沙苗さんを誘う3
「まあそこは、澤村さんもそこそこ関心があれば、幾ら奥手な石塚でも求心力は羞恥心を乗り越える年頃ですよ」
それが恋だと目の前の人に言いたいが、喉が焼け付いて言えない。
所狭しと並んだ料理も最後のケーキに手が届き、沙苗さんは珈琲を注文した。それを合図にテーブル上のものは綺麗に片付けられた。目の前が綺麗に片づくと気分まで落ち着く。
「それでも弟に関心を持ってくれるように越村さんが、その澤村さんに吹き込んでくれた功績は大きいわよねぇ」
「後は本人の努力次第だけど、澤村さんは今どき珍しく結構、母性本能が働く人で、そんなにアッサリと別れる人じゃあない」
「その点について越村さんも彼女にアドバイスしてあげれば」
問題は石塚が心に思う情熱を、彼女に何処まで打っ付けられるか。
「じゃあ、これからは沙苗さんともっと彼奴の情報交換を頻繁にする必要がありますね」
「そうね、信州の山に憧れても、その厳しさも一緒に学ばないとその澤村さん同様に、本当の良さは判らない。弟の繊細で過敏過ぎる感情をどんな風に澤村さんに仕向ければいいのかしら」
「今の段階ではそんなに真剣に考えなくてもいい。二人の仲が気まずくなれば必要になる。それまでは静観すれば。ところで沙苗さんは野外活動はお嫌いですか」
「そうでもないけど、切っ掛けがないのよねぇ」
「じゃあどうです、これから行きませんか」
「何処へ」
「ここは植物園の入り口、ここから少し歩けば結構自然を堪能できます。向こうも今頃はユニバーサルスタジオで愉しんでいるんですから……」
「そうね、それも良いわね」
やっとここまで話をこじつけられた。




