石塚の誘い1
秋になっても中々顔を見せない石塚が大学に現れて、事情を知らない連中からは好奇な目で見られた。それもいつまでも気にするほど、彼らは暇人じゃない。なんだ生きていたのかと言われる存在で越村も似たもんだ。もっとも越村だけは、落ち込まないルンルン気分の石塚を見てひと安心した。講義が終わって越村は素知らぬ顔で教材を畳んで教室を出る。どうやらこちらから訊かなくても、その内にしびれを切らして向こうから言ってくるのを待った。石塚は意外と早く学食に行く越村を引き留め、近くのいつも羨ましそうに行き過ぎる洋食の店に誘われた。この店は大学の近くに在るが、もっぱら講師や教授が利用していた。年度末になると進級の当落線上にいる学生を担当の先生が連れてくる以外、余り学生を見かけない店だ。そこへ石塚は越村を誘った。入り口で店員が迎えて席まで案内するのはファミレスに似ているが、案内係がパートのおばさんと違って、颯爽とした若い女性だ。テーブルに着くと石塚は先ずフレッシュタイプとハードタイプのチーズとワインを一本な頼んだ。メニューを見て白菜と肉団子のスープにホタテやエビの海鮮とガーリックトーストの注文を終えるとテーブルの隅に置いた。
「いつも講義が終わるとサッサと引き上げるお前を捕まえるのに往生したよ」
本当はもっと早く誘いたかった癖に、石塚は店のテーブルに着くなり半分は照れ隠しなのかそんな言い訳をした。厳密に言うなら焦らしたのか焦らされたのか、どっちもどっちだ。それほど二人には共通する想いがあった。
「あれからどうした。ユニバーサルスタジオには行ったのか」
「行った」
「どうだった。昔のディズニーランドと比べて」
「姉貴から聞いたのか」
頼んだチーズとワインが来た。先ずはワインで乾杯した。
「これもお父さんからの差し入れか」
まあなと石塚は頷きながら、ふっくらとした厚みのあるチーズを口に頬張った。
「お姉さんには話したのか」
「ああ順調にいってるって」
ちょうど料理が来て、食べながら石塚は話だした。




