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石塚の誘い3

「それで俺がお前の為にどれだけ苦労して、あの北穂高を縦走していたか、判りそうなもんだ」

「だから今それに応えているだろう」

 石塚にすれば今日の昼食は学食四回分に匹敵すると恩着せがましく言われた。沙苗さんに云われても何《なん》ともないが、どうせ親の金なのに此奴に言われると頭に来る。

「それは水に流してそれ以上の好感が得られて、こうしてそれに応えてるんだ」

「へ〜え、じゃあ俺のお陰で相当、親から金をせしめたってことか」

「何《なん》とでも言え、とにかくあの日は楽しかった」

「真っ直ぐ帰れば昼には着くのに、晩になってやっと帰ってきたそうだなあ」

「それも姉貴から聞いたのか」

「それで詳しくは聞けなかったと沙苗さんはぼやいていたぞ。なんせひと月近く散財してユニバーサルスタジオで遊び呆けるなんていい加減にしろって」

 ひと月近くで幾ら掛かったと思ってる。少ない社員の給料を切り詰める一方で、息子には旅館の滞在費を払い続ける親の気にもなれ。と言いながらその親の金で極上のワインを飲む矛盾を感じながらも説教をした。石塚には越村の今の意見と澤村さんとのあの日の出来事は、完全に頭の中で同居していた。何しろジェットコースターやその他のアトラクションなどを、澤村さんと騒ぎながら楽しんで、夕食まで摂って帰ってきたそうだ。

「それで今度の日曜はどうするんだ」

 こっちは沙苗さんからデートの約束を取り付けて、石塚も気になってとりあえず聞いてやった。なんせ今のところは石塚あっての沙苗さんだ。完全に彼女が思ってくれれば何も気にすることもない。そんな気も知らずに、よくぞ訊いてくれたと石塚がにやけた顔で言い出して頭に来る。


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