと食らいつく。それを迎え撃つ月光剣の腹に牙を立て、嚙み砕こうと雷鳴と火花を散らす。月光剣もまた龍の牙を溶かそうと赤い輝きを強烈に増していく。
王の間が黄金の雷と深紅の光に満たされ、魔力の嵐が吹き荒れた。その余波は壁を抉り、柱をなぎ倒し、床を陥没させた。
二つの力の競り合いが続く中、雷龍の迎撃に集中している王の骸の隙を狙ったのが――ロゼちゃんだ。あろうことか彼女は、下手をすれば余波に巻き込まれかねない、雷龍と月光剣のぶつかり合いの真横を走り抜けて、王の骸の懐に潜り込んだのだ。
その胆力には、ブサメンだけでなく、敵である王の骸でさえも驚きを通り越して呆れただろう。だがその甲斐あって、ハンマーが届く距離まで接近した彼女の攻撃が、王の骸を襲った。
バキンッ、と最後の守護の指輪が、砕け散る。
守護の指輪、残数――ゼロ。
もはや王の骸の身を守るものはもう、何もない。
同時に、雷龍と月光剣が互いの力に耐えきれずはじけ飛び、その時に発生した閃光が、一瞬ブサメンたちの視界を覆いつくした。
「王の骸はどこだっ」
視界が回復し、すぐさま王の骸の姿を探す。ロゼちゃんが至近距離にいることを嫌がった奴は、どうやら転移で王の間の中央に移動したらしい。
奴は顔を俯かせ、何事か呟いている。
「……も……なら」
意味不明なそれを聞いたブサメンとロゼちゃんは顔を顰めるが、王の骸は唐突にバッ、と顔を上げると憤怒に満ちた顔で喚き散らした。
「もう我慢ならん! 貴様らごときくだらん凡夫に手を煩わされるなど!」
混沌の王笏が、天に浮かぶ赤い月に向かって高々と掲げられる。杖の先端に着いた赤い宝石がこれまでにないくらいに禍々しく輝き、巨大な月光弾を生み出す。
これは……さっき見たな。この後この巨大月光弾が弾け、爆発のごとく月光弾をばらまく――全方位型月光弾だ。
だが、今回はそれだけではなかった。次いで王の間の至る所に、ワープホールが開かれたのだ。
しかも、その数が異常だ。一つや二つじゃない。何個も、何十個も、王の間の至る所に開けられた黒い穴は、ブサメンの背筋を凍らせるには十分だった。
「――は?」
受け入れがたい現実。
だって、それは、さっきやってこなかったじゃないか。そうだ、クロロとも話して大量の月光弾とワープホールの展開は混沌の王笏に負荷がかかるからって――違うのか? できないんじゃなくて、やらなかっただけ?
(いや、シンクゥ! 落ち着いて! あれを見て!)
クロロの声に、王の骸が掲げる混沌の王笏、その先端の宝石を見る。さっきまでは傷一つなかった美しい宝石に、小さな罅が入っていた。
「!」
それは、混沌の王笏に紛れもなく負荷がかかっている証。
つまり、全方位型月光弾とワープホールを組み合わせたチート戦法は、できるが、やりたくなかっただけだ。この技は長く維持できない、何回も使えないのだ。
維持できるのはあと何秒だ? 何回使える? 一回か、二回か。それ以上使えば、混沌の王笏が壊れる。だからこれは、奴の切り札だ。
それが分かればいい。
これを凌げば、一気に勝利に近づく。
そしてこの時のためにとっておいた、とっておきのスキルがある。
「銀髪!」
「待ってました!」
それこそ、ロゼちゃんのスキル。
「聖域――展開」
その名が呼ばれると同時に、花開くように広がる青白い結界。それはロゼちゃんを中心にブサメンを包み込み、絶対的な安全圏を作り上げた。
途端、巨大な月光弾が弾け、全方位に飛び散った月光弾がワープホールに飲み込まれ、あらゆる方向、あらゆる角度からブサメンたちに襲い掛かった。
あらぬ方向に飛んで行ったと思った月光弾が、ワープホールに飲まれ、別のワープホールから吐き出されて、まったく別の角度から襲ってくる。そんな予測不可能な弾道を、何千何百という月光弾が描くのだ。しかしこの聖域は、月光弾の侵入を尽く拒絶した。
……なるほど、これは、無理だ。聖域展開がなければ、終わっていた。
だが、勝てる。
月光弾の嵐が収まったとき、その時こそが、王の骸の敗北だ。ブサメンたちはただそれを待てばいい。
そのはず、だった。
「舐めるなあああああああ!!!」
それは王の骸の執念か、あるいは「あらゆる攻撃」を防ぐ聖域内にて、それは「攻撃」と判断されなかったのか。
聖域の中に、ワープホールが、開いた。
「ば――っ」
馬鹿な、と零すより先に、ブサメンはロゼちゃんを押し倒した。その小さな体に覆いかぶさるように、包み込む。瞬間、転移してきた月光弾が――ブサメンを、襲った。




